第7話 カッコいい
「好きなんです‼」
突然告白(?)を受けた私は、ただ立ちすくんだ。放課後ということもあってか人通りはある程度あり、乃川さんの言葉を聞いた人たちも立ち止まってこちらを見ていた。
「え、は? 好き? Likeってこと?」
「えっと、そういうこと、かな。あ、でも違う?」
そう言いながら顔を赤らめた乃川さんにこちらも少し頬が熱くなったのがわかる。
なにこれ。
「私、月海さんのその意見をスパッと言えるところ、大好きなの」
「意見をスパッと言えるところ?」
「うん、すごい尊敬するなって。あと、うらやましいなぁみたいな」
そう言われてやっと頭が落ち着いてきた。別に乃川さんが私のことをそういう風に見ているわけではなかったのだ。
……あんな風に言われたらそうとらえるのが普通じゃない? 別に自意識過剰じゃないから。多分。
「私、自分の意見あまり言えなくて。だからうらやましいの」
いや、好きって普通あんまり言えないと思うけど。それ言えるなら自分の意見も余裕だと思うけどね?
そんな風に思ったのは置いておいて、彼女の言葉にピンときた。
先ほどのロングホームルームで私が坂東さんたちに歯向かったのを見たからか、と。
「私、
だからね、うれしかったの。自分の意見も言えずに周りの様子を見ているのはカッコ悪いって言ってくれて」
意味が分からなかった。色んな人に言われているのだ。自分の意見を言えない・言わない人もいるんだって、相手を真っ向から否定するようだったら友達もできないって。乃川さんはそれがうれしいといった。どういうことか全くわからない。
何でそんなにキラキラした目でこっちを見てるのか。
「どういうこと、って思うかもしれないけれど……。
今の自分を否定してくれて、これじゃダメだって改めて思い知らせてくれてうれしかったんだ」
「……自分を否定されるのって嫌でしょ。私も嫌だもん
何でそれを嬉しいって思えるの」
私の言葉に、乃川さんは考えるそぶりをしてから答えた。
「自分の個性を否定されるのは誰でも嫌だと思うけど。でも、よくよく考えたら確かにダメだなって思うところを否定されたら、そこに気が付けてもっと良い人になれる気がする、じゃん?」
「内面を磨くのって大変だから、誰かに手伝ってもらえるといいと思うんだよね」
そう言った乃川さんは私から見るとすごく光っていた。
私の自分の意見をハッキリ言えるところが好きだって乃川さんは言ったけど、私は乃川さんの人の好きなところとか自分のダメなところとかハッキリと言えるところがすごくカッコいいと感じたのだと思う。
*
「涼香ちゃんってカッコいいね」
サッカー部の休憩中、蒼がこっちに来たと思ったらそう言った。
「そう、か?」
「うん、あんな風にみんなの前で意見言えるのカッコいい」
汗を拭きながらそう言った蒼は遠くの方を見つめながら少し笑った。
確かにあぁいうところはカッコいいと言われるポイントだろう。だけどそれのせいで友達ができないと嘆いている涼香を何度も見てきた。
俺も結構涼香タイプだし考え方的にも似ているところはある。が、やはり男子と女子では考え方が違うらしい。俺は多くはないが友達はいる。
「まぁでもあの時は蒼が助けなかったらずっとバトってたな」
「そうかな。確かにどっちも譲らないって感じだったけど」
そんな話をしていると、ちょうど遠くでサッカー部部長の声が聞こえてきた。
「そろそろ行かなきゃだね」
「あぁ」
部長の方へと蒼が走る。俺は走りながら時間を確認しようと、校舎の方を見た。
「お」
すると、廊下の方に涼香と誰かわからない女子が話しているのが見えた。
なんだ、アイツも友達と言える人がいそうじゃねぇか。
そう思いながら、蒼の方へと向かって行った。
*
「だからね、私友達になりたくって」
「え、私と?」
「そう! ロングホームルーム終わった時からずっと考えてたんだ」
にっこりと笑いながらそう言った乃川さんにやっぱり驚きを隠せない。
この子、普通じゃないのかな。
なんて失礼なことも考える。
「私、涼香ちゃんって呼ぶね! 私のことは
「え、あ、うん。わかった」
そのまま乃川さんもとい姫理のペースで押し切られ、私たちは一緒に帰ることになってしまった。
いや、何話せばいいの、これ。
助けて、廉。というかこういう時に頼りになりそうな降谷くん。うん。廉よりは降谷くんの方が戦力になるな。廉、女子相手だとダメだし。
「……涼香ちゃんって家どっち方面?」
「えっと、こっち」
「え、じゃあ近い! 朝もし見かけたら突撃するね」
「……やっぱ、姫理って意見とか普通に言えるでしょ」
「よく言われるんだよね。友達相手だとできるんだけどなぁ」
しかし、そんなふうに考えたのも無駄だったというレベルで間がなかった。
完全に降谷くんタイプだ、姫理。話が無尽蔵にありそうなタイプだ。
今日わかったのはうちの学級委員はどっちともコミュ力高めということ。
結局、姫理の方が家は遠いらしく、姫理は私の家の前までついて来た。
偶然居合わせたらしい母にニヤニヤされて、明日はお赤飯かなぁなんて言われた。
私がお赤飯苦手なの知ってるくせに。
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