6話

名も無き神と契約をした。

実感は湧かない。魔法が使えるようになった!!という感覚もない。


「ありがとう、アルライト=ノクオーツ…どうせ私の最初で最後の契約だ。お主が私に名前を付けてくれ」

「それこそ時間がかかりますよ」

「大丈夫じゃ。私はいつもお主のそばにおる。考えがまとまったら心の中で呼ぶがいい」

「わかりました」

「――そろそろ時間じゃ。またいつか」


―――――――――――


「――ライト!アルライト!!目が覚めたか、聞こえるか?!おい誰か医者を呼んでくれ!!」

「…ぅん?」


目が覚めると知らない天井があった。


「お兄ちゃん!!」

「うぇっ」

「こ"め"ん"な"さ"い"」

「怖い怖い怖い」


ティルムが僕を見るなり飛びついてきて号泣しながら謝ってきた。


「別に怒ってないよ」

「ほんと?」

「うん」


ぎゅーっと抱きしめられた。かわいいなこの妹。


「よかった、生きてる」

「死ぬわけないじゃんか」


「まぁ一時的に死んでましたがね。みたいでなによりですよ」


「あ、えっと…?」

「初めまして。医者のカヴェールと申します。あなた、五日と半日ほどずっと意識がない状態でしたよ。その中でも四日目、つまり昨日ですね。ほぼ死んでいました。」

「え」

「そうなんだよお兄ちゃん!だから…ほんとに…うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」

「おいおい泣くな泣くな」

「そうだぞ、アルライト…ぐすっ…生き返ってくれて…よかった」

「父さんまで…」


眼が赤くなっている。さっきまで泣いてたんだろうな…


「そういえば、お母さんと師匠は?」

「あいつは泣きすぎてメイクが崩れ、エルレイトは見せる顔がないからと先に帰ってしまった」

「なるほど…」

「ちょっとこの雰囲気の中横からで申し訳ないんだけどアルライト君。目覚めたのはいいがどこか痛むかい?」

「今のところどこも…」

「そうか、ならよかった。でもあと三日は入院してもらうよ」

「わかりました…」

「てことで治療をするのでお父様と妹様はご退出願います~~~」

「「え、あ、はい」」

さぁ出てった出てったと言わんばかりに無理やり父さんとティルムを追い出す。


「さて、と。アルライト君。聞きたいことがある。君、意識を失っている間に何があった?」

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