21話

流石王立学校の試験。そう簡単に解かせる問題が少ない。

いや、ざっくりと言えば問題の9割が応用だ。最初の数問だけ基礎的な内容だ。

しかし最後の一問がかなり特殊だった。


問:魔法の発動方法を考えよ(複数回答可)


『今の時代、お主だけが違う使い方をしておるから答えは2つになりそうじゃな』

『そうだろうね』


おそらくほとんどの人が内側からの答えしか書かないだろうが、最後の複数という部分がかなり引っかかる内容だ。

そしてこの問題を出すということは、この学校は「外部からの魔法発動」の原理を知っている。

素直に書きたいところだがあまり詳しく書くと怪しまれそうなので「外部の魔力」とだけ回答しておいた。


「―――そこまで!答案用紙を裏にしろ。カバンを持って実技の方に移動してくれ」


あっという間に1時間が経過した。次は実技である。


にしても校内はほんとに広いもんで、演習場に辿り着くまでにかなり歩いた。

通り過ぎた場所にいくつか教室があった。

少しだけ見たが大体一クラス3,40人程度と言ったところか。

それがいくつあるのかはわからないし、貴族と平民が別々なのかもわからない。

この大量の受験生の中から選ばれるのだろうか、と思うと一気に不安が押し寄せてきた。


『不安がなんだか知らないけど、ちゃっちゃとやって帰るわよ。人が多くて吐きそうだわ』

『…ずっと静かだったのはそういうこと?』

『そうよ。ほんと濁って汚い魔力ばっかり。地獄だったわ。……はぁ。姫様が選んだ人間があなたでマシだったのも少し納得したわ。確かにあなたはマシね、姫様の魔力が少しだけ巡ってるのもあるから。』

『リーン、マシじゃなくて主しかいないんじゃよ。私たちを受け入れてくれるのは』

『ふーん』


「実技はこちらです!バッジをこちらに~!」


ここでバッジを回収…試験が終了したら帰宅していいのか。

悪目立ちもしたくないし、手っ取り早く終わらせよう。


「すみません、受付お願いします」

「はーい。受験番号259番アルライト…ノクオーツ…様、ですね。はい、承りました。ただいま一番奥が空いております。そちらをご利用ください。」

「?…はい、わかりました。ありがとうございます」


やっぱりなんか対応してくれる人の様子に違和感を感じるんだよなぁ。

僕が何をしたっていうんだろう。

でも人が少ない今ならこのまま手っ取り早く終わらせて帰るんだ!

と思っていたのも束の間。


「あれ?無能のノクオーツじゃん。なんでこんなとこいんの?」


名前を思い出せないが顔はしっかりと覚えている。

…中等学校で僕をいじめたグループの主犯。

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最弱、最強になる 捌之灯 恵毬 @Hatsuhi

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