15話

地獄から来たオオカミ。神様曰く、番犬:ケルベロスの手下だとか。

そもそも地獄とは何か。

この世界は天界、地上、魔界の三つで構成されている。

そこに属していないのが天国と地獄。この二つだけは強さの次元が違う。

魔界の王、いわゆる魔王の全力であっても最弱に勝てるかどうか。

それぐらい恐ろしい魔物がなぜここに…


『ふむ…考えられるのは誰かがゲートを故意に開けた、ということじゃ。ただ、あやつは地獄側から来た。つまり、それなりに代価は払っておるが…あれだと師匠がやられるぞ。まぁ私とリーンがいれば問題ないがのう。なぁ?』

『え?あ、はい、そうですね姫様。あんな犬っころさっさと地獄に返しましょ』

『てことで主。行くぞ』



―先刻


得意な魔法、ライトニングで数キロもの距離をあっという間に駆け抜けた。

崖から足を踏み外しかけていた少女を救出し、目隠しに光魔法を地面に叩きつけその場から離れた。


「空中に来ればしばらくは安全なはず。あなた、大丈夫…ってメリア?」

「…え?あ、あれ私なんで…ていうかアズの顔が見える…天国か…」

「いや私本物だから!!勝手に死ぬな!!」


助け出した少女はメリア…クルメリア・マーカス。この国の第三王女である。

彼女とは昔からの縁なのだ。護衛をしたことで知り、何回も顔を合わせて次第に仲が良くなった。

なぜこんな場所に彼女がいて、あのオオカミに狙われているのか。なんとなくだが私は察しがついている。彼女の護衛に就いたときから第一王子と第二王女との関係があまりよくない噂を聞いたことがあるのだ。


「ねぇ、メリア。何があったの?」

「うん…ちょっとね…」

「あの兄と姉関係?」

「………」


図星らしい。

沈黙を続けていたがしばらくして話してくれた。


「私たち全員魔法学校に行くんだけど、それが決まったとき明らかに二人から殺意を感じたの。元々関係は悪かったんだけど余計悪くなったみたいで…今回、隣町で依頼を受けてその帰りにショートカットだからとこの森に入った。実際私も通ったことあるからショートカットになるのは知ってたんだけど、そのルートから外れて気付いたら私以外のみんながあのオオカミに…」

「…そっか」

「助けてくれてありがとう、アズ」

「たまたま近くを通りかかってたからね」

「ところでさ…さっき崖の上から見てたオオカミ、どこに行ったの?」

「え?あほんとだ、どこに……ッ!?ひ、光の防護壁!!」


崖上にいたオオカミは気付けば崖下に。

不意を突いたオオカミの攻撃に多少被弾してしまった。

地獄の属性は精霊を使わない、独自の属性だから姿を見失うと攻撃が開始されるまでどこにいるのか分からなくなる。

そのことに気付けていなかった。

二人はそのまま地面へと落ちて―――



「師匠ーーーーー!!!!!」

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