第17話 憑き喪祓いの儀 (つきものはらいのぎ)

「 バイト料、1件につき5万円、何もなければ1時間ほど座っているだけで5万円、何かあったら、刀で斬ればよい 」


憑き喪祓いの儀である、二人の童はやる気満々、にわかに信じがたいが、やらしてもらう事に。


日曜日 AM 7:00に 迎えの車が来た、それに乗る、横に大槻が乗っていた。

午前中2件、午後から1件、午後の1件が危ないという話である、バイトは午後からの1件だけである。


車はどんどん山奥に、熊、鹿、狸などの飛び出し注意の道路標識が目に入る、近くにこんな所あったのかと思うような場所だ、鬱蒼と木々が生い茂り薄暗い。


鳥肌が立ってきた、体が怖がっている、別の世界から転生してきた俺は怖くねぇはず。


横には大槻がいる、男の矜持にかけてビビッている事を知られてはならない、俺は本物の殺し屋なのだぞ、ビビルなぁ。

うかつにもほどがある、どうしてこのようなオカルトバイトを受けてしまったのだろう。


何だこれはというほど、超でかい鳥居、そこから続く長い石の階段、両横に並ぶ巨大な杉の木。

これはもう別世界である。

ガクガク震える足、どうか大槻が気づきませんように。。。


石段を登りきると、ごっつい神社があった。


「 私着替えてくるから、少し待っていてね 」

「 お、おう 」一人にしないでぇーーっ てしがみつきそうになったわ。


慌てて枝垂桜と紅桜を呼び出す。

「 手、手、繋いでくれ 」

憑き喪払いの儀まで、少し時間があるので、二人の童と手をつなぎ登ってきた階段を凝視、逃げたい。。。


「 神々廻君 」恐怖なんかどっかへぶっ飛び涎が垂れた。


 巫女装束で完全武装した、月姫がいた。 


生きててエカッタと思えるくらいえぇ。

このバイト、ただでも俺はヤル。

巫女装束の大槻を観たとたん、恐怖が消えた、俺は命をかけて魑魅魍魎から大槻を守る、男神々廻 猟の誓いを立てた。


「 これより憑き喪祓いの儀を始めます 」


儀式の全体が観える位置に正座、鬼斬達は腕の中に、下手に観られると面倒な気がしたからだ。


笛と太鼓に合わせ、鈴や御幣を持った巫女さんが、神殿の中央に座る人の周りをまわるように、神楽の舞が始まる、月姫は鈴を持って舞っている。


神樂を舞う巫女装束の大槻、生きててえかった気がしてきた、怖いとかそんなことを気にしている余裕などない、震えも鳥肌もまったくない、俺の体も理解しているようだ、大槻をガン観。


中央に女の人が座っている、痙攣したように震えだす、修験者さんが、抑える。


「 ご主人様、霊道なのです、取り憑いている霊がおびえているのです 」枝垂桜が解説してくれる。


「 ぐがぁーーーっ 」鬼の形相、スカートはめくれ上がり、パンティ丸出しで、のたうちまわるように暴れだした、修験者さん達が暴れるのを抑え込む。


口のあたりから、黒いモヤモヤとしたものが出て来た。


月の退魔鏡を手にした神主さんが 「 かぁーーーっ! 」叫ぶと、黒いモヤモヤは弾けたように飛散して消えた。


中央にいた女性は、普通の状態になっている。


カッケェーーー、これは本物だ、何かスゲーーっ

どえらい感動。


 こんな世界があるなんて、信じられない。


午前中は2件、男の人だった、憑き喪払いの儀が始まると、挙動不審な動き、ネズミみたいな、修験者さんが抑え込む。


片腕が上がり、指先から黒いモヤモヤがでてきた。


「 かぁーーーっ! 」の一発で飛散した。


関係者さん達と昼食、陽子のお母さんは、凄く温かい目、神主さんは、手を出したらお祓いするぞっていう目で睨みつけられた。


「 陽子は、神々廻君の事ばっかり話すのよ 」


「 なにぃーーっ、一度も聞いてないぞ! 」


「 煩い! 」

「 神主様お静かに 」

女性陣にすぐさま沈黙させられた、神主さんで月姫のお父様なのに、立場が弱い気がする。


俺が助っ人として呼ばれたお祓いの儀が始まった。


 女性なのだが、縛られお札塗れで出て来た、髪の毛バラバラ、眼が真っ赤で涎を垂らしうなり声をあげている、人の姿をした野獣のような感じ、垂れ流し状態なのか臭う。


手伝いに来てもらったという、巫女さんが二人増えて、修験者さんが二人増えた。


男4人で、縛られて身動きできないのに、水揚げしたときの魚の様に暴れる女性を抑え込む。

体の一部ではなくて、体全体から瘴気がにじみ出ている。


「 ご主人様、一刀両断です 」


憑き喪祓いの儀が始まった。


狂ったようなうなり声、体からにじみ出る瘴気、「 かぁーーーっ! 」瘴気は退魔の気を弾いた、「 かぁーーーっ! 」「 かぁーーーっ! 」叫ぶ神主さん。


御幣を振り回し、瘴気をぶん殴る巫女さん、ドタバタ戦争状態、厳かな雰囲気皆無。


瘴気が女性の体から離れた、「 枝垂桜! 」 瘴気にむかって、刀を振り下ろす。

ズブーーッと斬ったいう手ごたえがあった。


瘴気は一気に飛散していく。


「 ふぅ 」


ドタドタとしりもちをつく関係者、大槻は壁に張り付いていた、ぶわって涙が噴き出る。


「 もう大丈夫だ、怖くないよ 」とっさに抱きしめてしまった。


ギューってしがみつかれ大号泣。


泣いている途中に、抱きしめられている事に気付いた?

「 きゃーーーーっ! 」

突き飛ばされた、そのまま、ドアに体当たり、一部壊して姿を消した。

実はショックだったりする、超絶美少女なのに、涙だけではなく、鼻水と涎が垂れていた。

まずい事をしてしまったかも。


巫女さん達が俺を見る眼、夢見る乙女モード全開、た、たまらん。


おっさん、おじさん、おにいさんが俺をみる眼、夢見るおっさん、夢見るおじさん、夢見るおにいさん、鳥肌がたったわ。


大槻は部屋に籠城して出てこない、陽子のお母さんの運転で家に送ってもらっている、巫女装束でも車は運転できるようだ。


「 陽子をお願いします、仲良くしてやってね 」

霊を見る、霊感が強い、そんな理由で仲の良い友達もいないのだとか。

母親公認のお付き合い、素晴らしいぃーーーーーっ!


憑き喪祓いの儀時間があるときだけでも良いから手伝ってほしい、などなど。


月姫の巫女装束が観られるなら、俺はタダでもヤル! 心に誓った。


大槻神社巫女連合会議、神主さんとか修験者も一応顔をだしてはいる。

母親の圧がすさまじい。


「 神々廻 猟、良い男だし、なんといっても鬼斬 」

「 陽子絶対逃したらダメよ 」

「 大槻の女は、狙った獲物は逃さないのよ 」

「 私のように失敗してはダメよ 」 目の前に旦那様がいるのだが。。。。


巫女さん達 「 陽子、頑張るのよ 」

「 う、うん 」


神主さん(父親でもある) 「 何をいっているのだぁーーーっ! 」


「 陽子! 男なんて、スケベで変態なのだぁーーっ! お父さんが一生面倒をみるから、男なんか無視しなさい! 」


「 父親命令だぁ! 」


「 わかった、父親命令で、スケベで変態なお父さんを無視する 」


「 ち、ち、ちがう、お父さんだけは違うから 」


奥様 「 スケベ、変態、巨乳好きは、だまりなさい! 」


「 神主様、うるさいですよ 」 巫女さん連合からも。。。


大槻神社内において、社会的弱者は父親であった。

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