第65話 比治山峠
今日はドライブである、陽子と
亡き祖父から親父の話も良く聞かされた、親父の好物らしい、小さいとき良く食べに連れていってもらったらしいが、記憶に無い。
そんなわけで、出石の皿蕎麦を食べに、単車の秘儀、2ケツで出石までドライブ。
朝から、カブと原チャリスクータに乗った松村と本田がやってきて、ソビエタツ自動販売機に行こうと誘ってきた。
「 悪い、今日は陽子とデートだから 」
「 今日はじゃないだろう、いっつもだぁ 」
「 俺たちの友情は! どうなったぁ! 」
そんなものは最初から無いはずだ、そもそも、超変態に成長してしまった幼馴染、あまり関わりたくねぇ気がしている。
「 女と単車なんて、男の敵だからなぁーーーっ! 」
「 おまえらなぁ、わめいてないで、彼女つくれよ 」
「 できるものならこの現状にあまんじとらんわぁーーーっ! 」
「 猟だけずっこぃーーっ! ゆるさないからなぁーーっ! 」
付き合ってられないので、さっさと陽子を向かいに出発。
「 どうかなぁ 」
ごくり、無意識に唾を飲みこむ。
陽子はライダースーツを着ていた。
「 んっ いつもより胸がデケェー、というより半端ねぇでっぱり 」
「 お母さんと、巫女達がね、むりやり膨らませたのよ 」
お乳が膨らんだだけで、スーパーモデルのようなプロポーションに見えてしまう。
何が入っているのか気になる所ではあるが、巨乳になった陽子、メッチャえぇ。
俺も男だ、しっかりと惑わされておこう。
2ケツで出発、あれ? あれ? 当たっているのがわかるけれど、ポニュっとした感触がねぇ。
俺は違いがわかる男、惑わされることなどない。
昨日から寝不足になるほど期待していただけに、涙がチョチョギレそうだ。
出石に行くためには、難所である
昨夜、白バイ隊全国優勝者がこの峠を走るパターンをダウンロード、超高性能なXXドレイクはその技術を全自動で再現できる、テクノロジーの勝利である。
急コーナーでタチゴケなんてするわけにはいかない事情があるのだよ。
比治山峠をホームコースとした、熟年のバイク集団、比治山ライダースが、休日でもあるため、毎度休みは自然集結。
彼らは自分たちの事を独身貴族と名乗り粋がっている、若い頃はそれでもよかったが、メタボ原、禿げあがった頭皮、いまとなってはみじめなだけだ。
昔は上り口に喫茶店があったのだが、潰れたため、ガソリンスタンドの横の空き地が集合場所となっていた。
スタンドのおっさん、あぁ~っ 今日も商売あがったりだぁ。
真横に大型バイクとおっさん集団、ガソリンを入れようとウインカーを出していた車は、慌てて入るのをやめ走り去っていく。
むっさいおっさんばかりのバイク集団、休みの日、することが無い連中の集まりである。
「 こんなところで油打ってないで、彼女でも探せ! 」 よく言ってやったものだが、いまとなれば、気の毒で皮肉も言えない。
比治山ライダースは、コーナーの近くに人を配置、無線で対向車などの情報を共有、安全に峠攻めの真っ最中であった。
自称比治山峠最速の男、18歳の時からこの峠で腕を磨き始め、日照り、雨、台風、雪が降っても、休日は欠かさずこの峠で腕を磨き上げ40年、もはや峠で知らない事はない、眼をつむっていても走れる自信さえある。
「 さぁ、みるがよい、伝説のコーナーリングテクニックを 」
急コーナーの手前でギヤを落とし、膝のパットが地面と擦れるほど単車を傾け、テールが流れるのを絶妙のアクセルワークで維持、そしてコーナの立ち上がりでアクセル全開。
「 風が吹き抜けるようなコーナーリングだったぜぇ 」
「 見たかぁ! これが伝説の走りだぁ! 」自己満足自分のテクニックに酔いしていた。
もうすぐ比治山峠だ、「 ドレイク頼むぞ、オートパイロット 」
「 陽子しっかりつかまれ 」
峠攻めをしている、ライダー達に無線が入る。
「 ものすごい早さで峠を登ってくる単車がいます 」
「 2ケツです 」
「 女を載せているもよう 」
比治山ライダースはイキリタツ。
「 なんだとぉーーーっ! 」
「 2ケツで女を載せているだとぉ、単車乗りの風上にもおけない野郎だ! 」
「 聖地比治山峠をげがしやがってぇ 」一度も女性を後ろに乗せた事がないおっさんたちのひがみでしかない。
「 単車は男1人で背中に哀愁を漂わせ乗るものだ 」
「 早い! 」
「 ち、ちぎられましたぁ 」
「 なにぃーーーっ 」
「 聖地比治山峠を守れ! 」
「 単車乗りの魂にかけろ! 」意味不明、独身おっさんを超えてジジイの集団には通じる物があるのだろうか。
「 すまん! ぎぎられたぁーーっ 」
「 俺も! 」
「 俺も! 」
「 早さの次元が違うぞぉーーっ! 」
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