第66話 比治山ライダース

「 すまん! ぎぎられたぁーーっ 」

「 俺も! 」

「 俺も! 」

「 早さの次元が違うぞぉーーっ! 」


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 66.比治山ライダース


「 任せろ! 俺が、単車乗りの魂の走りを見せてやる! 」


 自称比治山峠最速の男は、あえて速度を落とし、2ケツの単車が登ってくるのを待つ。

 ミラーに映ったら、急加速し、伝説のコーナーリングテクを見せつけてやると、顔がにやける。


「 くふふふふ 」

「 未熟差を思い知れ、2ケツで峠を走れるほど世の中は甘くないんだぁ 」

 自称比治山峠最速の男の眼はぎらついている。


 ミラー越しに、登ってくる単車を確認。


「 伝説の走りを見せてやる! 」

「 あっ、ちょっとまてぇ 」

 アクセル全開で、急加速するはずが、急コーナーが目の前に迫っていた。


 速度を落とし過ぎていたのか、登坂加速が間に合わない、アクセルを全開にしたいが、急コーナ目前、慌てているあいだに、2ケツの単車は、追い抜いていった。


「 はぁ~っ・・・・ 」


 スタンドのおっさんは、肩をがっくりと落とし、まるで人生が終わったような負の雰囲気をまき散らしながら、ため息をつき、地べたに座り込んでいる比治山ライダース達に気付く。


「 どうしたぁ、なにかあったのかぁ 」

「 ぶっちぎられたぁ 」

「 はぁ~っ 」

「 女をのせていたぁーーっ! 2ケツで峠を責めるやつなんかいねぇ、お前らどれだけおせーんだぁ 」


「 うるせぇ! 」

「 俺たちはどんな時だって走りつづけてきたんだ、台風のときでも、大雪でもだぞ! 」

 誰もが思うアホなだけだと。

「 それなのに誰もかなわなかったぁ 」

「 女を乗せた、単車乗りの風上にもおけねぇやろうにまけたぁぁぁ 」

「 俺たちは女を乗せたことなんていちどもねぇーーっ! 」

 ドヨヨーーーン


 比治山ライダース達、今日はもう走らないようだ、どうやらこいつら他にすることがないらしい、ドヨヨーーーンとしたまま座り込んでいる、日が傾きはじめた。


 俺と陽子は比治山ライダースの事など全く知らないというか気が付かず、出石に到着、出石の皿蕎麦をたらふく食べ、お土産まで買って帰りも同じ道を走る。


 女を乗せたメッチャカッケェ、見た事も無いような単車がガソリンスタンドに入って来た。

 スタンドの横の空き地、総立ち状態の比治山ライダース。


 単車は給油ではなく、自動販売機の前で止まった。

 女が先におりてメットを外す。

 長い黒髪がさらっとなびく、素晴らしいスタイル、それに巨乳!


「 なぁーーーっ! 」


 全身が震えるような美女!

 女が自動販売機でコーヒーを2缶購入。

 男が単車に腰を預けるように立ち、メットをはずす、かっけぇーーっ!

 女が男に缶コーヒーを手渡し、二人は単車に腰を預けるように並んで飲む。


 二人はゴミ箱に空き缶を入れると、男の背中に女が抱き着く様に体を密着、巨、巨、巨乳が背中で潰れている気がする。

 2ケツでガソリンスタンドから走り去っていった。


 まるで切り取られた空間、映画ワンシーン見たような気がした。


 比治山ライダースのむっさいおっさんども、眼がウルウル ウルウル。

 ガソリンスタンドのおっさんは、気の毒でかける言葉がなかった。

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