17話
「――【花散り】」
一瞬の抜刀。
オオカミは笑みを浮かべたまま首が下に落ちた。
『地獄のやつらがどうしてこうも恐れられていると思う?』
「傷をつけるのが難しいから?」
『まぁそれもそうじゃが…天国と地獄両方に言えるのはとにかく自己再生能力が高いことじゃ。頑張って付けた傷も一瞬で治るし、何かを切断したところですぐに治る。当然、首もじゃ』
「じゃあ今の意味ないんじゃ…」
『そのための私らじゃ。今お主が使った魔法は天国と地獄の敵に特化させた技。その証拠にほれ、犬っころを見てみよ』
再生していない。
断面にコーティングのようなものが施されているし、よく見ると切った場所から徐々に体が消えている。
オオカミは再生出来ないことに気付いたのか哀しく吠えた。
『うるさいのぉ、結局は己の傲慢さが生んだ結末なんじゃから―後悔しながらさっさと消えろ』
鳴き声すら聞こえなくなった。完全勝利である。
今回、神様とリーンのおかげで立ち向かえたが一人では絶対無理だと感じた。
師匠は本当にすごい。そう思いながら目をやると…
「あ」
「え?」
師匠が助けた人と目が合った。
「あ、あはは…バレてしまいました…」
「えーと…あなたは?」
「クルメリア・マーカスと申します。この度は助けていただき本当にありがとうございます」
「見てたんですね?」
「す、少ししか見てないですよ、少ししか…」
「どこから見てました?」
「魔法でアズの近くに移動させられたときからです」
「全部じゃん…ってアズ?師匠のこと?」
「えぇそうですです。アズとは小さい頃からの仲だったんですけど、ここ数年行方をくらませていて…そういえばあなた、師匠って言いました?」
「え、えぇ。でも行方をくらませるってことは何も伝えられてなかったんですか?」
「何も聞いてないわ。みんな慌てふためいたわよ、王族の専属護衛が消えたって」
「王族…?」
「あら?私の名前でピンと来てないですか?」
「すみません」
「マーカス王国、通称王都。第三王女のクルメリア・マーカスです」
なんということだろう。助けた相手が王族の人だった!
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