第74話 鬼討伐後

 外套をかけてもらい、トレーラの中でシャワーを浴びている、戦いは、モニターでみていたんだろうなぁ、普通サイズならなぁ、馬鹿にされるだろうなぁ、鬼を倒した達成感よりも、繊細な男心には悩む事が多くある、「 なっ! 」目の前真っ白、皮被りの小指の先端の汚れていた。


 鬼と戦いながら、興奮して勃起して、漏らしていたらしい、人間終わっている。


「 ここに、着替え置いておきます 」

「 あ、ありがとう 」涙が出たわ。


 ライダースーツが置いてあった。


 勝手な行動をしたことに、少し小言があったが、鬼斬さん達は俺をほめたたえた。

 でも、元気でない。


 戦いは終わってない、5m級が2匹もいる。


 鬼斬さん達は、今度は俺達がヤル、休んでいてくれと言われた。

 5m級鬼の動きを観察、オペレータに攻撃に移る一瞬手前を表示してもらうように指示。

 50個ほどあるスクリーンには、いろんなパターンの攻撃する一瞬前から攻撃までの要するが繰り返し表示される。


「 この鬼、右足を下ろすとき、左足が横に向きます、逃げて逃げて、このタイミングで左足を狙ってください 」


「 神々廻君、凄すぎる、わずかな動きに気づくなんて 」

「 こいつは、両方の拳を同時に突き出す事があります、大きくのけぞります 」


 数の暴力ってあるのだと実感した、体をのけぞらせた瞬間、7人の鬼斬が群がった、左足にも7人の鬼斬が、鬼の足が無くなっていた。


 大型トレーラの中、愛車ドレイクの横にある簡易ベッドで寝ころんでいる、単車事自宅まで送ってもらえるそうだ。


 36年の精神年齢があっても、男心というのは、薄いガラスのままだと知ってしまった、朝起きたら、忘れられるといいのけど、ゆうつなまま眠る事に。


 早く眼が覚めたので、8m級鬼との闘いの録画映像をガン観、3台のドローン、近くの監視カメラ8台の映像がある。


 メッチャカッケェような、服が引き裂けていくところなんか、映画のシーンみたい。

 途中から土埃で、下半身映ってないし、たまにちらっと血まみれで良くわからん、理由は明白、ちっちゃくて監視カメラではとらえられないのだ。


 すべての映像を確認、墓場まで持っていくと決めた、心の誓いは守られていた、老人になるころには、十分に成長しているはずだと思いたい。

 枝垂桜と紅桜を抜く、8m級鬼の力を吸い取った気がしたからだ、ドクドクという鼓動も感じた、刀身を観た感じ、冷たい輝きがあるような気がしていたけれど、より強い輝きになったというか、冷たさを増したような気がする。


 高校、警察から休んだ事についての説明はきちっとしてもらっているようで、なんのお咎めもないのだが、授業出てない分俺は遅れてしまう。

 陽子にノートを借りて、頑張ろう。


 世間は今回の鬼騒動で、持ち切り、誰かに責任を取らせたいようだ、現場にて命がけで戦った方達に被害が及ばぬよう祈るだけだ。


 昼休みである、女子は合同で話があるとかで、陽子と裏庭でお弁当を食べるといういつもの行事は無かった、で、本田と松村の3人で、校庭の桜の木の下、花がさいているわけではないが、なんとなく、弁当を食べているわけである。


 女子が結構いて、グランドの周りにある芝生でお弁当を食べたりしている。


 本田はとうとう単車免許を習得するため自動車学校に通い始めた、一発挑戦16回 ほぼ1年かかっているのだが成果なし、家族からも試験場の人からも、俺達からも自動車学校に通うよう勧められた結果である、自称単車のプロ、神だとか言いまくっていた本田のメンタルはボロボロ、知識と運転技術は別物である、とうとう彼なりに現実を理解したようだ。


単車の話をしているわけだ、どうやら軍資金はお母さんが出すようだ。


「 赤い原チャリスクータ買うっていうんだぁ 」


「 ぶっ 」

「 乗れると思うか 」

「 自分で買えば 」

「 金があったら買っているわい 」すねた。


 話していると、最近見なかったので何処かに行ったのかと思っていた、3つ目のカラスが俺達が座っている桜の木の枝に止まっている。


 10人ほどの女子が、こっちに向かって歩いて来る、こういう場合なによりも、心の準備が大切である。


「 本田、松村、何も考えずに前を観ろ 」「 ん? 」


 俺は心を落ち着かせ、眼に集中するのみである。


 女子の集団が俺達の前を通りかかったとたん、突風が地面から空に向かって吹きあった。


「 きゃぁーーーーーっ! 」


 腕を突き出す Good Job, Good Job 三つ目のカラスは満足そうに微笑んだ気がした。


 本田と松村、眼がウルウル、「 いきてぇえかったぁ 」パンチラでこれかよ、どんな人生なのだ。


 いいもの観た気分、スキップしそうになる気持ちを抑え、顔が緩みそうになるのも、我慢して、教室に戻る。


 血の涙を流すクラスの男ども、締りがない緩み切った顔をして、大声で話をする、本田と松村、女子の冷ややかな眼差しにいいかげん気付けよ。

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