第11話 鬼斬りの刀
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( 転生前の世界 師匠 )
天然理心流の家元である、白州(はくす)正則(まさのり)は、神々廻家の墓の前で、胡坐座りをして一升瓶から湯飲み茶わんに注いだ酒を飲みほしていた。
白州は94歳、若い時に嫁とは離婚、息子がいたが嫁と離婚してから合ってさえいない。
俺の基に突然やってきた一人の青年、狂ったように修行をした、金はあるから働かなくてもよい、13年もの間1日中道場にいた、休むことなく技を磨続ける、俺が教えられるレベルじゃねぇ、化け物のような強さ、技の切れ、俺は猟に、天然理心流の後を告いでほしいと言った、目的があるからと断れた。
二週間前、突然、道場をやめた、‘ 師匠お許し下さい 目的を果たす時が来ました ’猟は姿を消した、住んでいた自宅にも戻っていない様子。
嫁も子供もなくした、ジジイを一人にしやがって、酒を飲むしかなかった。
手紙が届いた、8歳の時にご両親を亡くし、その悪夢を毎日見続けていること、猟は復讐するためだけに生きていたことを知った、素晴らしい技を殺しの道具として使う、教えを仇で返す、そのことについて、延々と詫びている、迷惑がかかるかもしれない、心配していた。
「 馬鹿やろう! 悲しすぎるじゃないか 」
ようやく常軌を逸脱したような鍛練、誰とも付き合おうとしない生き方に合点が言った。
合点が言ったが、あまりにも悲しすぎる、ずっと一緒にいた、自分の子供と錯覚するほど、心を許していたのに、どうしてもっと他の生き方、道を示す事ができなかったのだろう。
後悔してもしきれない。
「 天然理心流を継げるほどの弟子はお前だけだった、持っていけ、632年の歴史がある我が流派に伝わる二振り宝刀、お前に託す 」
白州は、木箱に入った2振りの刀を墓に埋めた、よろよろと立ち上がる、
「 猟よ、ここに来るのはこれで最後、俺は道場をたたんで、完全介護の老人ホームに入るぜ、あばよ 」
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枝垂桜、紅桜 ( 転生後 )
俺とお袋は、お墓に来ていた、お爺ちゃんとお祖母ちゃんの命日である、数日前に誰か来たのか、墓の草ひきがしてあった、誰かは予想がつくけど。
前の世界の祖父とは違うとは思うけど、謝らなくてはならないことが山ほどある、手を合わせて、心の中で謝る。
転生前だと祖父が亡くなったのは、俺が21歳ときだ、だがこの世界では8歳、両親が死ななかった代わりに、祖父が無くなっていた。
「 猟、お坊さんとお話してくるから 」
眼を開けると、墓の前に、童が二人立っていた、古めかしい着物を着た、幼稚園児? 小学1年生? 小さな女の子、女性との接触が全くないため、女児であろうとドキドキしてしまう。
「 ご主人様、枝垂桜です 」「 ご主人様、紅桜です 」名前は聞いたことがある、天然理心流に伝わる、宝刀の名前である。
「 どうぞ 」童は刀を差しだした。
反射的に受け取っていた、童の姿は無い、手には二振りの日本刀。
理解できなさすぎる状況に置かれると人は、考えを放棄、受け入れてしまった。
天然理心流において、枝垂桜は3尺5寸の大刀、攻めの刀、紅桜は2尺の小太刀、守りの刀である。
刀を抜き一振り、鞘を持った童、刀を治める。
俺は、二人の童と手をつなぎ、墓の前で突っ立っていた。
「 猟、いつまでお墓の前で突っ立ているのよ 」お坊さんと話が終わったお袋が戻ってきた。
「 童、あっ、子供 」
「 何を言っているのよ 」
手を繋いでいるのに、お袋は観えていないらしい。
車に乗る、お袋の運転、童は後ろのシートに座っている。
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