SS:宇宙に住まう巨大龍
「……ん」
「なぁリア……あれ何の生物? 蛇?」
「邪龍の一種。……元は聖龍だったけど」
今現在、俺達は旅行がてらにとある別惑星へと来ていた。
この世界……どうやら宇宙とかもしっかり広がっていて、特定の惑星には生物も存在しているらしい。
とは言え、そこに神格者は居ないらしいが。
あくまでこの世界の中心は俺が生まれ育った惑星で間違いないらしい。
そんな訳で別惑星に来たのだが、そこで見つけたのはデカい蛇……みたいな龍。
いや、マジでデカい。龍の時の俺よりも数倍……下手したら数十倍にまでなりそうなデカさの蛇っぽい龍が螺旋状に生えた山に纏わりついている。
「ん……この龍は大体二億年前ほどの生物。
私達が住む惑星で聖龍として生まれて……人間が勝手に別惑星に追放した。
……そしたら、なんか邪龍になってた」
「なんかなってたって……こいつ、世界の維持的には存在していても大丈夫なのか?」
「……元が聖龍だったから大丈夫。んー……残ってる理性で邪落に抗ってる? 多分そんな感じ」
「助けた方が良いのか?」
「ん……世界の中心からかなり遠い場所だから放置しても大丈夫。……ゼノが助けたいなら、助けても良いと思うけど」
そう言ったリアの目からは、あの蛇龍に対する感情を一切持ってなかった。所謂、無感情。多分リアから見ればあの蛇龍も数多ある生物の1匹程度にしか思ってないのだと思う。
……まぁ、強さも大体最上進化種一歩手前って感じだからな。ありふれてはいないけれども、世界に干渉するほど危険でも無い感じだ。
そんな存在だからこそリアも無視してたのかねぇ。
『シュルル……オオオアアアアァァァァ……』
蛇龍からなんとも苦痛を感じる声が漏れていた。……よくもまぁ、邪落に抗ってる物だ。この惑星に住む生物がこの蛇龍に蹂躙されてないのは、この蛇龍が完全に邪落化してないからだろう。
それに、もしこの蛇龍が邪落化して惑星にいる生物を蹂躙してたら……もはや排除対象に指定されてたと思う。この蛇龍がもう一回進化すれば危うい存在になるだろうしな。
まぁ、流石に見てられないから邪落化を取り除く予定だけども。
「……ゼノはお人好し」
「無情よりも良いと思わないか?」
「それは……そう。……ごめん」
「良いって。リアがコイツを助けなかったのも理由があるんだろうし。
それに、今回も手伝ってくれるんだろ?」
「ん……任せて」
俺は龍の姿となって惑星へと降り立つ。
目の前には余りにもデカ過ぎる蛇邪龍。先程まで苦しんでいた蛇邪龍が俺を見つけた途端、表情を歪ませた……気がした。
「ん、この邪龍は私達神格者を怯えている。……元聖龍だったから同じ聖龍のフィリアと接点あるし」
「あぁ、成程……排除されたくないのか」
「ん……そう言う事。……それじゃ、行こっか」
「はいよ」
心を決めたのか、蛇邪龍が大きな口を開けながらこちらに向かって突っ込んできた。
余りの大きさに龍形態である俺ですら丸呑み出来そうではあるが、あくまで大きさだけ……と言うか丸呑みされても胃袋突き破って出れると思う。
とは言えわざわざ丸呑みされる理由もない。断罪氷を横からぶつけ、突進の進行方向をずらした事で俺の真横をどでかい身体が通過していく。
そのデカい身体を翼脚で掴み、突進を無理やり止める……これぞステータスの暴力。どれだけの巨体であっても根源種となった俺のステータスじゃあんまり関係がない。
自分の何倍もある巨体をステータスの暴力で封じ込めながらも、翼脚の爪を食い込ませ、食い込んだ所から断罪氷を展開して蛇邪龍が動けないようにしていく。
爪を食い込ませた所から伸びた氷は、やがて身体全体を侵食し、氷漬けになった。
氷漬けになっても生きているのは流石邪龍と言うか……最上位進化種に近しい存在というのは伊達じゃない。
身体がデカいだけだったいつぞやの帝国の老地龍とは大違いである。
……いやまぁ、老地龍君はただ単に人間に育てられたからあんなに弱かったんだとは思うが。だって成長の機会とか全然無さそうだしな。
「……あとは任せて」
「おうよ、任せた。……やっぱ俺もそっち方面の技能付けとくべきか?」
「ん、全然ありだと思う。……でもどうせ私が側に居るから無理に習得しなくて良い」
「時間はどうせ沢山あるしな……気が向いたらやってみるか」
「ん。ゼノは早くに神格者になったから技術が足りてない……」
「指導よろしく頼むよ」
「……大丈夫、みっちり教えてあげる」
一応万が一に備えて……いやまぁ、リアとか俺なら万が一があってもどうにでもなるけど一応蛇邪龍の身体を掴み続けておく。
……うーん、見た目はしっかり邪落化した種族なんだよなぁ。ほぼ全身が黒い見た目をしており、棘……というよりも刃っぽいのが身体に無数に生えており、身体を地面に擦り付けるだけでも地面を抉ってしまいそうだ。
こんな明らかにヤベェ姿になっているのに今から入れる保険なんてあるのだろうか? もはや邪落化無効を付与したとしてもどうしようも無さそうだけども。
っと、そんな事を考えているうちにどうやら作業が終わったらしい。
黒色だった身体に次第と白銀と言った色合いが戻っていき、刃っぽい部分は赤色に染まってきた。
所謂、紅白カラー。大部分が白銀色ではあるものの、赤い刃部分が中々カッコいい。
フィリアさん同等に神聖さを感じながらも、龍としての存在感もハッキリと感じる素晴らしい姿だと思う。
……そもそもデカ過ぎて元から存在感はたっぷりだが。俺の龍形態も結構大きいと思うけど、この蛇龍に比べたら自分が随分と小さく見える……物理的に。
「ん……多分これで大丈夫」
「随分と見違えたな、こいつ」
「むしろこれが本来の姿。……懐かしい」
リアが何やら遠い目をしている。多分過去に思い出も馳せてるんだろうか? 俺からしたら永久とも言えるような年数を生きてるからな……どんな過去を思い出してるんだろうか。
『
「うん? えっと、何がごめんなんだ?」
『あの、えっと……貴方は多分新しい神格者の方ですよね? そんな方がこんな所に来る用事なんて私の排除しかあり得ないかなって。
聖龍なんて言われてましたけど、堕ちれば皆邪龍ですもんね……
……よしっ、覚悟は出来ました! どうぞっ! どうか一思いにやって下さい!』
スッと潔く白銀の首……これ首で良いのだろうか? デカ過ぎて分からないけど、とにかく身体を差し出してきた。
おそらく介錯してくれって事なのだろうが、別に排除したくて来たわけじゃないし反応に困る。
……覚悟を決めたと言う割には身体を震わしてるからな。やっぱ死にたくないのだと思う。
「……メル。私の事覚えてる?」
『……ぇ? えっ! リア様⁉︎ もしかしてリア様が出ないと行けないほどの事になってたんですか⁉︎
うぅ、フィリア様に合わせる顔がないです……』
「一旦落ち着いて、メル。……貴女はもう邪落化してないから」
『? ……え? あっ、ほんとだ……姿が元に戻ってる。てっきり戻らないものだと思ってたんですけど……
もしかしてこれ、リア様とそちらの神格者の方が? 私なんかの為にどうして……』
どうやら今更自分の状態に気付いたらしい。
と言うかめっちゃこっちをチラチラと見てくる。新しい神格者ってのが余程気になるらしい……と言うか、結構昔の生物って事は凪さんとかの事も知らないのだろうか?
そんな風に思ってるとリアが大雑把に説明し終えたらしい。メル、と呼ばれた蛇龍が「ほぇ〜」って言いながら興味津々になりながら俺を見つめてる。
『なるほど、リア様の番なんですね……
では僭越ながらも自己紹介をさせて頂きますね!
私はメルトネア、と言う名前です! えっと、遥か昔にフィリア様の部下をしてたんですが……忌まわしき人類が私をこの惑星に追放した事で音信不通になってしまって……
まぁ、とりあえずリア様とゼノ様のお陰で再び聖龍として舞い戻れましたっ! 本当にありがとうございます!』
なんともまぁ後輩感溢れる挨拶をしてくれるメルトネアさん——愛称メルさんではあるが、年齢で言えば圧倒的に俺より上で、龍生で見れば大先輩だ。
かたや数千だか万しか生きてない俺と、数億は確実に生きているメルさんだ。なんとも年齢差が激しい……
『えと……私、これからどうすれば良いんでしょう? 私があの場所に戻ったとしても邪魔になるだけ……ですよね?』
「ん、メルは巨体が過ぎる。もうちょっと痩せるべき」
『痩せてもどうにもならないですって。そう言う種族なんですから。
……と言うか、私も人化したいです。あ、いえやっぱりしたくないです。誰が好んであんな奴らの姿になるんですか。そんなスキル芽生えたら最悪も最悪ですよ……』
確かに龍と言う種族から見れば人間って下等生物みたいな印象だけどね? 人間の身体ってのも案外便利な物なのだ。
場所取らないし、布団に潜れるし、手先器用だし。
俺も普段は人型で生活している。やっぱ前世人間だった事もあって人の身体には親しみを持てるからな。
まぁ、それ以上にリアが普段から人の姿で生活しているからそれに合わせてるって言うのもあるが。
龍の姿って割と不便なのだ……特に神格者だと鱗をポロッと落としただけでも大騒ぎだからな。
思えばレティに鱗を渡してたのって結構ヤバかったりしたのだろうか? いや、多分大丈夫だろう。だって上位種ですら無かったはずだし。
『うーん……私はこのままここで過ごしてた方が良いですかね? 多分それが一番平穏でしょうしね。
それに、あの人間共の姿を見ずに済むと思えば充分ですしね。
あっ、そうだ! リア様、もしフィリア様が私の事を覚えていたら「勝手にフィリア様の元を離れて申し訳ございません」って伝えてもらえますか? フィリア様に一切伝えれずに離れてしまったのがどうしても心残りでして……』
「それぐらいはお安い御用。……多分、メルのことは覚えてると思う」
『だと、良いですね……伝言、よろしくお願いします。
えっと、御二方は確か旅行中でしたよね? 夫婦旅行楽しんでくださいね〜』
----------------
と、旅行中に新たな出会いがありましたっと。
「ん? 何これ」
「これか? これはこの前行った旅行の記録……かな。なんとなく書いときたくなってな」
「ふーん……うん? あっ、メルの事フィリアに伝えるの忘れてた」
「……何やってんだリア。さっさと伝えてこい」
「ん、行ってくる」
リアが転移でフィリアさんの元へと行ったのを見送り、記録へと視線を戻す……のだが、周りに霧が立ち込めて邪魔された。
「……パパ。私との旅行……いつ?」
「うーん、流石にシアと二人ではなぁ……家族旅行でなら全然良いんだけど」
「……むぅ。パパのいけず」
「どうせならノアとレイアさんを呼ぶのもアリだな。家族旅行ならフィリアさんも呼ばなきゃな」
「神格者ばっかり…………あの二人、耐えれる?」
「うーん、多分大丈夫じゃないか? あともうそろそろ離れてくれないか?」
「……パパ、相変わらず冷たい」
「ん、ゼノは私しか見てない」
っと、いつの間にかリアが帰って来てたらしい。基本的に転移で移動するから当たり前と言えば当たり前なんだけど……帰ってくるのが早い。
「ゼノ、フィリアがメルの所に飛んでいった……追いかけなきゃ」
「……マジ?」
「ん、大マジ。フィリアはあんまり宇宙空間に詳しく無いから迷子になるかも……」
「…………私はお留守番?」
「そう、だな。シアは留守番しててくれ。シアも宇宙空間で迷子になったら大変だしな」
と言うわけでリアと手を繋いで宇宙空間へと転移していく。
これもまた、日常の一コマ。今日も今日とて世界は平和だなぁ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
はい、冰鴉です。
なんとなく育りゅう世界での戦闘描写を書きたかったんで思うがままに書いたSSです。
特に深い意味は無いと思う。多分。
ちなみにメルちゃんことメルトネアちゃんの元となったモデルはモン◯ターハ◯ター4Gにて出てくる【ダラ・ア◯デュラ】です。
結構好きなモンスなんですよねぇ、ダラ。
まぁ、ワイルズでの復活は絶望的が過ぎますけどね。あやつ千剣山でしか出てこれねぇでしょ。
まぁ、話題を戻しますと、このSSは記念でもなんでもなくただ書きたかっただけの話なんで完成度はご了承くださいな。
……実は久しぶりの育りゅう世界だからゼノのスキルとか滅茶苦茶忘れてた。罪氷is何。
てな訳で違和感感じたとしても大目に見てくださいね。
ちなみにこのSS、あとがき合わせてる5000文字程度あるんですよね……うん、長い。
冰鴉からでした。
姫竜世界もよろしく〜
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