第8話
「おや、そこのお嬢さん」
「 えっ?」
両親が見つからず、会場内をふらふらしていたパレットは入り口近くで声をかけられた。
「おお、やはり。先日ぶりじゃな、パレット」
「えーと・・・・・・あっ、図書館の!」
「む、忘れておったのか?」
「ごめんなさい、なんか図書館の時と雰囲気違ったから」
このおじいさんとは初めて話した次の日くらいからよく話すようになり、今ではこうして気さくに喋り合う仲になっていた。
それにしても今日のおじいさんは図書館での穏やかな雰囲気とは真逆で、全身から威厳が溢れている。それに服装もきっちりとした堅い正装だ。
もう城での仕事は引退したと言っていたし、こういうパーティーにも来ないと思っていた。
「おじいさんも誕生パーティーに来てたんですね」
「あぁもちろんだとも。パレットこそこのような場に来るんじゃな。てっきり一生来ないものだと思っておったよ」
―――おじいさんも私と同じこと言ってる・・・・・・。
「いや、まあ、そうしたいのは山々なんですけど。このパーティーだけはって、お父さまとお母さまが・・・・・・」
「ほぉ、なるほどのう」
「それで今二人を探してて・・・・・・」
「ふむぅ・・・・・・よし、では一緒に探さないか? もしかすると
「え?」
「あちら側もお主を探しているかもしれん」
「あ、確かに」
―――って、ちがーう! いや合ってるけど。
今のはさっきまでの自分に対して投げつけた言葉だ。あまりにも自己的で何も考えていない過去の私に向けて放った言葉。
私はずっと両親が自分のことを探してない前提で動いていたが、そうだ、両親も両親で私のことを探している可能性もあった。
ヤバい。恥ずかしすぎる。
そう、そう、そうだよ。あっちもあっちで探してないわけないじゃん。
ほんっとうに、馬鹿だった。
「ううー・・・・・・」
「どうした? どこか悪いのか?」
「いえ・・・・・・過去の自分を思い返して頭が痛くなっただけです。おじいさんのおかげで頭がもとに戻りました」
「・・・・・・何のことかさっぱり分からんが、役に立てたようでよかったよ。探しに行くか?」
「いきます・・・・・・」
うなだれながら返事をして、パレットはおじいさんと一緒に会場を出る。
あぁ、馬鹿だった。
はい。私が馬鹿でした。思考停止してました。
多分ちゃんと動揺して思考も正常に回ってませんでした。
あぁ、これが羞恥心か・・・・・・。
もう記憶もあやふやだけど、たしかパレントの追放の時でさえこんな感情湧いてこなかった。
まぁ、転生して初めての経験ってことで、無理矢理いい感じに収めておこう。・・・・・・うん。
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