小林さん

 テスト期間が始まった。

 

 今回の国語のテストは、なかなか記述が多くて難しかったなー…。

 

 眉間にシワよりまくりだよ…

 

 

 あー、でもあとはオレの好きな数学だからなんとか乗り切れる!と眉間のシワを地味に伸ばした。

 

「大丈夫?頭痛いの?」

 

 ⁉︎

 

「あ、大丈夫だよ。ありがとう」

 

 最近瀬川さんがよくオレに話しかけてくれるようになった。

 

 スカートの下、見た見ないの誤解は解けたわからないけど…

 

 

 まぁ、同じクラスだったけど今まで席も離れてたし、話す接点が全くなかったからとてもラッキーです。

 苗字、瀬野と瀬川なのにめっちゃ離れてたし…。

 

 一人ズレたら隣だったのに、あの時は席が一番前と一番後ろだったんだよね。

 

 …

 

「おい、あんたたちオレに内緒でなにコソコソ話してんのさ?」

 とまたも宮田くんが割って入ってきた。

 

 …宮田くん。

 

「別にコソコソしてないよ。」

 

「でも、二人って…やっぱり付き合ってるよね⁉︎あなたに会いたいって言ってたよね⁉︎瀬川さん⁉︎」

 と詰め寄る宮田くん。

 

 あなたに会いたいって…なに?

 

 もう会ってない?

 

 どんな会話⁇

 

 宮田くんは、この前からずっと耳が誤作動を起こしたままなのだろう。

 

 たぶん。

 

 早く治らないのだろうか…。

 もしかしたら、ずっと誤作動のままなんじゃ…

 それはかわいそう…でもないけど、地味に迷惑。

 てか、オレたち二人の会話じゃましてない⁉︎

 

 

 宮田くん…

 

 

 こうしてちょいちょいお邪魔むしに邪魔されつつ、オレは瀬川さんとの会話を楽しんでいた。

 

 

 あぁ、まさかこのオレがこんなに瀬川さんと話せる日が来るなんて夢にも思わなかったなー。

 

 せめて隣に座ることさえ許してくださいって願ったけどさ、まさか会話までできるなんて、さいっこうに幸せです‼︎

 

 さらには将来、瀬川さんは黒のウエディングドレスを着たいなんてもう未来の旦那さんに教えたいくらいだ。

 

 いや、教えまい。

 なんか悔しいし…。

 

 こんな美しくてかわいい心の持ち主と結婚できる人間なんて、なんか嫉妬心マシマシだもん…。

 

 羨ましいし、羨ましい…とにかく羨ましい限りだし‼︎

 

 あぁ、瀬川さん…いったいどんな人と結婚するのだろう…。

 

 宮田くんだったり⁉︎

 

 それだけはいーやー‼︎

 

 頭を抱えて首を振った。

 

 

「やっぱり…調子悪いよね?」

 またも心配してくれる瀬川さん。

 

「あー、ううん…大丈夫だよ」

 と大丈夫ですアピールのためニコッとしてみた。

 

 すると瀬川さんがふいっと顔を背けた。

 

 …

 

 あら?

 

 なにかオレは余計なこと言ってしまったかしら?

 

 と、ドギマギ…

 

 すると瀬川さんが顔を背けたまま、

「それならよかったね」

 と返事をくれた。

 

 …うーん。

 怒っては…なさそう?

 

 ‼︎

 

 あぁ、オレのニコッとが気持ち悪かったのかもしれない。

 

 ごめんよ。瀬川さん。

 と心でぺこりした。

 

 

 するとなんだか斜め後ろ方向から視線を感じて振り向いてみると…

 

 

 宮田くんが覗き込んでニンマリしていた。

 

 顔を背けられたの見てたんだろうな…。

 

 さらには、ドンマイと口パクでいってきた。

 

 …

 

 もう無言でオレは前を向いた。

 

 そしてすぐさま、また宮田くんの方をみてニコッとしてみた。

 

 すると宮田くんは、目を見開いて驚いた顔をしていた。

 

 …ああ、やっぱりオレのニコッとは、すごい顔なのだろう。

 

 再確認できてよかった。

 ありがとう宮田くん。と宮田くんにも心でぺこりするのでありました。

 

 

 そしたらさ、いきなり宮田くんの隣の席の小林さんがさ、

「やっぱり男って美人が好きなんだ?」

 と言いながら頭をボリボリとかいた。

 

 

 ⁉︎

 小林さん…いきなりどうしたっていうのさ⁉︎

 

「えっ、どうしたの?小林さん…」

 オレが小林さんをみると宮田くんも、

「えっ、小林さん⁉︎オレずっと大林さんだと思ってたわ!てか、明日からタワマン生活って本当かよ⁉︎」

 と、またも話が脱線。

 

 しかも誰がタワマン生活だよ⁇

 ついに幻聴までもきこえ出す宮田くん。

 

 …

 

「だからー、美人好き?って話」

 小林さんが話を巻き戻ししてくれた。

 

「そりゃ…嫌いじゃ…なくない?」

「好きに決まってる‼︎」

 と宮田くんは、堂々と宣言した。

 

「へー。あたしは?美人?」

 

 小林さんが急にそんなことを質問してきた。

 

 …えと、美人とか聞く前にまず、その…スカートなのに股全開をやめた方がよいのでは?と思われる。

 

 が、言えないよねー。

 

「あぁ、び…びじんなんじゃないのかなぁー…」

 と答えておいた。

 

 すると…

「擬人?おい、それはいくらなんでも失礼だろー…せめて人間でいさせてあげなよー」

 と、またも宮田くんは暴走した。

 

 宮田くん…もうそのままどっかほんとに暴走してどっか行っちゃいなよ。と思ったが言えるわけない…けどね。

 

 

「わたしさぁ、実は昔は可愛かったんだよ?瀬川さんくらい。いや、もっとかなぁ」

 なんて言いながら瀬川さんをみる小林さん。

 

「へー」

 と鼻をグリグリする宮田くん。

 

 もう、ほぼ宮田くんは聞いていないっぽい。

 

「ほんとだからね‼︎」

 と必死になる小林さんを瀬川さんがなだめていた。

 

「じゃあさー、昔の写真見せてよ」

 と宮田くんがいうと小林さんは、

 

「あー、わたしの幼い頃の写真おばあちゃんちなんだよねー」

 と言った。

 

 

 …え?

 

「とくにさ、七五三の写真は抜群にかわいいんだぁ」

 なんて言い出した。

 

 …え?

 

「七五三?」

 オレが聞き返すと、

「うん、七五三。着物着てさ、もうめちゃかわいいのなんのって」

 と、とまらない自画自賛。

 

 

 着物…七五三…おばあちゃん…

 

 

 しかも…まさか…股おっぴろげ…

 

 待ってください‼︎降ります‼︎バスとめてください‼︎くらい焦った。

 

 てか、焦ってる…

 

 

 七五三の写真…着物なのに足おっぴろげてあかんべーしてたよね…。

 

 え…このまま繋がる⁉︎

 

 まさか…オレが助けたおばあちゃんの孫って…

 

 …

 

 続く。

 

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