4話
私には魔法の才能があったらしい。
兄に就いていた師匠も今じゃ私しか見ていない。
下級魔法、中級魔法までは調子が良かった…
―今日の上位魔法を使うまでは。
「何の音だ!」
今の音で父が焦って飛び出してきた。
「すみません、ノクオーツ伯爵。ティルムが、その…暴発させてしまいまして」
「なに?暴発?ティルム、それは本当なのか」
「は、はい…ごめんなさいお父様…」
ため息を一つついて、壊れた箇所を見て目を見開いた。
「………あそこは書庫だったな」
「え…あ…」
「まさかとは思うが、アルライトは書庫にいたのか?」
「………」
ティルムは今にも泣きだしそうな顔で頷いた。
「この話はまた後だ。エルレイト、君は探知魔法が使えるか?」
「使えます。使ってます。ですが…彼の魔力回廊がぐちゃぐちゃすぎて引っかからないんですよ」
「これはまずいな」
魔法が当たった部分の壁は壊れ、ガラスは全て割れて破片が飛び散り、本棚はほぼ倒れている。
上級魔法がいかに強力で危険な魔法なのかがわかる光景だろう。
あの中から探し出すのは…時間がかかりすぎる。
「仕方ない、手分けして探すぞ。使用人たちも手伝え!」
――――――――――――
「うーん…ん」
「お、目が覚めたか?」
「え、ここはどこ?」
「自分のことはわかるか?」
「僕はアルライト=ノクオーツ…」
「何が起こったかは覚えておるか?」
「確かすごい魔法が横から飛んできて…ってもしかして僕死んだ!?」
「一瞬死んでたぞ。私が治したけど」
「それありがとうございます。―で、ほんとにここどこ」
辺りを見回すと…確かあれは鳥居、と呼ばれるものだっけか。
確か本で見たときは大抵は赤色だったはずだが目の前にあるのは真っ白だ。
それだけじゃない。鳥居の奥に建物があるがそれも真っ白。
色がない…?
「大方君の考えで合ってる。細かく言えばここは君の精神の中。実は君が三歳のときから住んでる。そしてこれは、元々私が幽閉されていた空間にそっくりなモノじゃ。色が無いのはお主のせいでもあり私のせい。」
「えぇ?あなたは一体?」
「私は名も無き神。ところでお主、鳥居を知っておるとは中々に博識じゃのう」
「本で見たので…」
「ははは、見ただけでずっと記憶できる者なんてそうおらんぞ」
「はぁ…ところで、なんで今…」
「あ~。本じゃ。お主が最後に見たあの本、私が仕組んだ」
「???」
名も無き神はざっくりと説明してくれた。
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