第155話 別れ

 …聖国に向かい、セナさんと対面する。

 セナさんにも老化は見えるが…美魔女とも言えるような美しさを持っている。


 そんなセナさんだが…元帝国領をしっかり発展させ、宗教国家としての立場を上手く使って中立国家としての国の立場を築いたのだ。

 …俺的には凄いって事しか分からん。他国の侵略がどうこう〜とか、敵対関係が〜とか色々あるだろうが…うん、国の内情に関しては全く分からん。


 そんな聖国だが、四神教にて崇められてる4体にくわて罪銀龍も崇める存在として世に広め始めたらしい。しかも、あの邪龍との戦いをかなり近くで見た王国民がもっぱら話題の中心にしてる事もあって話題の拡大速度が速いのだとか。


 …まぁ、別に行動制限させられるわけでも無いからそこら辺は自由にやってどうぞって思う。ステータスが元に戻ってもしばらくの間はリアと一緒に隠居生活するつもりだしな。


 そんな感じで発展した聖国で、例の立ち入り禁止区域でまた何十年も過ごす。

 …どんどんと俺の時間感覚が長命種よりになっている気がする。数年経過して「そっか…」程度にしか思わなくなってる。どんどん人から離れた存在になっている証拠かな。


 セナさんが寿命に近づいた頃には、聖国のトップが変わり、セナさんは隠居生活を送っていた。

 だからセナさんの弔いも葬儀も非常に小規模で行われた。


 …セナさんは言わば聖国の顔とも言える存在だ。セナさんは自身の立場を理解して、訃報を流すと国に混乱が起きると分かってたのだろう。

 ゆっくりと…静かに親しい人のみを集めて葬儀が行われたのだ。


 …俺は、ソルの時と同じ様に未練値を抜き取り、呪いまじないを掛けて輪廻へと送り出す。

 今回は俺は司祭をしない。現教皇であり、聖女ちゃんであるセナさんの養子の子が執り行った。


 まぁ、聖女ちゃんって言っても称号の【聖女の魂】を持つ者は世界に1人のみだから役割の名称だけって感じで正真正銘の聖女では無いが。




 そして他にも知人の葬儀に参加し、弔った。


 ルミナ・アンブラルは王国の魔法部隊の育成をしていたが…衰えも出てきた事で退職し、貴族の別邸でゆっくりと息を引き取った。


 フェア・リオンは元帝国領の、元帝都の位置に立てられた屋敷にて老後生活を過ごしていた。

 だが、フェアに関しては俺は葬儀に参加してはいない。魂の弔いは別で秘密裏にやっておいたが…国を滅ぼした俺とリアが参加するのもおかしな話だろう。

 …以前、弔いの話をした時もあんまり良い反応では無かったからな。



 そして…最後に残ったのが、レティ………レティシアだ。


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 レティはエルフだった。まぁ、以前会った時に隠蔽を看破してたから分かってはいたが、長命種なのだ。


 そんなレティは、今現在エルフの国で冒険者生活をしている。冒険者ランクはまさかの個人でA。

 Sランク級の実力を持つとされているフェアやルミナに鍛えられた事もあって何気に人間基準ならば個人でもかなり強いのだ。


 レティとシィとスゥを合わせたり、一緒に冒険してるところを眺めながら俺は思う。

 …レティは、別れが悲しくないのだろうかと。


「…いえ、勿論悲しい物は悲しいですよ。ですけど…それは長命なエルフだと必ず経験する物ですし、この国を出るエルフは別れの悲しみを知る覚悟をして旅に出ますから。


 …でも、さまざまな出会いがあってこその人生なんです。フェアさんやルミナさんとの一生の別れも、人生を彩る一つの感情ですから。シィさんやスゥさんも私より先に亡くなってしまうでしょうが…私はそれを覚悟してなお、今楽しく過ごしてますから」


 …人生を彩る一つの感情、か。確かに悲しみもまた一つの色だ。

 それを覚悟して、受け止めれるからこそこうやって楽しくレティは過ごせているのだろう。


「あっ、二人が呼んでますね…どうやら良い依頼が見つかったみたいです。それじゃあ行ってきますね!」


 そうしてシィとスゥの所に駆けていくレティ。長命種故か、特に見た目もそこまで変わってない事もあって駆けていく姿は小動物系。

 …レティは寿命が近くなっても小動物系のままなのだろうか。



 そんな日々を送り………シィとスゥの寿命がやってきた。

 俺を連れたシィとスゥはとある場所に来た。それはソルの墓の前だ。


「ゼノさん。私達にも…お義父さんと同じ葬式をしてくれる?それと、お義父さんの横にシィと私の墓を建てて欲しいの」


 それは良いが…ソルに報告しないとな。


 なぁ、ソルのおっちゃん…結局、あんたの娘であるシィは良い夫を見つけなかったよ。

 ………良い嫁は捕まえたらしいけどな。


 そう、実はシィとスゥは結婚してたのだ。もう結婚当初とかラブラブっぷりが凄かった。ちょっと口から砂糖を生成出来そうなくらいに。

 シィは積極的にスゥにイチャ甘するし、スゥはそれをニッコニコになりながら受け止めてシィを甘やかすし。


 それは今になっても健在で、シィはスゥに寄りかかってジッと目を瞑っている。


 そんな二人の要望通りに、寿命が来るまで見届けて、弔いをして呪いまじないを掛ける。そして最後まで葬儀を行い、ソルの横にシィとスゥの墓を建てる。


 ………最初に銀猫亭で出会った時はまだまだ幼げがあり、差別してくる人族を恐れてた子猫な獣人だったのに。今ではレティと合わせてS級とも呼ばれた立派な猫獣人として名を残し…寿命を全うして輪廻へと帰った。


 …なんとも、時の流れを感じるものだ。


 来世の幸福を祈り、墓の前から立ち去る。


『………ゼノ』

「…大丈夫。ただ、寿命の違いを実感してるだけだから」


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