朝からびっくり

 その日は、おばあさんになんにも聞けなかった。

 

 

 朝から席についてボーっとしていたらなんか…なんか変なにおいがしてきた。

 

 ⁇

 

 なんだろ?このにおい…

 

 …

 

「うめーっ」

 

 ⁉︎

 

 えっ⁇

 

 小林さんがいきなり、うめと叫んだ。

 

 …や、やっぱり小林さんのおばあさんがうめおばあさん…なんだ…。

 

 と恐る恐る振り向いた。

 

 ‼︎

 

 えっ⁉︎

 

 こ、小林さん…⁉︎

 

 小林さんをみてオレはめっちゃ目が覚めた。

 

 だって…小林さんの口からイカの足が出ているんですもの。どうしたっていうのよ?小林さん…

 

 

「な、なんでそんなものが口からでてるのさ?」

 と、オレは質問したよね。

 

 あなた妖怪ですの?

 口からイカってそうそう出ませんわ。

 イカだけにいかがわしいわ。と、思わずお姫様だってびっくりよ?

 ってさ…まぁ、お姫様なんかいないけどさー。

 

 

 それに、それはおっさんのつまみだろうよってさ。朝は食パンくわえるのが一般的なんじゃないのか⁉︎

 

 すると小林さんは、

「寝坊して朝ごはん抜きだったからさー、せめてもの腹の足しにさ。スルメって腹持ちいいじゃん!」

 とオレに食べかけのスルメを差し出してきた。

 

 ⁉︎

 

 やっぱり寝坊…なら、なおさら食パンだろうよ…って…な、なんでオレにスルメを差し出した⁇

 

 

「えっ?」

「欲しいんでしょ?」

「いや、いってない」

「そう?欲しそうな眼差しだったから」

 

 …え、オレそんな欲しそうな顔してたんだ?

 気をつけなきゃ。

 

 そんな会話中、無言でやり取りする小林さんと宮田くん。

 

 当たり前のように小林さんからスルメをもらう宮田くん。

 

 小林さんと話しながらも目で追ったよね。事務的なスルメの贈与をさ。

 

 

「マジうめー」

 

 宮田くんの言葉にハッとした。

 

 さっき小林さんが発したうめーってさ、美味しいって意味なんじゃね⁉︎

 

 そうだよね。

 たしかに小林さんのおばあさんがうめおばあちゃんだったとしても、学校でいきなりおばあちゃんの名前叫ぶ人っていないよね。

 

 どんだけおばあちゃんっこだよってなるよね。

 いや、おばあちゃんっこは学校でいきなりおばあちゃんの名前呼んだりしないよね…。たぶん…おばあちゃんっこがまわりにいないから知らんけど。

 

 

 そんなこんなで先生が毎回当たり前のようにドアから入場してきた。

 

 ドアを開けるなり先生は、

「ん?なんか変なにおいがするなぁ」

 と、小動物が餌を探しているみたいに鼻をくんくんとしだした。

 

「先生、オレのぷぅです。」

 

 とだれかが恥ずかしそうに言った。

 

 ぷぅ?

 あ、出ちゃったのね。

 

 

「いいえっ‼︎スルメです‼︎」

 と小林さんが高々とスルメを自由すぎる女神さまなみに空高く上げた。

 

 救世主⁉︎なの?

 

 よくわからないやりとりが朝から行われた。

 

 本日も平和です。

 きっとおばあさんも今頃日向ぼっこしてることだろう。

 

 

 空を見てそんなことを考えていたら、瀬川さんが

「いいお天気だね。」

 と心地よいトーンでオレに話しかけてきた。

 

「うん。いいボリューム」

「えっ?」

 

 おっと、いけません。

 つい心の声が…

 

 ボーッとしすぎたな。

 

 たまにおばあさんが変なこという気持ちが少しわかったきがした。

 

 

 そんな呑気にしていたら先生がいきなり小テストをしまーす。なんて言ってきた。

 

「はーい。ショートステイいってらー」

 と、宮田くんは先生に手を振った。

 

「いや、だれかこれからショートステイよ?小テストね。終わったら隣の人が丸つけねー」

 

「げっ」

 と小林さんがカエルみたいな声を上げた。

 

 どうしたのかわからないけど、テストが始まった。

 

 そして丸つけするから隣の人に渡してねーと先生がいうから瀬川さんに渡そうとしたらいきなり別の隣から、

「はい、お父ちゃん丸つけお願い」

 と言われた。

 

 

 ⁉︎

 

 お父ちゃん⁉︎

 

 慌てて隣を見ると宮田くんが椅子ごとオレの隣に引っ越してきた。

 

「宮田くん…オレの隣は瀬川さんだから」

 と瀬川さんを見ると…

 

 ⁉︎

 

 瀬川さんのお隣にも小林さんが引っ越していた。

 

 ⁉︎

 

 な、なにこの二人⁉︎

 

「えっ?」

 と宮田くんに聞くと、

「なんか、小林さんが瀬川さんと丸つけしたいっていうからさ。だからコレ、引っ越しの挨拶です」

 とプリントを渡された。

 

「あー、じゃあオレの丸つけもよろしく」

 と宮田くんに渡した。

 

 丸つけをしていると宮田くんは、そっとオレの机に丸まったティッシュを渡してきた。

 

 ?

 

「なに?これ」

「あー、それは引っ越しの挨拶のオプションで付いてますのでお構いなく。」

 と言われた。

 

 …

 

「これって…さっき宮田くんが鼻かんだやつじゃ…ないよね?」

「いやいや、瀬野くんはほんっとズバリ当ててくるよねー。将来バカ売れ占い師だね。オレも占ってね。毎日」

 と、依存性抜群な宮田くん。

 

 いや、そんなことよりティッシューー‼︎

 

 そんな汚いオプションいらないからーー‼︎と、うまく宮田くんのプリントにのせてお返しした。

 

 するとオレのプリントにもごっそり消しかすがのっかって帰ってきた。

 

 …

 

「なんだよ…このカスは?」

「あぁ、お礼の品。練り消し作りなよ。消しゴム忘れたとき重宝しますよ」

 と余りの消しかすで練り消しを職人みたいにコネ出す宮田くん。

 

 職人みたいというか…職人なんじゃなかろうかってくらい定規を使ってこねていた。

 

「お裾分け」

 と小林さんにこねた消しゴムのカスを与える宮田くん。

 

 ⁉︎

 

 ただこねていたんじゃない⁉︎

 なんか…なんかクロワッサンみたいじゃん。

 

「え、クロワッサン⁉︎」

「はい、チョコクロワッサンでございます。ご試食いかがですか?」

 と営業スマイルな宮田くん。

 

 もうさ、おままごとじゃん⁉︎

 

「いや…試食は…」

「いただきまぁす」

 と小林さんは、おままごとに便乗していた。

 

 

 

 …

 

 

 よし、

 勉強しよう。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 

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