第3話:

魔晶石と魔核①

 それはまさに青天の霹靂だった。


「おめでとう二人共。んじゃ今日から小遣い無しだから」


 それは『卒業試験』を無事クリアした日から三日後の話。


 冒険者ギルドの受付で、緑青りょくしょう色のプレートを受け取ったベッキー達二人は、すぐさまクエストを受注したい逸る気持ちを抑え、まずは師匠に報告だと住み慣れた我が家に帰り着いたその矢先、出迎えてくれた師匠の口から飛び出した台詞がそれだった。


「ど、どどどういうことだよっ?」


「そ、そそそそうだよっ!」


 これまでは師匠が受注したクエストを三人でクリアし、その報酬の中から『小遣い』と称して報酬の分前を貰っていた。とりわけ金等級の冒険者のみに許される、個人を名指しで発注されるクエストの報酬は破格で、その分け前ともなれば二人にとって相当な額になる。


 それが貰えなくなるとなれば驚き、慌てるのは当たり前のことだろう。閃光手榴弾を初め、武器の研究開発には相応の金が必要になるし、マルティナにとっても趣味の買い食い、長剣の新調や手入れにやはり相応の金が掛かるのだから尚更だ。


「どうもこうも。あんた達は〝青銅等級〟になってんだから、当然でしょう」


 何言ってるの、とばかりにそう言われ、「うグッ」と言葉に詰まる二人。確かに二人は今回の件でランクアップを果たし、無事一人前の冒険者とみなされ単独でのクエスト受注を許可された。つまるところそれは、自分の食い扶持は自分で稼げということに他ならない。


「うう……開発費が……」


「うう……買い食いが……」


 がっくりと項垂れる二人に、師匠はさも可笑しそうに笑うのだった。

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