5話

「まず、お主に関してじゃ」

「僕?」

「―すまなかった」

「どうしたんですか急に!?頭上げてください!!」

「お主の魔力回廊がボロボロなのは私のせいなんじゃ」

「……え」

「順を追って説明する。お主はアルライト家に生まれて――」


僕がアルライト家に生まれてから間もない頃、魔物の暴走…いわゆるスタンピードが起きた。

魔物たちは次々と街を破壊した。終わりが見えず、皆はただ死を待つだけと思われたが自分を犠牲にして終止符を打ったのが―

エンペティア=ノクオーツ。

僕のお爺ちゃんだった。

しかしこの街も多少は被害を受けていて、僕はそれに巻き込まれたそう。

魔物が放つ、特殊な魔法瘴気。これにてられたせいで魔力回廊が壊れた。

そのときの僕に手を出したのが名も無き神らしい。

曰く、魔力量が多くこのままでは最悪死んでしまうとのこと。

かといって治療をするとかえって悪化する。特に魔力量が多いと。

だから、治療はせずに時間を止めた。

そしてこのことは一切覚えさせない。何かあったとしてもすぐに忘れさせる、という内容で契約をしてあの本に綴った。

本には認識阻害をかけ、次見つけたときまでが契約の期限とした。

そして今、


「この契約が無くなったらつまり、僕は死ぬの?」

「いやいやいやいや何故そうなる」

「だって時間を止めてるんでしょ?解除するんじゃないの?」

「契約内容は記憶に関することだけじゃ!!」

「ならよかった…」

「にしても、ほんとにすまんかったの…私のいた時代は魔法を使える方がおかしかったんじゃ。昔の考えのままでお主の時間を止め、苦労をかけてしまった…」

「大丈夫ですよ。魔法が使えないのはアレですけど、死ぬよりかはマシだしなんだかんだ今の生活も気に入ってるので」

「優しいのぉ…こんなしんみりとしたときにこんな提案したくないんじゃけど、お主。私と新しく契約を結ばんか。なに、今度はいい方に向かうはずじゃ」

「どういう内容なんですか」

「ざっくり言うと、誰でも魔法が使えるようになる。それが私の魔法じゃ。細かいことは契約したあとに特訓するつもりだからその時にでも。あとこれはお願いなんじゃが、どうかこれを持っていてほしい…」


差し出されたのは剣…いやこれも本で見たぞ…


「刀、ですか」

「そうじゃ!!博識じゃのう~感心感心。これは私の愛刀『桜花爛漫おうからんまん』。良い名じゃろう」

「契約したときにこの刀も貰えばいいんですね」

「うむ。それで返事は……あっ!別にすぐじゃなくてもいいぞ」

「いえ、魔法が使えるようになると聞いてから決めてましたよ。名も無き神様、新しい契約よろしくお願いします」



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