第152話 お別れ
………長い夢を見た。
俺が邪龍となり、あらゆる魔物を喰らい尽くし、人の街も飲み込み…そしてフィリアさんやセシリアさんすらも喰らう夢を。
…大丈夫、あれは俺じゃない。俺は【ゼノ・エルシオン】、リアの番だ。
邪龍の【ゼノ・ファントムブラック】じゃない。この夢を見たのはおそらく経験値と一緒に一部の記憶も取り込んでしまったからだろう。
「ん…起きた?」
『リア…持ち直したのか?』
「ん、ゼノのおかげ…ほんと、無茶をする。でもありがと」
『まぁ、神格者としての責務もあるしな。世界を守るってのは難しいなぁ』
「………あれは例外だから。でもそんな例外と戦わせるハメに…ほんと、ゴメン」
『良いって、俺が自分からやった事なんだから。それに俺の神格者になった理由はリアを支えたいからだ…ちゃんと、支えれただろ?』
そう言うとリアはふふっと笑ってくれた。良かった…心は随分と持ち直してるみたいだ。まだ不調っぽいからそこは俺がカバーすれば良いだろう。
ところで、だ。
『なぁリアさんや…なぜ俺はリアさんの中に居るんだい?』
「ん、保護」
『…一切身動きできないんだが』
「…保護」
『……魂の監禁じゃなく?』
「ん…守る為。これは保護」
『……そうですかい』
まぁ、流石にこんなステータスでうろつく気はないから良いんだけども。
技の反動でステータスが幼龍時代に戻るとは思わなかった。これが元に戻るには…数百年掛けてじっくりと休養するしかないっぽい。リアであってもお手上げなのだとか。
これはしょうがない。身に余る能力を行使するだけに飽き足らず、更にバフを盛りまくって技を行使したのだから反動が少ないわけがないのだ。
とは言え時間さえ掛ければステータスは元に戻る。正直永久的なステータスダウンを覚悟していた身からのすると一時的なダウンだけで済んだ今回は運が良いと思う。
『…リア』
「ん…ゼノは立派。何も出来なかった私よりも、ずっと……」
『そうか…』
「ゼノは私の隣に立ちたいってずっと思ってるけど…もう既にゼノは私の隣を歩いてる。私に足りない部分を補ってくれる
どうやらリアは俺の答えをしっかりと聞いてたらしい。
リアは隣に立てれてるとは言ったが、今の俺は弱体化して擬似幼龍になってる。ステータス上で言うなら月とスッポンどころかアメーバとブラックホールレベルで違う。
…まぁ、ステータスが元に戻るまでリアは離してくれなさそうだしリアとイチャイチャしながら時が過ぎるのを待とうか。
俺が今使えるスキルって俺がこの世界に生まれ落ちた時と同じスキルしか使えない訳だしな。
『………私達がいるの、忘れてない?』
『「あっ…」』
『…他人のイチャイチャを見るのって結構気まずいんだけど』
「…んー…もうちょっとの辛抱?」
『うへぇ…リファル〜…』
…これで、ようやく一息がつけそうだ。神格者全員と会っているし、排除対象ももう居ない。あとはゆっくりとしながらポツポツと残ってるやらないといけない事を消化していこう。
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【数年後】
「…それじゃ、リアさんもゼノさんも…お元気で」
「ん、私達の世界の問題に付き合ってくれてありがと…今回は確実に貴女の世界に繋げるから」
『…リファル、協力ありがとうな』
『良いって事よ、レリアが望んだ事を叶えるのが俺の存在意義でもあるしな。むしろ自分以外の力を操るだなんて貴重な体験をするとは思わなかったな』
リアの身体を通して見る視界の先には異世界へと繋がるポータルがある。そのポータルの奥の景色はこの世界には無さそうな学園が映っている。
…そう、レリアとリファルがこの世界を去るのだ。
「…うん、ちゃんと貴女の世界のはず。確認して」
「学園に…私の屋敷。あっ私の知ってる子も居る!大丈夫、同じ世界だよ!」
「良かった…それで、この世界に残した物はない?このポータルを通ったら…もう戻ってこれないけど」
「んーと…うん、大丈夫そう。リファルは居るし、気がついた時には特に物なんて持ってなかったし。
それよりも…ねぇ、リアさん。私達の世界に一緒に来れないの?」
「…それは無理。私はこの世界を見捨てる事も、立ち去る事も出来ないから」
「まぁ、分かってた。言ってみただけっ!それじゃ、いつか会えるか分からないけど…またね〜、さようならっ!」
「ん、さようなら」
リファルの魂を身に宿したレリアがポータルを通って行く。そしてレリアがポータルの中に入って姿が掻き消える…これで、元の世界に帰って行ったのだろう。
少し…寂しくなるな。
「…私よりもレリアの方が良かった?」
『そんなわけない。いつも言ってるだろ?俺はリア一筋だって』
「…ん」
ポータルが閉じて、完全にレリア達の世界との繋がりが消える。
それを見届けて、リアは俺達の家の中へと転移する。
「…ゼノ。出てきて大丈夫」
「よいしょっと…んーっ!久しぶりに身体を動かした気がする」
家の中に転移したリアの身体から魂を出して、リアが創った俺の身体に入る。自分の身体じゃないはずなのに自分の身体のように一切違和感がないのは流石リアと言うか。
「ん、家の中なら絶対に安全…外に出たらダメ」
「それは軟禁って言うんじゃ…」
「…保護」
「保護なのね…」
俺だって死にたくないから外には出ないけどね。ステータスが全然戻ってなくて弱々だし。大人しくリアに従って養われとこうか。
「ん、任せて。ゼノの全てをお世話する」
「…そこまでは言ってないからな?」
動けるのに全て世話されるのは流石にお断りさせて頂こう…
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