11話
今日の特訓が終わった。
「ただいまー」
「「どこに行ってた」」「の!?」「んだ!?」
帰ってきて早々、父さんと妹にすごい形相で言い寄られた。
「あ、いやちょっと森林の方を…」
「森林のどこだ。私たちも行ったがいなかったではないか」
「え、えぇ…?」
「どこに行ってるかわからなくて街中も探したんだから!!」
「えーと…大森林の少し入ったところ…」
二人の顔が青ざめた。
「早まるな!頼むから…なんでもはしないがなんでもしてやるから!!」
「キュウ…」
父さんは必死の説得、妹は気絶した。
そのあと冷静になった父さんと母さんから一時間近くの説教をされて、解放されたと思いきや今度は妹が腕にしがみついてきた。
「自殺だけはだめだよ」
「いやだからしないって。ていうかなんで自殺になるんだよ」
「魔法使えない人間が、魔物がウジャウジャいるところに一人で行ったらそれはもう自殺でしょ」
「あ、そっか」
納得してしまった。すれ違った人に怪訝な目で見られてたのはそのせいか。
「ごめんて。もうしないから」
「ほんと?」
「ほんとだって」
「死んだら責任取って私も死にます」
「えぇ…?」
妹も納得してくれたみたいで腕を放してくれた。
それから数日は常に妹が隣で監視してきた。
『こうなっては私のことを話すしかないかのう』
「それはやめてください」
「え?なにを?」
「えっ…あ、いやごめんなんでもない」
「???」
『あっはははははははは、心の中で呟いても会話できることを忘れておったな!?』
『……わざとか』
『はて、なんのことじゃろうな~』
『特訓、どうするんですか』
『そうじゃなー…円滑に進めたいし、もういっそ家族に話すのはどうじゃ?』
『いやぁ…』
『でも時間が無いのじゃろう?』
すっかり頭から抜けていたのだが受験まであと二週間ほどなのだ。
しかも王都までは馬車で二、三日はかかる。
今は一日一日が大事な時期なのだ。
『ティルムには話すか…信じてくれるかな』
『魔法使ってるところを見せればきっと大丈夫じゃ』
―――――
「ってことがあって~」
「なにそれ胡散臭い」
「『なあっ!?』」
一連の出来事、大森林に行った理由も全部説明したがどうやらまだ怪しまれているようだ。
「大体魔法が使えるようになったって…もう使えないって言われてたじゃん」
「それがちょっと変わった方法なんだよ!」
「へぇー?じゃあなんか出してよ、魔法」
「……ウォーターボール」
指先に小さめのウォーターボールを出し、それをティルムの顔めがけて投げてやった。
「わっ!ほんとに使えてるけど、誰でもできるウォーターボール…じゃなくて!!なんで私の顔に投げるのさ!!」
「偽物じゃないって信じてもらうため?」
「うううう~そうかもしれないけどさ~~~~でもよかったぁ…」
ティルムが泣き出してしまった。
傍から見れば完全に僕が悪者になってる…。
『兄妹揃って泣き虫じゃのう。特に主は成人に近いのだろう?』
『うるさいよ』
『へへへっ』
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