第156話 レティとデート

 それからはもっぱらリアとの隠居生活を送っていた。


 時々遊びに来るフィリアさんと話したり、エルフの国に遊びに行ってレティの様子を見てみたりしながら過ごしているのだ。


「…そうね、確かに私達と他の生物の寿命は違うものね……でも、案外それも慣れるものよ。これは母としての言葉…悲しくなったらドーンと私に飛び込んできなさい!」

「……私は飛び込まないけど」

「ゼノに行ってるの!リアはゼノが居るから良いでしょうけど…私だって我が子を愛でたいのよ?」

「…ゼノには私がいる」


 …うん、母と妻で取り合いをしないで欲しい。あと多分だけど悲しくなったら俺はリアの方に行くと思う。


「あっ、そうだ。ねぇゼノ、やる事が終わったらで良いんだけど…二千年内のうちに貴方の兄弟にあって欲しくてね。あの子達もようやく私以外の神格者の雰囲気とかに耐えれるようになってきたから」


 …そう言えば俺が生まれた時に側に割れた卵が散乱してたけど、やっぱり俺に兄弟は居たんだな。

 この世界の血縁者か…どうせなら会ってみたいかも。


 二千年内と言う事だから、少なくともレティの弔いをした後でも良さそうだ。

 そんなスケジュールを立てながらも、日は過ぎていく。


 そして約700年程経った時、俺のステータスが元に戻った。


「…ん〜っ!久しぶりだな、自分の身体とスキルは」

「ん…ちょっと寂しい」

「それは我慢してくれ…ずっとリアの中に居るわけにもいかんだろ」

「私は一向に構わない」

「俺が構うのよ。それに、自分の意思でスキルも使いたかったしな」


 スキルから集中錬成武器である銃を取り出し、クルッと手で回しながら久方ぶりの自分の身体の調子を確認する。

 …うん、問題ない。あの邪龍の経験値を吸ったからありえないほど強くはなっているけど…それ以外は特に相違も無いし、しっかりと動けそうだ。


「…むぅ」

「そうむくれないでくれ…これからたくさんリアを抱きしめられるし、支えれるんだから」

「………レティの弔いが終わったら」

「はいはい…」


 かなりの年数が経ったことで、長命種であるレティの寿命も残り僅かとなっている。リアは家で待ってるとの事で、俺一人でレティの所へ赴くのだった。


 ------------------

「…お久しぶりですね、ゼノさん」

「おぅ、久しぶり」


 目の前には、非常に整った容姿を持つ美女…レティだ。

 本来は寿命まで残り僅かになると一気に老ける性質を持つエルフなのだが、レティは人徳の権能を持ってるからか若さが保たれているのだ。もしくは特異体質。


「ゼノさん。一つ、お願いをしても?」

「…なんだ?」

「セレスの街に、行きたいのです」


 …それくらいはお安い御用だ。

 俺は龍形態になり、レティを乗せて出来るだけレティに負担のかからない様に飛びながらセレスの街に行く。

 容姿はそこまで変わってないが…しっかりと老衰は来ており、S級冒険者として名を馳せたレティもかなり実力が落ちている。


 そして一旦セレスティア森林の浅瀬に降りて人化し、たどり着いたセレスの街に入る。

 …あんまり景色は変わらないな。


「…ふふっ。変わらないですね、この街は」

「最初に来た時とそこまで変わらないな」


 歩く人の多くが冒険者で様々な種族が入り乱れており、非常に賑わっている。

 …殆どが知らない顔だが。


「あっ、見てくださいよ。罪銀龍の像が立ってますよ?」

「…え゛っ」

「凄いですね…まんまゼノさんじゃないですか」


 …何故こんなにも見事に作られてるのだろうか。と言うかなんか罪銀龍の像の前が待ち合わせスポットみたいになってないか?


「流石はゼノさんですね。こんなにも有名になるなんて」

「…まぁ、人に味方する魔物なんてインパクトが強いからな」

「うーん…まぁ、そう言うことにしといてあげます」


 罪銀龍の像に近づいたレティは、とある物を取り出す。

 …昔に俺が渡した鱗だ。あの時はアームズドラゴンだったか?懐かしいものだ。


「………ゼノさん。結局この鱗、全部私が持ったままなんですよ。売りに出そうにも希少が過ぎますし」

「…ふむ。今の俺の鱗は要るか?」

「老い先短い人になんて物を渡そうとしてるんですか。絶対に受け取りませんからね、この鱗以上にヤバい代物じゃないですか」


 そりゃそうだ…神格者の鱗で武器を作ればおそらく上位種程度なら人間でも倒せる可能性がある。容易に渡して良いものじゃない。


「…ゼノさん。この鱗、どうしましょう」

「さぁな。今更返されても困るぞ?俺だってその鱗に使い道は無いからな」

「うーん…私のスキルに永久保管しときましょうか。世にばら撒いても騒ぎになるだけですし」


「さぁ、ゼノさん!冒険者ギルドに行きましょうか!」


 俺とレティは冒険者ギルドに行き、依頼を受ける。

 ………単眼の巨人、サイクロプスの討伐ね。


 俺はレティと共にセレスティア森林の奥深くへと赴き、サイクロプスの生息地に辿り着く。レティはどうやら死ぬ前にもう一度冒険がしたかったらしい。


「そう言えば…ゼノさんと一緒に依頼を受けるのって何気に初めてですねぇ」

「俺は依頼に関しては一人で良かったからな。それに色んなところを飛び回る予定だったし」


 そんな会話をしながら森を歩き続ける。


 そして………サイクロプスを見つけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る