9話
今日も今日とて書庫に…と思ったのだが夜に名も無き神から呼び出されているので今日は外出。
父さんとティルムと師匠にめちゃくちゃ驚かれた。
引きこもりか何かだと思われてる?
すぐ近くにある山の中を少し進むと開けた場所に出るのだが、今回指定された場所はそこよりもさらに奥。大森林の中だそうな。
正直進むのは嫌である。魔物は普通にいるし遠いし。
しかし何かあっても守るとのことだったので恐る恐る行くことにした。
―――――――
どれぐらい歩いたのか。分からないがおそらく到着した。
『お、来たか。ちょうど準備が終わったところじゃ。行くぞ』
「ちょ…休憩…休憩させて…」
『ここにおると食われるぞ?』
「行きます」
案内されたのはボロボロになった小屋。一体この中に何が―!?
扉を開けるとあら不思議!
「どこやねんここ」
初めて会った場所に似ている。
『扉を通じて私の世界に入れた。家でもできるのじゃが、いたはずの人間がいなくなってたら不審じゃろ?かといって街の中の扉だと他の人の目がある。今回たまたま、この場所を見つけてな』
「はえー」
『ま、そんな話は置いといて。さっそく特訓するぞ!あ、どうでもいいがこの空間の中の時間はかなり遅く進んでる。向こうの一時間はこちらでは六時間ほどじゃ』
「特訓って何をするの?」
『ま、とりあえず必要なのは魔法に関する知識じゃ。この本に書いてある魔法陣を全て覚えろ』
「え"っ」
そこそこ厚い本が目の前に置かれた。
めくってみると、一ページから百五十ページまである。
『それじゃ、頑張ってな~~』
―――――――――
あれから四時間ほどが経った。
一度ざっくり読んでからじっくり読む方法を採っているが、それでも半分過ぎたぐらい。火属性、水属性、風属性は全部見終わり今は土属性の魔法陣を見ている。
『これ。そろそろ一息せんか。さっきからずっと読みっぱなしで飲み物すらも飲まないじゃないか』
「あほんとだ」
『はぁ…集中できるのはいいことじゃがの…ほれ、茶じゃ』
「いただきます」
『ちなみにその茶は私特性で飲むと色々効果が付くぞ☆』
口に含んでいた茶を吹き出した。
『おいおい、なんじゃ汚い。別に悪い効果は付かんぞ。記憶力向上、魔力感知増強、干渉力強化その他諸々。一応お主のために調合してやったんじゃぞ?』
「え、あ、ごめん…」
申し訳なさから茶を一気に飲み干したが『急ぎすぎじゃ』とまた怒られた。
なんでも味わってのんびりとしながら菓子と一緒に楽しむのだそう。
『まぁよいわ。何か気付いたか?火、水、風だけでも』
「うーん。なんというか…」
火属性の魔法陣は全体的にかなり複雑で、水属性は大雑把というか、必要最低限のことしか書かれていない。風は遊び心があるのか発動自体はするけど魔法陣自体がかなり特殊な形をしている。
土はまだ全部を見ていないがスキルによって形がバラバラである。
例えば土壁―この魔法は主に防御に使われるもので魔法陣の形は四角形がもとになっている。生成系は円形、攻撃系は三角形をしている。
『ほう。やはりお主、勘が鋭いのもあるかもしれんがしっかり見ておるの』
「これで合ってるんですか?」
『あぁ。あとはそうじゃな、なぜ属性によってこんなに違うと思う?』
「えーと…火は威力が高いから複雑で、水は誰でも簡単に使えるよう工夫されてる。風は神様のせいで、土は…すみません、まだわかりません」
『なに、そこまでわかってるなら合格じゃ。土属性は元々一つの魔法陣じゃったが使い勝手が悪かったんじゃ。それで今の形になった、というわけじゃ。風は神の悪戯が模範解答。あやつは自由奔放がゆえ気まぐれじゃ』
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