わからない

 休み時間トイレに行ってスッキリしたなぁとズボンをあげているといきなり、

「どうです?スッキリしたでしょう?」

 と隣にいつのまにか宮田くんがいた。

 

 

「おっ、びっくりしたー」

「ねー」

 と軽く返してくる宮田くん。

 

 

 

 …

 

 

 そのまま流れで一緒に教室まで歩いていたんだけど、宮田くんがいきなり恋バナをはじめた。

 

「オレさ、好きな人いるかも」

 って。

 

 かも?いるじゃなくて?

 

「へー、だれ?」

「小林さん」

 

 ‼︎

 

 小林さん…?

 

 マジかよ⁉︎

 この間まで宮田くんは、小林さんを大林さんだと思っていたのに⁉︎

 苗字最近知ったくせに⁉︎

 

 …

 

 小林さんか。

 

 どうなのよ⁉︎小林さんって…もしも、うめおばあちゃんの孫だったとしたら、オレと結婚したいって言ってる人だよね?

 

 小林さんって…

 

 どうしよう…もうおばあさんの孫って聞いちゃう⁉︎

 

 小林さんに直接、聞いちゃう?

 

「オレのこと、好き?」ってこれも聞く⁉︎

 

 まぁ、聞かないにしてもいつか宮田くんにバレたら…それは大変だ。

 

 てか、そんなこと聞けるわけないよね…。

 

 なら、

「オレと結婚する?」

 って聞く?

 

 ん?

 こ、これだとプロポーズになりかねない。

 

 オレは小林さんを好きじゃないし…いや、人として嫌いとかじゃないけど、聞き方って大事だよね。

 

 その前におばあさんの孫かどうか知りたいけど、知りたくない…みたいなねー…。

 

 知ってしまったら、とてもこれから気まずいよね…。

 

 まさか宮田くんが小林さんを好きになる日が来るなんて…。

 

 てっきり瀬川さんを狙っていたのかと思ってたよ。

 オレたちの会話阻止してきてたし…。

 

 

 どうしよう…

 もうおばあさんに聞いた方がいいかな…

 

 お孫さんって下の名前なんですかって。

 

 

 …

 

 そういえば……

 小林さんの下の名前って奈留子なるこさんだったっけな?

 

 

「小林さんって奈留子って言うんだっけ?」

 と宮田くんに聞いてみた。

 

 すると、

「へー、そうなん?」

 と初耳的な感じだった。

 

 好き…なんだよね?

 小林さんを⁉︎

 

 一応好きな人の名前くらいリサーチした方がいいような…。

 

 …

 

「小林さんのどこが好きなの?」

「あー、とりあえず全てかなー。」

 

 全てっていうなら、やっぱり名前覚えなよって心から思う。

 

 

 やっぱりおばあさんにはっきり聞いてみよっと。

 

 

 オレは早速おばあさんの家に遊びに行くことにした。

 

 いつもご馳走してもらうのも申し訳ないから手土産を持って。

 

 

 そして、手土産のお饅頭を縁側においてのんびりお茶会が始まった。

 

「こういうの、女子会っていうんじゃろ?楽しいねぇ。」

 

 とおばあさんは、ニコニコした。

 

 …オレ、男っすけど…ね。

 

 まぁ、そこは否定せずオレもニコニコした。

 

 

 で、お孫さんである可能性の高い小林さんのことを聞いてみることにした。

 

「おばさんのお孫さんってお名前…もしかして、奈留子さんって言います?」

 と。

 

 するとおばあさんは、

「それはのぅ、企業秘密なんじゃよ」

 とご丁寧に、小声で話してくださった。

 

 なんの企業さ⁉︎

 

 そしてなんで秘密ーー⁉︎

 

 

 …まぁ、無理矢理聞き出すのって悪いよね。

 個人情報だもんね。

 

 やっぱり小林さん本人に直接聞くしかないのかなー。

 

 でも、気まずくなるのやだなー。

 

 

 あ、ルトくんに聞いてみよっかな!

 

 

 今度あったら聞いてみようと思う。

 

 今度いつ来るかなぁって思っていたら今日だった。

 

 

 ルトくんは、オレをみるなりいきなりガシッとオレに抱きついてきて、

「結婚式早くしたいね?いつがいい?ボク、カレンダーに書いとくよ!」

 と言い出したのですが⁇

 

 

 えっ⁉︎

 

 ルトくん…

 

 そんな先のカレンダーもってるん?

 

 てか…

 

 もしかして、おばあさんが言っているオレと結婚したいって言っているお孫さんってルトくんなの⁇

 

「ルトくん、結婚式って…」

「ん?結婚式は結婚式でしょ?あげたくないの?」

 

 …

 

「いや、そうじゃないけど…」

「じゃあ、するよね?ね?」

 とすがるようにオレをみるルトくんをみていたら、断れないよね。

 

「うん。するよね」

 と思わず、言っちゃってたよね。

 

 

 もうさ、お姉さんの名前聞こうとしてたけど、オレ…ルトくんと結婚するの?と困惑してそれどころじゃなかったよね。

 

 ルトくんは男の子なんだよね?オレを逆に女だと思ってたりするのかな?

 

 おばあさんもオレとのお茶会を女子会って言ってたよね?

 

 オレって…女に見えたりするのか⁉︎

 

 

 じゃあ…オレはルトくんに式するって言っちゃったから、ルトくんと結婚するの⁉︎

 

 そういうこと⁉︎

 

 無邪気に喜ぶルトくんにもう訂正なんてできないでしょー……。

 

 

 どうすりゃいいかなぁー…

 

 

 一晩考えて考えぬいたけど、いい結論は出なかった。

 

 

 

 

「ハァ…」

 思わず授業中ため息をもらしてしまった。

 

「大丈夫?」

 とそっと頭痛薬を差し出してくれた瀬川さん。

 

「あ、うん。頭痛くないよ。なんか、心配してくれてありがとう。」

「悩み事?」

「あー…まぁそんなとこかな。でも大丈夫」

 

「心配だな…」

 

 なんて優しい瀬川さん。

 

 

「えっ、しまうまがどうしたっていうんだよ⁉︎」

 

 …でた、宮田くん。

 

「宮田くん…」

 オレは、つい呆れ顔になったよね。

 

「しまうまが何⁉︎どうした⁉︎」

 宮田くんは、めっちゃしまうまという言葉に食い付いてきた。

 

「えっ⁉︎マシマシ⁉︎どこの牛丼がマシマシよ⁉︎」

 と、小林さんが参戦してきた。

 

 …

 

 ね。

 

 宮田くんは、耳の誤作動中だし小林さんはとにかく腹ぺこ女子だ。

 

 

 あ、そうだ‼︎

 ここでオレはみんなに質問してみた。

 

「オレって、おとこ⁇」

 と。

 

 するとみんな無言で勉強に集中しだした。

 

 …

 

 何言ってんだか的な顔で。

 

 

 いやいや…オレマジで聞いてるんですけどーー‼︎

 

 

 

 続く。

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