3話
「お兄ちゃん、いつも本ばっかり」
「あはは…これしかやることがないからね…」
「よく魔法使えないのに卒業できたね」
「条件は課されてるけどね…」
中等学校からは魔法の実習があった。
内申点の約四割を占める実習だが、僕には無理だったので成績はゼロ。
その代わり勉学では常に良い成績を取っていたのでなんとかなったのだ。
「にしてもなんでよりによって王都の魔法学校に行くの?お兄ちゃん魔法使えないじゃん。受験するだけ無駄だと思うよ?」
「そうかなぁ」
「そうだよ。お兄ちゃんは一生ここでのんびり過ごしてればいいの。私が養ってあげるから」
「さすがにノクオーツ家の長男が妹に養われるなんて家名に泥を塗ってるもんだろ」
そう。貴族…身分の高い者の、通らなくてはいけない道。
それが『王立メリュディス魔法学校』
一応貴族の端くれとして、面子を保つために行かなければ。
受験の資格は中等学校を卒業していることだが、各地から集まるせいで倍率がとんでもない学校なのだ。
おそらく今のままで合格なんて出来ないだろう。むしろ試験会場で恥をかくだけかもしれない。
今は三月の終わりごろで、入学試験があるのは五月の初め。
願書は一週間前までなので猶予は残り一ヶ月―
この期間中に何としてでも使えるようにならないと。
―――――――――
今日も今日とて書庫にこもる。
外では師匠と妹が特訓している。今日はどうやら上級魔法を使うらしい。
少しだけ窓が開いていて、そこから話が聞こえてくる。
「――いい?上級魔法は威力が高くなる代わりに詠唱時間も長くなる。でね?ここからが重要なんだけど、詠唱中に一文字でも間違えると暴発しちゃうの。だから焦って使っちゃダメ。下手したら自分が死んじゃうわ。だからここぞという時だけに使ってほしいの。約束できる?」
「はい!」
「うん、いい答えだね。じゃあまずは肩慣らしで下位魔法を使って行こうか―」
一節抜けて暴発なら分かるが上級になると一文字でも間違えるとダメなのか。
それだけ巨大な魔法…
妹が魔法を使っているのを見ると正直羨ましいという気持ちもある。
自分にも使えたらこんな思いをせずに済んだかもしれないのに。
けれどそんなこと考えたってどうしようもない、と自分に言い聞かせて本を読む。
今日は古代についてだ。今から何百、何千年と昔の魔法ができたときの話らしいが…
長い間この書庫に引きこもっていて、この中にある本は全て読んでいたはずなのに。
そう、おかしい。どこからともなく、導かれるようにこの本を手に取っていたのだ。
「まぁ知らない本でも全部自分の知識にするのみ!」
とページを捲ろうとしたその時。
「――お兄ちゃん!!!避けてー!!!!!」
「え」
妹の叫び声を聞き隣の訓練場を見た瞬間激しい衝撃波とともに暴発した魔法に直撃し、僕はそのまま気を失った。
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