13話
時間が過ぎるのはあっという間だ。
僕、アルライト=ノクオーツは人生で今一番緊張している。
「最善を尽くせ」
「お兄ちゃん、頑張って」
「……アルくん、気を付けて」
家族に見送られ、家を後にした。
今日は何といっても王都へ向かう日。
「エルさん、王都ってどんなとこなんですか?」
「王都はねー、色んな人が集まるよ。エルフとかドワーフとかリザードマンとか…種族の隔たりが無いんだよね。あとはやっぱり面白いお店がたくさんあるかな」
「へー」
「あぁ、でも…貴族側は実力主義かもしれない…一応気を付けておいて。国王の家系で一人、君と同年代に荒っぽいのがいるから。」
「わ、わかりました」
おそらく、中等学校のときよりひどいのが王都の貴族なのだろう。
正直学園は落ちた方がいいのではないかと思ってしまう。
一番恐れているのは中等まで僕をいじめていた奴らが王都でより過激になるんじゃないかということ。そして僕が入学すれば間違いなく標的になるのは僕。
『怖いか?』
『いいや。強くならないといけないなって』
『はぁぁぁぁぁぁーほんとになんでこいつを契約者にしたんですか姫様』
『私の魔法を使える才能があるからじゃよ』
『こんなパッとしないやつが?ほんとにぃ?』
『あはは…』
リーンも元々姫様…神様と契約しているから意思疎通できるみたいだ。
それと同時に僕が考えてることが筒抜けになっている。
「そういえばさ、あんた杖はどうすんの」
「え?あー…すっかり忘れてました」
「えぇ…人一倍頭いいのになんか抜けてるよね」
「よく言われます」
日が暮れては村を訪ね宿泊し、また王都に向けて出発した。
三日間何事もなく着きそうで安心した。
――――――――
深い森の中にて
「はぁ…はぁ…きゃっ―」
いかにも高そうな服を着て逃げ回る少女が一人。
後ろにはオオカミの魔物が。
「どうして…なにあの魔物ッ…」
この辺に生息しているオオカミの魔物と言えば、夜行性の銀狼ぎんろうぐらい。確かに縄張り意識が強いが、こちらから手を出さない限りは危害を加えては来ないはず。手を出せば群れで襲ってくる。そして何よりの特徴として、銀と付くぐらいの美しい毛並み。
ショートカットを提案されこの森に入ったのが間違いだった。
たった一匹の、漆黒のオオカミにすべてを壊された。
魔法は弾かれ、体の表面は鋼鉄のように固く覆われている。
その代わり少し足が遅い。現に私が逃げていてもギリギリ追い付かれることは無―
オオカミがニタッと笑った気がした。
あの獣からしたら私はただの遊び道具だったのかもしれない。
みるみると距離が縮まっていく。
死にたくないという一心で、無我夢中になって走った。
走り続けた結果―
幸か不幸か、足を踏み外して崖からずり落ちてしまった。
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