第4話
五月八日。
さて、今日は何の日でしょう。
と、問われたらレドリー帝皇国の民はみんなこう答える。
「記念すべき皇子皇女の誕生日だ」
そう、今日は我がレドリー帝皇国の皇子皇女の記念すべき十八歳の誕生日なのだ。
この誕生日はレドリー帝皇国の民ならば、当然のごとく知っている。他国からも何名かお偉方が来るらしいが、とりあえずレドリー帝皇国の民たちにとっては祝うべき日である。
この五月八日は国全体を挙げて祝われるため祝日扱いだ。皇都でも道や家に飾り付けをしたり、皇子皇女にかけた品が売店で売られたりするため、それはもう大騒ぎで一日中過ごすことになる。
その証拠に朝からすでに陽気な音楽が我が家にも聞こえてきていた。
皇子皇女は八人いる。そしてなんとその全員が同い年らしい。言うなれば八つ子だろうか・・・・・・とにかく今までにないくらい盛大に祝われる。
城の方でも皇家主催のパーティが開かれるようで、そこには貴族が集まる。当然、その貴族に含まれる私もそれに参加しなければいけない。
父も城で働いているため一人だけ私が来なかったら不敬罪に問われる可能性がある。なので今回は図書館に籠もるのは通用しない。絶対にパーティには参加する。
今まで両親は私のわがままに付き合ってくれた。一度くらいは両親の面目を潰さないためにパーティに参加するのも苦ではない。
・・・・・・まぁ、うん。参加するのはいいよ。いいんだけど。
私は自分の目の前に広がる現実と向き合った。
「―――この大量のドレスは何?」
色とりどりのドレス、装飾が微妙に異なるドレス。今、私の目の前には似て非なる大量のドレスが並べられていた。
母は自慢げに答える。
「何って、パレットちゃんのドレスに決まってるじゃない。この中から着ていくもの選んでいくのよ」
「えぇ、この中から?」
ドレスは横に一列少しの隙間もなくハンガーに掛けられている。遠くからみたら一本の線に見えてしまうだろう。何がヤバいって、それがヤバい。
これ全部試したら何時間かかってしまうのか。少なくとも一時間で終わらないことは想像に
しかし母はそれを全肯定するように私に言った。
「今日はパーティなのよ!? お母さんにとってはかわいいパレットちゃんを合法的に着飾れる数少ないチャンスなの!」
「合法的って、そんないつもは駄目みたいな言い方・・・・・・」
「だってパレットちゃんったらいつもはパーティに出ないじゃない」
「うっ・・・・・・」
そう言われると何も言い返せない。事実私はそういう誘いを全て断って図書館に籠もっていたのだ。
母の言い分にはまったく反論できる余地がなかった。
「覚悟しなさい。パーティは夜から、今日はお母さんが納得するまで着せ替えさせてもらうわ」
「・・・・・・はい」
もはやこれまで。一日中着せ替えさせられることを受け入れるしかない。
・・・・・・まぁ、いっか。
―――このときの私はまだ楽観視していた。この後、想像を絶する地獄が待っているとも知らずに。
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