第2話

 赤子に転生してから五年。

 私は立派な幼女になってしまった。よく見るとパレントとはまた違った雰囲気の美形である。

 新たな両親の顔が元々良いから、必然的に私も整って生まれたのだろう。


 ヤバい両親だったらどうしようかとも考えていたが、実際そんなことはなく新たな両親は優しかった。

 けれど、我が子を愛する気持ちが強すぎて、行き過ぎな部分も多々ある。特に父が。まぁヤバい親よりは断然こっちの方がいい。


 普段、父は皇家に仕えているため城に出ており、週に一回帰ってくる。母はいつも家に居て私の世話をしてくれている。


 家の中での自由行動が解禁されると私はすぐに本を読み漁ってこの世界の情報を手に入れた。

 私が三度目の転生を果たした世界は二度目の世界と同じゲームの世界だった。正直ゲームの名前が何だったかは覚えていないが、ゲームの設定は覚えていた。


 私が今いる国は、ケリド大陸と呼ばれる大陸にある。

 ケリド大陸は二つの国によって二分されていた。小規模に派閥などが分けられているものの、大きく見ればフリセル王国とレドリー帝皇国の二つだ。

 前世でゲームの舞台になったのはフリセル王国で今世で私が生まれた国はレドリー帝皇国。

 ゲーム内では、レドリー帝皇国は設定でしか登場しなかった国だ。だからかどんな国なのかとても気になる。

 まあそれはこれから少しずつ知っていくつもりだ。


 一方、父に聞いた話によると、フリセル王国では最近王太子が十歳の誕生日を迎えたばかりらしい。

 ゲーム内の暦的にパレントが生きた時代とそう変わらないため、もしかしたらその王太子はヒロインたちの子どもの可能性がある。

 ヒロインの子はゲーム内では描かれなかった。どんな王太子なのかも気になる点である。


 とまあそんな感じで、今世は気になることが多い。

 悪役令嬢としてルートが確定されていたパレントの頃とは違うのだ。パレットとして生きる今世は生き方が無限に広がっているし、不確定要素が多いとも言える。

 今度こそ長生きするために、これからどんな事が起きてもいいように色々と対策が必要だ。

 

 その第一歩として、まずはこの世界の知識を頭に叩き込む。

 前世で得た知識だけでは足りない。知識や情報は時間が経つにつれていくらでも変化していくものだ。


 すでに知識を手に入れる場所の目星はつけた。

 手っ取り早く多量の知識を手に入れることができる場所がこの国にはある。いや、どこの国にもあるかもしれない。


 皇立図書館。

 誰でも中に入ることができ、誰もが本を読み知識を得られる場所。

 幸い、今の私はただのお子様なので両親に許可さえ貰えれば平日だって一日中本を読んでいられる。

 働かなくていい、これぞまさに子どもの特権だと思う。

 

 中身はまったくの成人だが、利用できる手段は遠慮なく利用させてもらう。

 それも全て私自身のためである。

 



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