第70話 妖刀風殺 4

 唖煩あぼん渓谷までドレイクに乗ってやってきてしまった。

 カーボンファイバー製のバトルスーツ装着済みである、男の鬼切前田さんが横にいる、同じデザインのバトルスーツ、体に密着している、股の所、松茸の形がこれでもかと浮かび上がっている、俺ふくらみねぇ。

 頼むからドッカいってくれぇーーーっ!


 浅井さんがさらわれた場所に、下呂は飛んで移動している、風の妖刀だけの事はあるのかも。

「 ここからはむりねぇ 」

「 覚悟を決めて、ロープで降りましょう 」

 下呂が潜んでいる場所へ行く方法を話している。


「 ご主人様、川を走りましょう 」

「 んっ? 紅桜、川に入ったら急流に流されてしまうぞ 」

「 水の上を走ればいいんです 」

「 枝垂桜 どういうこと 」

「 そのままです 」

「 俺、水の上走れるの? 」

「 走れますよ 」

 それを聞いたらもう男のロマンである。


 浅井さんだけでなく、他にも多くの女性がさらわれている、グダグダしていられるほどの余裕は無い。


「 足の裏に霊力を、紅桜が霊気を誘導します 」

「 お、おう 」


 まじかぁ、川の水の上に立っている。


「 俺先に行きます 」

「 霊気を足の裏から放出すれば、水の上でも走れますから 」


 谷底に流れる急流の上を走る、体が腐るような邪気が、風殺が気づいたのか。

 封殺は渓谷の間を飛んで来た。

 俺は川の上、封殺は空中、こんな戦いあるのか。


 天然理心流を極めているとはいえ、水の上で、空を飛んでいる奴との戦闘を意識した型も技もねぇ。


「 何者 」頭の中に、妖刀風殺の声。

「 刀である誇りを無くし、存在しているなんて、さっさと朽ち果てなさい 」

 なんと枝垂桜が、大人のお姉さんのような言葉を。


「 う、うるせぇ! 」

「 鬼も斬れない、ゴミ刀、へし折ってやるわ 」紅桜まで。


「 俺を侮辱するなぁーーーっ! 」

「 俺はなぁ、ご主人様に恵まれなかっただけだぁ、 立派なご主人様と出会う事さえできたら、最強の鬼斬刀になっていたはずなんだぁーーっ 」

「 私達のご主人様よ、最高でしょ 」


「 ご主人様へし折ります、粉々にしてやりましょう 」

「 お、おう 」


「 自慢してんじゃねぇ! 」


 下呂が斬りかかって来た、いなすように刀の方向をそらせ、下呂の腕を狙う、ボキ、カキィーーン、グチャァ。

 刀が打ち合う音とは違った音が。


 下呂の手首が変な方向に曲がっている。

 下呂が刀を使うのではなく、風殺が操っているようだ。

 無理やり動かすから筋肉が千切れ骨が折れた。


「 風殺みじめ、私達のご主人様は完璧に使いこなすの 」

「 うがぁーーーーっ! 」

 妖刀風殺、心理戦に弱いのかキレた。


 刀の動きは人のそれじゃねぇ、下呂の腕は皮でつながっているだけ、骨も筋肉もグチャグチャ、タコかイカが足の先に刀を持って振り回しているような動きだ。


 精神の集中、腕・腰・足、呼吸そのすべてが体と一体となり、刀身に伝わる事で、斬るという現象を可能にするのが日本刀である、妖気で無理やり動かしているような剣撃など、鋭さも重さもない。


 キン、カキーン、キン、キン 刀と刀が打ち合う音が響く。


 上から振り下ろしてくる刀を紅桜でいなし、枝垂桜で手首を斬る。

 ボチャーン 下呂の手首が柄を握りしめたまま、刀と一緒に川の中に落ちた。


 妖刀風殺が体から離れたとたん、ただの人に戻った、「 ギィヤーーーッ! 」両腕の骨と筋肉がグチャグチャになった下呂、悲鳴を上げて急流に飲み込まれていった。


 慌てて引き上げようとしたが、下流で、レスキュー隊が活動しているのがわかった、何て素晴らしい手際なのだろう。


 妖刀封殺と戦った直ぐ近くにある、河川敷から、黄色い歓声があがる。


 全裸の女性が10人以上いた。

 体を隠そうともしないで、大号泣しながら手を振っている。

 眼の保養、眼の保養、眼の保養、人数が多すぎる、情報量の整理が追い付かない、一人ずつ順番なんて思うのは贅沢なのだろうか。

 超犯罪課の鬼切、一番の巨乳、浅いさんのお乳、モニターではなく生をガン観したわ。

 下呂の奴、良い趣味している。


「 鬼切の神々廻です、助けにきました 」

 こうゆう時は、キリっとした決め顔、現場の警察官からしっかりと学んでいるのだ。



 俺が川の水面を走っていった後、眼が点になってしまった鬼切達。


「 み、水の上を走れるのか。。。。 」

 鬼切前田が川の中にはいった。

「 ギィヤーーーッ! たすけてくれぇーーーっ! 」

 夢遊病のように、つられて川の中に足を踏み入れた、鬼切前田は、急流に流されていく。


 同行していた、レスキュー隊が前田の救出に動き出す。


「 助けに来て、足を引っ張るなぁーーーっ! 」現場の指揮をとっている、鬼切今川の雄叫びである。


 レスキュー隊がロープを張り、前田を救出しようと行動していたら、ロープに人が引っかかった。

「 こいつが下呂よ、直ぐにこっちに 」


「 早くたすけてくれぇーーーっ! 」

「 忙しいのよ、鬼切なら自分でなんとかしなさい 」

 見捨てられた男がいた。

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