第27話 白洲師範
日曜日、早朝からでかけ、電車に乗り過去の世界で俺が住んでいた場所に向かう、街並みは記憶と同じだ。
あった、記憶と同じ場所、同じ建物、天然理心流道場。
「 ごめん下さい 」出て来た方を観て、涙が出そうに、唯一人尊敬した人物、白州師範、その人だった。
この世界では、天然理心流とのかかわりはない、白州先生は俺の事を知らなかった。
あたりまえなのにショックだった。
「 先生、俺の型を観て下さい 」
「 す、凄い! そ、それを何処で、同じ流派ですね 」
2人の童を両横に、 「 鬼斬なのかぁ 」 やはり先生は鬼斬を知っていた。
枝垂桜と紅桜を手に、天然理心流2刀流の構え。
天然理心流は、室町時代にできた古武術であると聞く、白州先生以外が同じ流派を継承していてもおかしくはないはず、そう考えてやってきた。
「 先生! 詳しい事は離せませんが、天然理心流の達人に鍛えられ、鬼斬を継承しました、ですが俺の師匠はもういません、白州先生が鬼斬についてご存知でしたら、ご指導お願いしたい。 」
道場で正座して待つように言われた。
白州先生が、長い桐の箱を持ってきた、神棚に何度も頭を下げ、桐の箱の蓋を開ける。
へし折れた、日本刀が一振り入っていた。
「 神々廻君、若いころは鬼斬だった、未熟ゆえ刀を折ってしまい、このざまだ 」
「 鬼を斬ったことは 」
「 一度だけあります 」
「 そうかぁ 」沈黙。
「 素振りをみせてくれるかなぁ 」
「 素晴らしい、これほどとは、君を指導した天然理心流の使い手は素晴らしい方だったのだろう 」
「 技については、私など及ぶところではないが、鬼斬としての知識、鬼について、私の知っている事すべて教えよう 」
「 ありがとうございます 」
「 まず初めに、鬼斬の刀は自分の半身、俺は折れてからそれに気づいた、刀を失ったあと生き延びて居られたとしても、空っぽな人生が待っているだけだ、何があっても刀を失ってはならない 」
「 心に刻みこんでおけ 」
「 はい 」
先生が刀を引き継いだのは、25歳の時、父親が大怪我をして戻ってきて、父親から刀を引き継いで、刀が折れる46歳まで鬼斬を続けていた、仲間が3人その仲間も父親の仲間だった、鬼斬の刀は、刃こぼれしただけでも、剣精の力が落ちる。
「 剣精? 」
「 刀についている精霊の事だ、君の横にいる二人の童達だよ 」
剣精が付いている刀は鬼斬だけではない、魔剣、妖刀と言われる類の刀も、精霊が付いていることがある、刀は剣精が持ちあるき、剣を使う主と常に一緒にいる。
刃こぼれしただけでも、剣精の力は弱まり、実体化が虚ろになる、打ち直すことはできるが、力は弱まったまま、刀が折れると剣精は消えてしまう、打ち直しても鬼斬ではない、唯の刀。
傷ついた鬼斬り刀を修復する方法は唯一つ、鬼を斬る事により力を取り戻せる、しかし、力の落ちた刀では、鬼を斬る前に、刀が折れる可能性が高い。
持ち主が亡くなると、いつの間にか刀も精霊も消えている、剣精が何処かえいってしまうのだろう。
折れた場合は、折れた刀と使い手は残るが、鬼斬としての力は失われ、打ち直しても刀は力を取り戻すことは無い。
迷いは刀を傷つける、無の境地、霊気を刀に纏わせ、一刀のもとに斬る、鬼斬の使い方である。
先生の鬼斬の名前は、‘ 夜桜 ’ 俺は、俺達は慢心していたのよ、相手は7m級の鬼だった、そいつは鬼斬りの使い手でなく、刀を折りにきた、それに気づかず不用意に斬り込んだ結果が、夜桜を失った、そのまま吹き飛ばされ気絶、気づいた時にはドブ川にいた、仲間の3人は、喰われて体の一部分だけが残っていた。
この国でも、2010年に、鬼と戦う機関が、警視庁に設立され、天皇家を陰から守護してきた、魔道家の鬼斬がトップに就任、やっと動きだしているようだが、イギリスでは、ヘルシング機関という鬼を含めた魑魅魍魎と戦う機関が600年も前に設立されていて、圧倒的な力を持つ機関となっている、凄い人材がそろっているらしい。
それまでは、個々で鬼と戦ってきた、名のある戦国大名、剣客は、ほとんど鬼斬だった。
いまでも子孫が、力、技、刀を受け継いでいる。
「 これが、俺が21年間鬼斬として戦った鬼の資料だ、それとこっちが親父が残した資料 」
「 そして、鬼斬天然理心流の奥義書 」すべて引き継いでほしい。
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