第9話 大学生らしい死亡フラグをどうぞ!
「
「……ああ!
「
探るような視線に、ため息を吐く。
「善意で協力しろと?」
「結論は、そうですね。借りと認識していますが……」
「悪い意味で、警察官だからなあ……。『力があって動けるのなら、任意で協力して当然』という前提は、鼻につく」
明夜音が、打診する。
「報酬を約束させるのも、1つの方法ですけど?」
「これ幸いと、金一封に表彰だのをセットにして、俺たちを型に嵌めてくるだけ! 前例を作ったら、どんどん押しつけてくるぞ?」
首肯した明夜音は、自分の意見を述べる。
「ええ……。先日の外務大臣の失踪でも、こちらを便利に使おうとした警察は信用できません。私に、確保したMA(マニューバ・アーマー)1機を提出するよう言ってきました」
「自腹を切り、本音で話してくれるだけ、柳井さんのほうがマシか! 悪いな、相手をさせて」
首を横に振った明夜音は、微笑んだ。
「いえ。当主の重遠が対応すれば
「分かっている情報は?」
「心配した友人が警察署に駆け込み、相談という形で受けています」
――
――機械分析工学科の男子が数名ほど、姿を見せない
「その男子が在籍していたのが……」
「次元振動研究室ですね! 独自の理論に基づき、別の次元との干渉。……平たく言えば、ワープの実現を目指しています」
明夜音の説明に、息を吐いた。
「構造物の分析や立体モデルで振動を見るとかじゃなく、SFの再現かあ……」
「この理工学部キャンパスには、大戦中に武器の製造所や研究所がありまして。
俺は、決断を下す。
「その教授が未来を知ったか、別の世界線にアクセスできない限り、明夜音の言った通りか……。大学生だけに、レベルの高い死亡フラグってか? 大きな問題になる前に、ウチで叩く! とりあえず、俺1人でいい」
「はい! 現地でのサポートは?」
明夜音の質問に、俺は心当たりの名前を告げた。
◇
明示法律大学の理工学部キャンパスで、1人の女子大生が目覚めた。
単身者用のゲストハウスだ。
ユニットバス、台所があり、ドヤとは違う。
上体を起こした女子は、寝ぐせがついた銀髪ロングのまま、青と黄色のオッドアイで見つつも、習慣でスマホに触る。
アラームが止まり、ベッドから両足を下ろした女子は、ペタペタと歩き、シャッとカーテンを開けた。
ふわああっと
しばらく水音が続き、白い肌をさらし、タオルを頭に巻いた姿で帰ってきた。
スマホを持ったまま、指で触っていく。
しかし、ピタッと動きが止まり、息を吐いた。
「課題で忙しいのにぃ……。でも、ウチの行方不明者か」
SNSのメッセージを読んだ女子は、慣れた動きで返信。
“協力するけど、講義と課題の合間にだけ”
通知をさばいた女子は、ドライヤーで髪を乾かし、インナーから身に着ける。
白い壁紙で統一された室内をぐるりと見た。
「他の男子は、研究室で寝泊まりだし……。文句を言えないわね?」
洗濯機が外の共有で、盗難を恐れている彼女は使えない。
宅配のクリーニングを利用していて、馬鹿にならない出費だ。
女子は愚痴を言いつつ、大きな書類が入るトートバッグに必要なものを放り込み、安っぽい玄関ドアから外へ……。
空気は、美味しい。
山の中にある街といったキャンパスには、巨大な建物がゆったりと。
「お、おはよう!」
「
理工学部とあって、男子ばかり。
明大でも、都心部のキャンパスとは全く違う。
適当に応じつつ、もう古ぼけた掲示板で立ち止まった。
……SNSのメッセにあった、行方不明者についての張り紙だ。
「同じ研究室ね?」
独白したら、訳知り顔で、近くにいる男子が言う。
「まだ見つかっていないよ! 有亜さんも、気をつけて」
「ええ……」
それを皮切りに、他の男子も騒ぐ。
「本当に、どこへ行ったんだか?」
「自汰教授は?」
「見ていない」
「このままだと、警察も入ってくるんじゃね?」
「勘弁してくれ! こっちは睡眠時間を削って、缶詰なのに」
「私、自分の課題をやりたいから……」
オタサーの姫といった女子は、目立つ容姿のまま、足早に離れた。
ベルス女学校で
彼女は再び、表舞台に立つ。
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