12話

初めて【ウォーターボール】が使えた日以降毎日特訓に励んだ。

魔法を使う感覚がクセになっていて、とにかく楽しいのだ。

今では中級魔法なら全属性、ほぼ全部が使えるようになった。

気になる点があるとすれば桜花爛漫おうからんまんというあの刀だ。

今日まで一つも話題にならなかった。

魔法を纏わせて魔法剣…いや魔法刀にして戦う…?

それともこれが杖の役割をしているのか…?

なんてことを考えていると―


『まぁざっくりと使えてきてはおるし説明するか』

「びっくりした」

『桜花爛漫、なんて呼んでいるが正式名称は【爛漫刀・春】じゃ』

「春…ってことは夏と秋と冬の刀もあるんですか?」

『察しがいいの。じゃが刀が四本あるわけじゃない。これは季節が変わると使える技も変わってくる、そんな奇妙な刀…じゃから、ある程度魔法に慣れるまであまり使わせたくなかったのじゃ。クセ強いし。でもまぁいい機会じゃ、使ってみよ』


なんでも刀に憑いている精霊の気分次第で変わるらしい。

恐る恐る柄を握り、抜刀した―


「一体何百年使わないつもりよバカ姫~~~~!!!!…ってあら?」

「えっと…初めまして…?」

「えぇ、初めまして。それと見苦しいところを見せてしまったわね、ごめんなさい。ところで…アナタ、誰?」


友好的だなと思ったのも束の間、唐突に殺気を向けられて声が出ない。


「私たちが認めたのはあの姫様だけなの。今回は見逃してあげるから二度と触れないで頂戴」

『それは困るの』

「えっ…姫様?ど、どこに…」

『ここじゃよ』


声のする視線の先には僕がいる。そしてあの殺気を再び向けてきた。


「おい人間。姫様に何をした」

「姫様…っていうのは名も無き神様であってるの…?」

「はぁ?名も無き神?姫様には■■■■■■っていう名前が―」

『 リ ー ン 』

「はっ…はい!」

『私は今名も無き神となっておる。その名前はとうの昔に捨てたし、その名前にすれば禁忌じゃ。それと、この人間は我が主。契約を提案したのも私。どうか責めるなら私にしておくれ』

「で、ですが…」

『まだ何か?』


リーンと呼ばれた精霊は項垂れた。

どうやら神様には抗えないらしい。


「……人間、改めて謝罪するわ。ごめんなさい。私はスプリーン、この刀の春に憑く精霊よ。よろしく」

「アルライト=ノクオーツです、よろしくお願いします」

「言っとくけど、姫様に言われてこうしてるだけだから。あまり馴れ馴れしくしないで」

「えぇ…」


どうやらこの刀の精霊に好かれるには時間がかかりそうだ。

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