3.せいくらべ
「おぬし、どこへ行くつもりであった? よもや、家出ではあるまいな」
老人、
「べーつにぃー。ただその辺歩いてただけだけど?」
「ほうほう、どうでもこうでも構わんが、捕まえられてよかったわい」
「で、何の用だよ」
「なあ、爺や」
「なんじゃ?」
「背ぇ縮んだ?」
横を歩く馴染みの老人は、出会った頃は自分よりずっと大きかったと思う。思うのではなくて、実際はるかに大きかった。少し前に会った時も、横に並べば頭ひとつぶんといわないまでも、目線は上をいっていた。それなのに今日はその時よりも視線が上を向かないのだ。だから誘鬼は聞いてみた。
「お主が成長したんじゃろ。先日若様も同じようなことを言っておった」
「なーんだ。そうかい」
誘鬼は肩をすくめてみせた。
「で、飛鳥、何の用だって?」
「行けば分かる」
そう言うと、八重波は鼻からどっぷりとため息吐いた。
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