第7話

 お一人様時間を堪能したパレットはパーティー会場に戻ってきていた。

 もう入り口に人だかりはできていない。あの息が詰まるような空間も、三十分も経てばさすがに落ち着いていた。

 その代わり、会場内は先程の方々で埋め尽くされ、みんな各々の社交辞令を交わしている。その中には私の両親もいるはずだが・・・・・・またこれも探すのに苦労しそうだ。


「ま、とりあえず私も入りますか」


 私は会場内に足を踏み入れる。

 まず目に入るのが会場内を二つに割る赤いカーペット、の終着点にある九つの玉座。玉座まではこのカーペットが通っているからみんな道を空けている。のちのちここを皇子皇女が通るのだろう。

 赤いカーペットの両側のスペースにはそれぞれ真ん中に料理が置かれ、それを楽しんでいる人もいた。

 私も舌がじゅるりと反応してしまう。

 こういう場での一番魅力的な要素といえば、料理くらいなものだ。あれが個人的に一番そそる。てかあれだけでいい。

 と、本気よりの冗談は置いておいて、さっさと両親を見つけていきたい。


「うーん・・・・・・あれも違うし、あれも違う」


 パレットはきょろきょろと周りを見渡した。

 幼女身長に加え、パーティー会場自体もそれなりに広いため、如何いかんせんすぐに両親を見つけるのは難ありだ。

 けど、今日の主役(皇子皇女)の登場はまだだろうし、とにかく歩きながら探していればいつかは見つかる・・・・・・と思う。


 そうして人の隙間を縫うように歩いていると、妙な懐かしさに襲われた。

 それはたぶん、前世のパレントの感覚が残っているからだろう。こういうパーティーに来ること自体、今世ではこれが初めてだが、前世では何度も行っていた。

 知らない場所、知らない貴族ひとたちの中にいることがどれだけの不安感を募らせるか。パレントに転生する前の私だったら、こんなキラキラした場所すぐに卒倒していた。

 なんてことを想像すると、パレントって根っからの令嬢だったんだろうなぁとか思ってしまう。

 ―――まあ、もうパレントはいないんだけどね。

 

 そうだ、パレントといえば。思い出さなければいけないことがあった。

 前世の私が手塩にかけてリフォームしたあの家。

 あの家がまだあるのか確認しに行かなければいけない。パレントが死んでからそれ程時は経っていないから、おそらく残ってはいるだろうが。

 できればあの家にもまた住みたい。今の家も十分良いが、居心地の良さはやはりあの家が一番なのだ。

 もしかしたら子どもたちもまだ住んでいるかもしれないし、近い内に両親に遠出の許可をねだってみることにしよう。


「ふふっ。楽しみー」


 

 

 

 

 


 


 

 

 

 

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