第158話 転生龍は神の如き龍と化す

 ……………


「ゼノ。覚悟は決まった?」

「あぁ、もう…この世界に親しい【人】は居ないからな」

「………準備は良い?」

「大丈夫だ、いつでも行ける」

「……【世界の理と同化を開始します】」


 俺1人で葬儀を行ってレティの墓を作った後、俺はリアの元に戻ってきていた。

 …リアは今現在、世界の理と同化を始めている。これからやる事に必要なプロセスなのだ。


 リアの姿が変わっていく。

 身長が伸び、大人のリアの姿になるが…世界の理と同化したからか何処か少し冷たい印象を受ける。

 髪はロングのストレートになり、大部分が金髪だが、毛先が銀色になっている。


 …リアの様であって、リアでは無い。そんな存在が目の前に居る。


【……ゼノ・エルシオンの進化を開始する。

 ゼノ・エルシオン…これより貴方に与えられる力は、世界の破壊すら可能…故にその魂に楔を打ち込が…拒否をするならば今のうちに】

「…………承諾する」

【…承諾を確認した。これより、神格者:ゼノ・エルシオンの進化を開始する。

 ………痛みに備えよ】


 突如として、魂に何かが入り込むのを感じる。これが楔だろうか…確かに強烈な痛みが発生しているが痛みは崩壊制御時に慣れたし、耐えれない程じゃない。


 そして…痛みに耐えていると、急にスッと痛みが無くなった。完全に楔が魂に打ち込まれたのだろう…

 次に身体が変化するのを感じた。骨格が変わったわけではないのだが…まるで神格者とは身体の造りが違うとでも言うかの様に内部が変化していってるのを感じる。


 …それもじきに収まり、最後に世界維持に必要な知識が脳内にインプットされて進化が終わる。


 そして、この世界で初の正真正銘の【根源種】が生まれた。


 ---------------------


 種族:龍【ニュートラル変革起こりし中間】(根源進化種)

 名前:ゼノ・エルシオン

 体力:—/ΑΩ

 魔力:—/ΑΩ

 攻撃力:ΑΩ

 防御力:ΑΩ

 魔法抵抗力:ΑΩ


【スキル】

 編集:世界の理

 崩壊域化 崩壊化破壊術 崩壊制御術

 永久生命炉心

 永久魔力炉心


【耐性】

 無効・AΩ

 崩壊無効


【称号】

 根源ノ魂 淵源ノ番

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 ………随分とスッキリしたもんだ。


 俺が根源種になる条件は、実は俺のステータスが元に戻った時から達成していた。

 一定値以上のレベルとステータスは邪龍を滅ぼした事で手に入れ、称号である【根源ノ種】も入手済み。

 後は淵源種と世界の理からの同意と魂に楔を打ち込む事の同意があれば根源種に成れた訳だ。


 すぐに根源種にならなかったのは人の思考を完全に神格者の思考にする為にも知り合い達が亡くなってからにしようと思ってたからだ。


 にしても…まるでリアと瓜二つなステータスをしている。

 リアのステータスは俺のこのステータスから崩壊関連のスキルが抜けたものになっている。とは言え、ステータス上で俺がリアよりも強い訳ではない…


 リアが司るオリジン始まりエンド終わりがあるからこそ、俺の司るニュートラル中間が存在出来るのだ。

 ステータス自体は似てるからもし戦えば技術度外視で言えば拮抗状態になるだろうが、もしリアが居なくなったら俺の司る物も無くなり、俺の力も消滅する。


 …リアが居なくなったら世界が消滅するからそこはどうでも良いか。


「………どう?根源種になった気分は」

「なんか…全体的に創り変えられた気分だな」

「ん…あながち間違いじゃ無い。淵源種と根源種は特殊だから」

「聖印とか霊印が消えてるのもそれが理由か?」

「そう。私達に印は付けれない」

「称号が全部無くなってるのは?」

「…称号があっても意味がないから。私達は自由にステータスを弄れるから、自分のステータスなら勝手に弄ってもいい」


 …インプットされた知識にあるな、ステータスの編集が。

 と言うかスキルは?とは思うだろうが、それは全て【編集:世界の理】と言うスキルが解決してくれる。


 このスキルは世界の理に記されているスキル全てを行使する事が可能であり、持ってる権限によっては新たなスキルすらも作成できる。

 他にも他人のステータス情報を書き換えたり、世界の理が発信する通知を止めたりなどがある。


 とは言え俺の権限で言うと、スキル全ての行使と通知を止めるくらいしか出来ない。

 まぁ、流石にぽんぽん権限を渡されても困るしな。


『ダァンッ!』


 突如放たれたリアの足蹴りを受け止める。

 ……俺はなんとも無いが、リアの蹴りの反動で俺の背後にあった山が吹き飛んだ。


「…なぁリアさんや。何故急に蹴りを放ったんだい?」

「ん。初めての全力を出しても良い相手」

「いや待てリア!俺はまだ根源種になったばかりでスキルの使い方とかに慣れてな——」

「んっ!」


 リアと関わり初めてから結構経つが、そんな日々でも見た事ないほどの笑みを浮かべながら右ストレートを放ってきた。

 そのストレートを片手で受け止める。

 …そしてまた後方の山が吹き飛んだ。


【………はぁ】

「リア!世界の理さんも呆れてるって!一旦落ち着こ?」

「…ヤダ」

「いや、ヤダじゃなくってぇっ!」


 リアに背負い投げされて地面にどデカいクレーターが出来上がる。うん、俺は大丈夫だけど地形が大丈夫じゃないね。


 すぐそばにいるリアを抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でながら落ち着かせる。


「リア、別に俺はいつでも受け止めるから…とりあえず一旦落ち着こう?ほら、ここでやると地形破壊がとんでもないから。ね?」

「……分かった。もう大丈夫、全力を受け止めてくれたし」

「うん、落ち着いてくれた様で何よりだわ…」


 たったあれだけの行動で山二つ消し飛んでデカいクレーターが一つ出来上がった。これが淵源種かぁ…


「ん、ゼノもこれくらい出来る。」

「……まずは力の制御をしないとな、うん」


 暫くは攻防変換のスキルで制御しておこう…俺はクレーターとかぽんぽん作りたくないし。落ち着いたリアは山を直し、俺はクレーターを埋める。


「ゼノ。帰ろっか」

「そうだな、帰るか」


 リアと手を繋ぎ、一緒に我が家に転移する。


 もう俺はこれ以上強くはならないだろう。出来たとしても技術を磨くくらいだ。

「根源種」と言うのは、生命が到達出来る最終地点なのだ…そこまで到達するには莫大な経験値が必要だし、神格化も必要だ。


 思えば、かなり長い道のりだった気がする。

 …幼龍時代の時にハイオークにボコボコにされたのが懐かしいや。

 でも、今ではリアと共にこの世界を維持する役割を持つ存在になっている。龍になりたいとは願っていたけども…いつに間に俺はここまでの能力を身につけたんだか。

 それも全てリアを支えたいが故にたどり着いた種族なんだが。


 まぁでも、世界維持の役割を持ってるとしても、そこまで頻繁に仕事が沸くわけでも無いですし………



 うん、怠惰な龍らしく巣に籠る隠居生活でも始めますかねぇ。



 追記…数年も経たずしてリアに夜這いされた。

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【育児放棄された転生幼龍はいずれ神に近き龍と化す『育りゅう』】fin





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 追記:リア・エルシオンのステータス


 種族:龍【オリジン/エンド始まり/終わり】(淵源進化種)

 名前:リア・エルシオン

 体力:—/ΑΩ

 魔力:—/ΑΩ

 攻撃力:ΑΩ

 防御力:ΑΩ

 魔法抵抗力:ΑΩ


【スキル】

 編集:世界の理

 黄泉ノ権限

 常世ノ権限

 永久生命炉心

 永久魔力炉心


【耐性】

 無効・AΩ


【称号】

 淵源ノ魂 創世神ノ娘

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ちょいとあとがき


【ニュートラル】という言葉に対して、

「ニュートラル」って中立的な〜とか、どちらかに傾かないとかの中間的な立場を表す言葉ですよ〜とか言う意見が出てくる可能性があるのでここで一つ。


中間の意味を持つ「ミドル」や「ミッドウェー(ミッド)」よりも中立的の「ニュートラル」の方がしっくり来たんです。

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