第5話
「あちゃー・・・・・・」
国外追放となり私は他国の辺境へとやって来た。
前世を含めた人生で初の自分だけの一軒家とのご対面。追放された反面、自分だけの家を持つことに密かな楽しみを抱いていた私は舞い上がっていた。
しかし、いざ到着するとそこには見事なボロ屋敷がありましたとさ。
木で建てられたボロ屋敷は長い間放置されていた事もあってか、雨に濡れた壁や屋根はくまなく腐っている。
家を取り囲む雑草は膝くらいの高さまで育ち、雑多に並んで伸びた木々は倒れていたり、逆に大木と化していたり。
これ人が住む家じゃなくて単なる物置では?
だがこんな状態でも今日からこの家で寝られるようにだけはしておきたい。夢の一軒家暮らしは早々に消え失せ、パレントは仕方なく踏ん切りをつけた。
―――こうなったら私が満足するまで家を改装してやる!
その日から元悪役令嬢のボロ屋敷改装の日々が始まった。(結局改築が済むまでは街の宿で寝泊まりした)
まず家が建つ森を抜けた南方に位置する街で斧と釘、金槌を買い揃える。雨風を凌ぐためにはあの腐った壁や屋根を若い木に変えることが必須だ。
幸い誰の土地でもない森は木材を調達するのに適していた。
屋根と壁の改装が済んだら次は家具を一通り運び込むために室内の掃除をする。流石に風呂やトイレ、キッチンなど水回りの修理及び掃除はプロの方々にお任せした。
これはあとの話だが、そろそろ手元のお金が怪しくなってきたので私はあるとき街で仕事を探していた。そのときに偶然数日間泊まっていた宿で働かせてもらえることになったのだ。
そこで宿を経営していた宿主のデルナーさんの伝手でプロの方々に修理を依頼できた。
そんな過程を経て、家は寿命末期のボロ屋敷から新築同然の良物件へと変わっていった。
ついでに雑草まみれの余った土地は畑を作って、庭も作ってみた。
ここまで来るのに要した期間は五ヶ月。
想像を絶するくらいの時間が過ぎたことに内心萎え始めた自分もいた・・・・・・。
ともあれ、こうして前世では絶対に経験することのなかったであろう一軒家の改築生活は終了したのだった。
私は愛するマイホームを眺めながらふと疑問に思った。
―――本来のパレントはどうやってこの家で過ごしたんだろう?
たとえゲームを完全クリアしても、断罪後の悪役令嬢の人生は語られない。本編では見られないストーリーもあっても良いとは思うが、正直彼女がその後をどう生きたのかは気になってしまった。
そこで気づいてしまったのが、もしかすると性格が破綻していたパレントは物置状態の家を私みたく改装する考えには至らず、自滅していったのかもしれないということだ。
貴族の生活に慣れきっている令嬢だからこそ彼女は劣悪な環境に耐えられず息絶えていった・・・・・・。
そう考えれば悪役令嬢の断罪後設定はなにも不吉なことではないのかも。
って、まてよ。そう考えるとするならば―――。
「・・・・・・それならもう私は若くして亡くなる設定からは脱したんじゃない!?」
―――今度こそ私はおばあちゃんになるまで生きられるのかな?
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