ルトくん⁉︎

 おばあさんは、あまり高校生のお孫さんの話をしてくれない。

 

 

 でも、一緒になって欲しいと言われているのだ。

 

 

 同じ高校だし、たぶん遼一も気づいているだろうと前に言われたことがあった。

 

 あの時は、小林さんだと思っていたのでなんとなくあの人かなみたいな…少し知っています感を出してしまっていた。

 

 

 でも、小林さんの好きな人がまさかの宮田くんだったので…振り出しに戻った状態だ。

 

 

 だれかオレにこっそり耳打ちしてくれないだろうか。

 

 おばあさんの孫は、マルマルさんだよと。そして、ルトくんはあなたのことゴニョゴニョだと思っているよ。

 と、明確に教えていただけないだろうか。

 

 

 …そんな耳打ちしてくれるお方がいたらありがたい。

 

 急募

 耳打ち小僧。

 

 

 まぁ、でもへんな耳打ちされてもやだな…

 

 パンの耳って茶色いよね!とかさ、自転車のサドルって黒が多いよね、とか…。

 

 

 …

 

 

 耳打ち小僧応募終了…。

 

 …

 

 そんなくだらないことを考えていると、隣にいたおばあさんが、やっぱり隣にいた。

 

 うん。そりゃそうか。

 

 

「孫娘がのぅ…」

 

 ⁉︎いきなり孫娘の話題‼︎

 

 これは有力な手がかりがつかめるかもっ‼︎

 

 オレは、目も耳も集中させておばあさんの言葉をひとつひとつ聞き漏らすまいと真剣に聞いた。

 

 目は、まんまる見開いて耳は鼓膜を大きく広げる感じで‼︎

 まぁ、

 鼓膜が開いているかは、しらんけど…

 

 

「孫娘さんがどうされました?」

 

「あのこは…昔からおとなしくてねぇ。ルトなんか彼女がおるのにのぅ」

 

 

 ⁉︎

 

 なんて⁉︎

 

 いま、なんてっ⁈

 

 

 オレの耳は、再生機能がついていない…

 鼓膜は、ついているのに…なぜ再生機能がないのでしょうかっ‼︎

 

 

 しかし‼︎

 脳みそのヤツが記憶を蘇らせてくれる‼︎

 

 ナイス‼︎

 右脳か左脳‼︎

 なんなら前頭葉‼︎

 

 もう、どこでもいい!

 

 たしか…ルトくんに彼女がいるとおっしゃっていた…ような。

 

 

 ルトくん彼女いるん⁉︎

 

 オレと結婚式あげるって話は?

 

 もしかして、これって浮気なんじゃございません?

 

 オレと二股…?

 

 いや、オレもそんなこと言いながら…婚約者いる…んでした。

 

 しかもルトくんのお姉さんって…

 

 

 ひとのことどうこう言える立場でもない…。

 

 ルトくんは、いったい何を考えて結婚式をオレと挙げようとしているのだろうか…。

 

 

 まさか、オレがお姉さんと婚約していると知ってヤケを起こして別の女性と?

 

 

 …それはとめなくてはいけない。

 

 でも、ルトくんっていつ来るかわからないしな…。

 どうしたらいいのだろうか…。

 

 連絡先聞いて電話するのも重いよね…

 

 

 ってか、電話したところで…ね。

 

 あんたは、遊びよ!なんて言われたら…どうするよ?

 

 …

 

 もう何話したらいいかもわからないですよね…。

 

 

 一瞬で色々考えるオレの脳みそ。

 もう、フル回転だよね…。

 

 

 グルグルグルグル…ガラガラガラガラ…って‼︎そうじゃありませんよ‼︎

 

 ガラガラって…サビてるじゃんって‼︎

 ちがーう‼︎

 

 

 

「ルトくん、彼女いるんですかっ⁉︎」

「そうじゃよぅ。たしか写真シールとやらがあったのぅ」

 と、おばあさんが写真シールを持ってきてくれた。

 

 もう、びっくりして喉がカラカラだよ…

 

 カラカラのからっからだよ。

 

 だれか…お水を…そうだ‼︎

 こんなときは、魔法の水筒をって……‼︎

 

 

 ⁉︎

 

 オレは写真をみて水筒の中身吹き出しそうになったよね。

 

 なんで水筒持参してんだよ…遠足かよって?

 いや、オレ水筒持ち歩くのクセですね。

 

 一日一リットル飲むと決めているので…。

 

 って‼︎

 そうじゃないっ‼︎

 

 

 彼女…可愛らしいってか、お耳がとんがってて毛がフサフサでって‼︎

 

「猫じゃないですか‼︎ねこのぬいぐるみーー‼︎」

 と思わず言ってしまったよね…。

 

 

「んんっ?あぁ、これじゃないよぅ。まったく遼一は、面白いのぅ」

 と笑うおばあさん。

 

 …えと、いや…これはおばあさんが持ってきたんじゃないか…。

 

「こっちじゃよぅ。彼女さんは、頭がいいそうじゃよ」

 と見せてくれたのは…まさかの…まさかのっ⁉︎

 

 え?

 

 なんでだよ⁉︎

 

 なんで…

 

 オレはもう思考停止したよね。

 

 だって…だってさ…ルトくんの隣にうつっていた人ってさ…

 

 

 …

 

 

 続く。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る