黒ばっかり
浮気は、していないと心でおばあさんに言い訳しつつ…なんか後ろめたくておばあさんの家に行きづらい気もするけど、ウエハースを持ったオレは無敵なアイテムを手に入れた気がして自然とおばあさんの家に足が向いていた。
毎日、日向ぼっこしているおばあさん。
縁側でのんびり二人でウエハースをいただいた。
でも、けっこうこぼれる…
おばあさんのおひざは、ウエハースの雪が積もってる…。
と、ウエハースを持ってきてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになっているといきなりおばあさんが、
「ばあさんに一目惚れしたんじゃ」
と言い出しました。
…
え?
いきなりのカミングアウト?
「えっと…」
オレが言葉に詰まっているとまた話し出したおばあさん。
「昔、じいさんが言っておったんじゃ」
と優しい顔で遠くを見つめるおばあさん。
なんだ…、そういうことね。
「それは素敵ですね。」
とオレも遠くを見つめた。
「あぁ、無敵じゃ」
⁉︎
オレはすぐさまおばあさんをみたよね‼︎無敵⁉︎
…まぁ、ある意味無敵…なのかな?
…うん、そうだね。
…
「来たのぅ」
⁉︎
いきなりおばあさんは、玄関のほうをみた。
来た⁉︎
無敵のおじいさん⁉︎
いや…敵⁉︎
そうじゃない⁉︎
…
何が来たというんだ⁉︎
ま、まさか…オレの婚約者⁉︎
いま、ここで…
お初にお目にかかります状態…。
マジかー‼︎ついにキターー‼︎
少しワクワクしつつも…なんか引っかかるオレの心。
なんかさ、ピーマンの肉詰め食べたかったのに、ピーマン野菜炒めが出てきたくらい微妙な心…
ドキドキ…ドキドキ…
「おーい、ばーちゃんっ」
と声がした。
ん?
この声って…
ふすまからひょっこり顔を出したのは、ルトくんだった。
あ、ルトくんか。
オレは少しガッカリしたけど、なんかホッとした感のほうが強かった。
ホッとしているとルトくんが大きな画用紙を、
「ジャジャーン‼︎」
と広げた。
ケーキ?
これはこれは、何段にも重なっているケーキ。
ってさ‼︎
これは…ウエディングケーキなんじゃ…?
「美味しそうだね」
とオレは当たり障りなく発言した。
「うん、美味しそうでしょ!ウエディングケーキこんなのがいいな‼︎デーっかいやつ‼︎」
とおめめキラキラでオレに訴えかけてくるルトくん。
「あー、そ、そうだねっ!」
と、オレはまたも結婚式する前提で話してしまった。
「衣装は、クロねっ‼︎みんな」
…
ク、クロ…
それは…タキシード…ってことになるのか?
え、どっちも男…どうしの結婚式だよね⁇
みんな?
「てか、クロ…好きなんだ?」
「うん‼︎ぜーんぶクロねっ‼︎」
黒い結婚式…
ああ、たしか瀬川さんも黒のウエディングドレス着たいとかって言ってたな。
黒…流行ってるんだ?
オレは結婚式とかあまり無頓着だから、もしかしたら今の流行りなのかもしれない。
しらんけど…
「まけワカメじゃ」
え?
なんて?
おばあさんがいきなり…まけワカメじゃって言ったよ?
オレ…指示された?
妖怪退治がいきなり始まった感…
オレは、ワカメを突然出せないし…なんならそれを巻きつける力もございません…
何が起きたん⁇
なんか魔法の言葉なん?
呪文なん?
オレはポカンとしちゃったよねー…。
「お兄ちゃん、今おばあちゃんはワケワカメって言いたかったんだよ」
と教えてくれた。
あぁ、ルトくんのおかげで魔法がとけましたわい。
「最近の若い人は、黒を着るんじゃと…。すごいねぇ」
と、少し呆れ顔で笑っていた。
「黒は、大人気だよ!」
と、ルトくん。
「でも、ケーキも黒じゃなくてよかったわ」
とオレが冗談混じりにいうと、ルトくんは少しダンマリしたかと思ったら、
「黒いケーキ⁉︎すごいよ‼︎お兄ちゃん天才だよ‼︎いいアイデアが浮かんだよ‼︎」
と画用紙を丸めて、帰る支度をしだした。
「え、帰るの?」
「うん‼︎ケーキの作戦変更だよ‼︎チョコケーキもありだよ‼︎」
と嬉しそうに帰って行った。
…
ルトくん…
今来たのに、もう帰っちゃった。
てか、小学生が一人で来れるくらいルトくん宅は近くにあるのだろう。
てかさ、ルトくん…めっちゃ結婚式に憧れ強いんだ⁉︎
さらに…もうオレと結婚式あげるつもりなん?
え、オレでいいの⁇
しかし…
な、なんでオレなのだろうか…
続く。
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