第46話 霊光寺で退魔行

 西村さんは離れで眠っているという事だった、離れというのは、土蔵だった。

重く分厚い土の扉を開け中に入る、開けたとたん、皮膚が腐りそうな瘴気が土蔵の中に充満していた。

土蔵の中には仏像もなく、西村さんが寝ている布団とショットした医療器具、点滴がつるしてある程度、仏像が無いこれすごく重要なポイントである。


「 紅桜! 」紅桜を手にすると、気持ち悪い感触から解放された。

瘴気で俺を怯えさそうなんてことはできないのだよ。


土蔵の中には、布団が真ん中にしいてあるだけ、骨と皮だけ、男と女の区別さえできなくなった骸骨が寝ていた。

 1年半も点滴だけでだと、ここまでに、いや悪霊が命を吸い取っているのかもしれない。

 布団の傍に座る、すこし離れて霊光院様と尼僧が二人座る。


「 土蔵の扉をすべて締めて下さい、瘴気が気になるようでしたら、部屋から出て下さい 」

「 お札を張り付けたいのですが 」


上布団をよけ、寝間着をはだける、内臓があるのか疑問、ヘコンダお腹、あばら骨、紙おむつ。


 眉間、両手首、両足首、お腹にお札を張り付け、ついでに、壁、天井にも張り付ける。

瘴気が土蔵の中に充満しだした。


点滴の棒が、カタカタ揺れ、2本しかない蛍光灯がチカチカ、恐怖心をあおっているわけだ、知っていると滑稽でしかない。


悪霊ってのはたいした力など無い、人の恐怖に漬け込み、取り憑き、操るわけだ、気持ちをしっかり持ち、怖くなんかねぇって頑張っていれば、取り憑かれたりしないのだと、二人の童から教えてもらっている。


 マジか、布団と一緒に浮き上がった、こえはスゲー。

怖がらそうと必死なわけだ、わかっていれば滑稽でしかねぇ。


紅桜、枝垂桜と一緒なわけだ、二人と一緒であれば俺に怖いものは無い!

時間にして約10分、燃料切れらしい、布団は床に、点滴の棒もほとんど揺れくなぅた、西村さんにはほとんど力がない、頑張りもここまで。


「 体を抑えて下さい、霊気を打ち込みます 」


動きが無い、後ろを振り向くと、泣いて漏らしている。


 西村さんのお腹の上に、体重をかけたら骨が折れそうなので、またがるだけ。


あばら骨に両手を添える、「 どりゃーーーっ! 」霊気を体に打ち込む。-


エビが跳ねるように、体が飛びはね、紙おむつを突き破り出て来た、一瞬、太い! ウンチ? とかおもったけど、蛇! 頭部が30cmほど、苦しいのか頭を振り回している。


頭を掴む、手でがっつり掴めた、土蔵の隅に向かって走る、出てくる出てくる。


3mほど出ると、すっぽ抜けた、 床に叩きつける、鎌首を持ち上げ威嚇しようと、両手に鬼斬りを持った俺に怖い物なんてねぇ、枝垂桜と紅桜を振り回し細切れにした。

鬼のように、霧のようになり消えていく。

実態がある蛇、妖怪の類なのか?


 霊光院様と二人の尼僧、床につっぷして顔面が崩壊している、腰が抜けて動けないようだ。


蔵から出て、助けを呼ぶ。


 西村さんのご両親が来ておられた、涙腺大崩壊状態でお礼を言われた。


「 憑き物は祓いました、後はお任せします 」


宿泊の準備もできている、泊まって明日戻れというお誘いを振り切り、霊光寺を後にした。

今回、完璧に決まった気がする、このあとボロを出したくはなかった。


尼寺だぜ、仏像が一杯ある部屋で寝て、怖くて童に抱き着いて、トイレにも連れて行ってもわないといけないなんて、男の矜持、プライドが許せるわけがない。


ビジネスホテルに泊まる、男の威厳を守るためには必要である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る