第10話 そびえる自動販売機

 日曜日、本田、松村と3人で、自転車でかれこれ1時間半ほど県道を走っている、


「 猟、最近付き合い悪いぞ、猟から連絡するって言っていたのに、ずっと連絡なかったし 」


 親父の事で遠慮していたのはわかっているが、35歳の精神年齢、15歳のガキと遊ぼうという気が起きない、お袋だけで手いっぱいである。


「 よし、ここだ 」


 本道の横に脇道が、冬雪が降ったときのタイヤ交換、眠くなったときに休憩できるようになっている、脇道に入る、古びた自動販売機が1台あった、正面を通り過ぎる大人の本。


「 猟、ここからが、本番だ 」


 逆走を禁止している道のため、通り過ぎてからユータンできるところまで進み、再び分かれ道まで戻ってきた、自転車からその場で降りて、自動販売機の裏側へ3人で匍匐(ほふく)前進、高一の男子ってここまでアホなのか、付き合うのが辛い。


 自動販売機の周りには、雨よけの簡易式の屋根とビニールシート、


「 猟、よくみろ 」


 電灯がついていて、線を追うと、コンセントに差してあった。


「 違う、あれだ 」


 監視カメラから出ている線、電源コンセントの横、プラグがあるのだが、線がプラプラしていた。


「 どうだぁ、ここで本を買ってもバレない! 俺が見つけたんだ 」


 松村は秘宝でも発見したかのように、鼻高々。


「 どうだぁ、そびえたっているように見えないか 」

 ごっくん 唾をおもいっきり飲み込んでしまった。


「 はぁ、はぁ、ぜぃ、ぜぃ 」


 二人はバテテフラフラ、俺達の軍資金、一人500円では1冊しか買えなかった、どの本にするのか、意見を合わせるために、自動販売機の前をさりげなく通り過ぎた回数は10回どころではない。


「 み、みずぅ 」「 まてぃーーっ! 」「 水かったら本が買えねぇ 」


 俺が道路の別れ道で待機、松村が自動販売機の裏側で待機、車が入ってきたら、購入担当の本田に知らせる布陣である。


「 よし、いまだぁーーっ! 」


 超おデブの本田は全力疾走、とまっているほど遅い、自動販売機の前に、自転車による疲れ、全力疾走による疲れ、限界まで体力を消耗した本田は、緊張と疲れと焦りで腕が震えて、コインを投入できない状況に。


「 早くしろ! 」

「 まずい、車がきたぁーーっ! 」


 全力疾走で自動販売機から遠ざかる。


 トドのようにぶっ倒れて、ヒクヒク。 


「 仕方ない、俺が買ってくるよ 」


 大人数で歌うアイドルのセンターに顔が似た、巨乳女子大生のメイドゴッコ、1500円投入。


 ほとんど死にかけの本田と、もう動けないという松村をつれ、松村の自宅に、妹の和美ちゃんと少し会話、


「 嘘だろう、おれ、1年以上口きいてないけど 」


「 入ってくんなよ 」念のため、テーブルをドアの前に移動。


「 さて、みるぞ 」


 ドーンと裸エプロン「 ぉおーーーーーぉお! 」それほどの事なのだろうか、毎日お袋とお風呂入っているし、風呂上り裸で冷蔵庫の前に立って牛乳飲んでいるし、それほどでもなかった、二人は両方の鼻に、テッシュを詰め込み、叫び声をあげている。


  しかし、朝は裸エプロン、その後メイド服ってえぇ、スゲェエェ、「 えへへへへへ 」

 スカートの丈が股下面一、何かがはみ出ている、本田も松村も俺も、一緒に妄想の世界に突入。


‘ ご主人様、一緒にお風呂にはいりましょうね ’ 「 うわーーーっ! 」ジタバタジタバタ 「 この子が言ってくれたら、俺死んでもぇぇーーーっ! 」メッチャ盛り上がった。


 夕暮れになったので、帰る事に、夕食誘われたけれど、お袋と食べる事になっている、本田は血を流し過ぎてしばらく休んでいくそうだ。


 学校が終わると、体と技を鍛えていた、他の奴らはこんなしょうもない事をやっていたのだろうか、まぁそれなりに面白かったけど。

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