10話

『主な四属性の仕組みが分かったところで残るは聖と闇じゃが、その前に一回使ってみるか』

「え、いやでも僕は魔力回廊が…」

『そのための私じゃろう。ほら、手を握れ』


手を握った瞬間、自分の中に何かが流れてくる感覚がした。

というか体がどんどん軽くなって…なんだか力も湧き上がってくる…!?


『驚いているようじゃな。この魔法の特性は補助、私が生きた時代も使えぬ者にこうやって使えるようにしたんじゃ。懐かしいのう』

「じゃあこれで…!」

『あいやちょっと待て』

「え、もう使えるんじゃ?」

『魔法は自分の中の魔力回廊を使うじゃろ?』

「はい」

『つまり内から放出…じゃが私の魔法は外に流れている魔力を使って発動させる。じゃから、お主には魔法陣を覚えてもらった』

「今の魔法って魔法陣無くても発動するんですか?」

『いや、魔法陣は魔法を使うとき絶対に必要となるが…今の時代は便利じゃのう。詠唱するだけで魔法陣が完成するとは。』

「便利ですね」

『便利どころか私がいたことを否定してるようなもんじゃ!…そんなことはさておきやってみるぞ。最初じゃし、この紙に魔法陣を書けばよい。ほれ』


なにも書かれていない、ただの白紙。


『私も手伝うから感覚を掴んでおくれ』


まずは簡単な水属性の魔法【ウォーターボール】から。

この魔法の魔法陣はマルしか使われていない。威力も無いため誰もがこの魔法からやり始める。

紙に書く魔法陣の大きさで強さが変わる。

魔法陣の書き方は空気に流れている魔力を一点に集めて一気に書く。

書き終わったら自分の魔力回廊と魔法陣を共鳴させる。

魔法陣が光れば成功だ。


『さぁ、放て!』

「ウォーターボール!!」


風船ぐらいの大きさの水玉が前方に向かって発射され、壁にぶつかってはじけて消えた。


『上出来じゃ…っておい!!なぜそんなに泣いておる!?』

「え…あ…」


気付けば嬉しくて涙を流していた。

魔法が使えた…誰でもできる魔法。それでも使えたことに感動している。

もう二度と使えないと思っていた。ほんとに嬉しい。


『やれやれ。この程度で泣いてたら先が思いやられるわい』

「グスッ…すみません」


―――――――――――


一方その頃、ノクオーツ家


「アルライトが出かけてからもうじき二時間…一体どこを歩いておるのだ…?」

「ただいまー、街見てきたけど見当たらなかったよ」

「なっ…!?…こほん。ティルム、ありがとう」

「お兄ちゃんどこ行っちゃったんだろ」

「まさか…森林の方へ行ったのか…?それも奥の大森林側へ」

「そんなことお兄ちゃん知ってるはずだし魔法使えないってわかってるから行かないんじゃ?ほんとに行ってたら自殺してるのと変わらないし」

「自殺…」

「……」


「「あり得る」」


魔法が使えないまま何十年と過ごし、今回の事故がきっかけでストレスが爆発して自棄ヤケになって――


え、嘘お兄ちゃんが自殺?私のせいで?嘘だよね?嘘嘘嘘嘘嘘嘘…

でも本当だったら――


「なぁティルム。一応森林の…あの池の近くまでは行かぬか?」

「もちろん行きますお父様」


本人アルライトのいないところで心配性の二人が慌てふためいていましたとさ

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