第30話 緊急憑き喪祓い

 学校が終わった後、いつもどうりに弁護士事務所、宿題と復讐と予習をすませ、屋上で素振りをやっている、男はどんなにつらくても顔に出さず、心の底にぐっと押しとどめ、生きていくしかねいのだ。

事務所に置きっぱなしにしていた携帯に電話がかかってきたようで、持ってきてもらった。


大槻神社からだった、何でも警視庁超犯罪科からの直接依頼で、緊急に憑き喪祓いの儀を行う事に、超犯罪科からは、警視監と警視正がついて来るから退魔行の安全は保障すると言われたけど、できればサポートしてほしいという事だった。


了承すると車で迎えに来てもらう事に、除霊対象者はヘリで輸送されてくるそうだ。


 大槻神社に到着、境内にヘリが着陸していた、警察の服を着た人が沢山いる。


神主さんから軽く説明を聞く、 3日後に国会答弁、国有地売却問題を追及するはずの、野党の大臣が、突然悪霊に取りつかれ、すぐに憑き物を祓わないといけない状況だということだった。


 神殿の中に入った途端、足がすくむ、めちゃめちゃ色気がある女性、その女性の体には蛇が巻き付いてゆっくりと動いている、蛇の頭は6個もある、その横にいる三十路の女性、体の半分が角のような鹿が寄り添っている。


「 鬼斬が2人です 」紅桜が頭の中に話しかけてくる。


俺は何時ものように、儀式全体が見渡せる場所に正座する。


黒服を着た、屈強な男性が運んできたのは、体を板に縛り付けられお札塗れ、わめき声をあげる女性、その顔は人の顔じゃなくて化け物に変わっている。


女性が運び込まれただけで、体が腐りそうな妖気が充満しだす。


巫女装束の陽子は真っ青になってしまっていた、陽子には部屋にいるように言った。

他の巫女さん達も、足が震えている。


「 動物の悪霊、怒り狂っています 」

「 力があります 」

「 鬼に変わるかもしれません 」

頭の中に、童の声が聞こえる。


「 これより憑き喪祓いの儀を執り行います 」


笛と太鼓に合わせ、鈴と御幣を持った巫女さんが、神楽を舞う。


女の人に張り付けられている、お札が、ビリビリ敗れていく。 

吐きそうな妖気が神殿の中を埋め尽くしてくる。


「 紅桜を手に、妖気を弾きます 」

「 紅桜 」急に最悪の気分が引いていく。


2人の鬼斬を観ると、剣を手に片膝状態、この瞬間にも斬りかかれる体制を取っていた。

枝垂桜を手に、いつでも斬れる。


体の一部なんてものじゃない、全身から黒い瘴気が立ち上りだした。


笛と太鼓の音に合わせ神楽の舞は続く。

女性の全身が黒い瘴気で埋もれる、「 かぁーーーっ! 」退魔の気を瘴気はそのまま弾き返した、神主さんは月の退魔鏡を持ったままひっくり返る。


「 実体化します 」


額から、ぶっとい一本の角が生えた、イノシシに似た化け物、「 鬼獣です 」それなりに広い空間の半分を埋め尽くすほどデケー。


白州師範の資料で、鬼は人型だけでないという事を知ってなかったら、混乱するとこだった。


 鬼斬が動いた、片膝をついていた場所が残像のように、けた違いの速度、その鬼斬は弾き飛ばされ、破壊音を上げ神棚に突っ込む、もう一人の鬼斬は、ゆっくりと立ち上がり、鬼に向かって刀を構える。


「 この場所から、逃げて! 」 叫ぶ、巫女さん達は、俺の後ろのドアに向かって走る。


鬼獣の体が、ぐぐ、ぐぐっと膨張する。

額の大きな角、頭の所から小さな2本の角が生えてくる、3本角の鬼獣、強敵だ。


「 はっ! 」 鬼斬が斬り込んだ、角で一撃を受ける、神棚から俊足で出て来た鬼斬が体に斬り込む、全身を覆う毛により、鬼斬の斬撃は弾かれたが、二人の鬼斬りは回し蹴りをぶち込んだ、鬼獣は木の戸をぶちやぶり神殿の外に。


鬼獣が外に飛び出るのを追うように、俺も動く、鬼獣が宙に浮いている間に、枝垂桜を首に向け振り下ろす、分厚い毛皮により刃がはじかれ、浅い斬り込みになった。

「 きっしゃーーーっ! 」鬼獣が悲鳴を上げる、血が飛び散る、首をよじり、足で空中を蹴って距離を取る、斬り込みは浅く致命傷ではない。


外に飛び出た鬼は、ヘリコプターに激突、一部ぶち壊れた。


二人の鬼斬りが飛び出てきて、刀を振り下ろすも、毛皮ではじかれる。

3人の鬼斬が、鬼獣を囲むような位置取りで、刀を構える。


鬼獣は傷つけた俺を狙っている、直感的にわかった。


角を真っすぐ俺に向けて、突っ込んできた、紅桜で角をいなす、結界が展開され、鬼の進行方向がわずかにずれる、すかさず横に動き、首筋に枝垂桜を突き立てる。


首を貫通、鬼はそのまま走りぬける、鬼斬が鬼獣の前に飛び出てきて、刀を振り下ろす、鬼獣が纏う瘴気と毛皮により、刀が弾かれる、が、絶妙な攻撃、鬼獣の動きが一瞬止まる、枝垂桜で首を、紅桜で目を突き刺す。


花弁が風に舞うように消滅していく。


「 ふぅ 」


神殿出入口は破壊され中はどえらい事に、神棚や飾り物などグチャクチャに、神主さんや、修験者さん涙腺崩壊、駄々洩れ、カッケェ黒服さん達、白目剥いて泡拭いて痙攣、泣き叫んでいる警察官。

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