第150話 神滅戦・終
転移し、邪龍の姿をしっかりと見た時に邪龍はセシリアさんの防御を崩そうとしている所だった。
しかもいくらセシリアさんとは言え、邪龍とのステータス差は大きく、ほんの数秒で突破されそうだった。
(…チッ!リファル、結界で時間稼ぎをしてくれ)
リファルが結界でセシリアさん達を守っているうちに、俺は人化してセシリアさん達の元へと赴く。
『世界の理へ要請!神格者達の一時的な魂の吸収の許可を!』
【…申請を確認、許可します。なお、魂の吸収に伴う負担軽減の為に神格者達の魂を一時的に休眠状態へと移行させます。
………後に謝罪してください】
世界の理によって眠る事となった神格者達の魂を取り込む。これで神格者を邪龍が喰らう場合は俺を殺さなくてはならなくなったのだ。
そして邪龍の目的がわかった…それは神格者を喰らう事だ。
人間を襲おうとしたりしてたのは俺が人間たちを守ろうとしたから陽動として使えると思ったのだろう、人間の所を大惨事にしてる間に神格者を喰らって更なる力を得ようとしてたのが分かった。
…まだ神格者が集まってて良かった。一括で魂を保護出来たからスムーズに戦える。
そして魂を取り込んだ俺を見た邪龍は形態を変えるらしく、一度離れて咆哮を上げる。
発達していた前脚は平均的な発達具合に戻り、翼も龍種として一般的な翼になる。
…だが、首と頭が増えた。数は合計3、もしそれぞれの頭が思考できるのならば厄介だ…リファルと協力してて分かるが、並列思考って言うのは非常に便利かつ強いのだ。
(…リファル、此処なら被害なんて考えなくて良い。戦ってくれるか?)
『良いぞ。レリアも喰おうとしたんだ、確実に滅ぼしてやる』
なんというか…レリアの為ならリファルは世界を敵に回しそうな感じがする。
だが戦意がたっぷりなのはありがたい。俺はセシリアさんのスキルである分体の生成と俺の創造技術、リリアさんの制作の力を使って今の俺とほぼ同じスペックの分身を創り出し、そこにリファルを送り出す。
スペックで違う点と言えば…リア由来の権限と俺由来の崩壊関連の力が抜けてるくらいだろうか?まぁ、それ以外はほぼ同じだから俺がもう一人居る感じだが。
分身の姿は【崩壊龍・罪銀】の時とほぼ同じだ。やはり戦闘となるならこの骨格の方が適している。
俺自身は人型のままだ。龍二体で戦ったら巨体のせいで邪魔になる可能性が高いのだ…波長が合うとは思って居るが、会ってからそこまで時間が経ってないのに連携なんざ出来るわけがないしな。
俺はリアのスキルに収納してあった刀を取り出す。そう、リアの身体に傷をつける事が出来る俺とリリアさん合作のやり過ぎ集中錬成武器だ。
これに制作者権限とリアの権限を使ってさらに改造を施す…この刀なら、幾ら崩壊の力を込めようと壊れないしな。
そして正真正銘の神刀とも呼べるであろう性能の刀を持ち、邪龍を見据える。リファルはこの大陸を包む様に結界を貼ったらしく、邪龍もそう簡単に逃げれなくなっている。
【疑似根源種へ警告、許容値以上のステータスを保有しています。
魂の消耗に加え一定年数の間、ステータス低下が発生致します。これらの解決は淵源種へ頼る事を推奨致します】
…そりゃそうか。正直言ってリアのステータスだけでも俺にはギリギリだったのだろう。そこに他の神格者全員と神格者と同格と言っても良い程の能力を持つリリアさんも取り込んだのだ。………たかが一神格者の身体と魂で耐えれるはずがない。
「………まるでラスボス戦終盤で強力なバフが掛けられるイベント戦みたいだな」
でも、だからこそ神格者に等しきコイツを滅ぼす事が出来る。リアが動けない今、神格者も太刀打ち出来ない邪龍を滅ぼす役目は俺にある。
リアを支えるんだろう?そのために神格者になったんだろう?なら…その誓いを果たすためにも倒さなくてはな。
一気に踏み込み、空中に崩壊の力を展開して更にその衝撃と代償ありレベルのステータスを利用して猛速度で近づき、一閃。
ボトリ…と一つの首が落ちる。
切れ味は良好、ステータスも問題無い。だがこの一撃だけでも代償のせいで身体に痛みが発生する。それで邪龍さんや、俺ばっかり見てて大丈夫かい?
首を落とした俺に攻撃しようとした邪龍はリファルの爪撃によって体制が崩れる。そしてリファルに対してブレスを吐こうとした首を俺が切り落とし、首が一本となる。
リファルがタンクをして、俺がアタッカーをする。なんともバランスが良いと思う。もし俺が龍形態だと二人ともタンクになるだろうし。
2本の首を切り落とされた邪龍は一旦引いて驚異的な再生速度で首が再生する。
…再生だけに飽き足らず、首の本数も増えた。現在5本。
5本の首のうち、3本の首でブレスを吐こうとする邪龍に対してリファルは近づき、2本の首を翼脚で掴んで力任せにへし折り、残るブレスを吐こうとする首に噛みついて阻止する。
そこに残り2本の首がリファルに噛みつこうとしてるところに俺が一本切り落とし、もう一本は蹴り飛ばしてリファルから遠ざける。そこに自傷覚悟で邪龍が天雷を落としてくるが、その天雷すら切り伏せる。
…このまま戦い続けると俺自身が自滅するかもしれないな。
邪龍は勝てないと見込んだのか逃げてこちらに大量の魔法などの発射物を飛ばして近付くのを妨害してくる。
………逃すわけがない。神格者としての責務もあるが、リアを安心させる為にも必ず滅ぼす。
リファルが発射物に当たりながらも抑え付け、まるで怪獣大戦争の様な光景を見ながら俺は刀に贖罪氷を纏わせる。
「吉星・因果変革・攻防変換・崩壊化破壊術・罪銀龍武芸百般…」
【警告、ステータスの許容値を超えています】
「判決の理『聖徳/原罪』・神龍武技…」
【魂の消耗に加え…】
「アルカナ、Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅹ・Ⅺ・XⅢ・ⅩⅨ・XX………XXI、正」
【一定年数の大幅なステータスダウンが予想されます】
邪龍の再生力は異常だ。どれだけ切り刻もうとも、どれだけ凶星を当てようとも…耐えて回復するのだ。
Q.
再生力がエグすぎてどれだけ殴っても倒せない敵にはどうすれば良い?
A.
再生が無意味なほど火力で即殺せよ。
【警告、実行しようとしている技は魂の許容を著しく超えています。使用の中断を推奨します】
リアはこんな事を尋ねてきたことがある。
『私は生と死を操ってる訳じゃない。これは霊龍の名残り。
本当に私が司ってる物は………【
『………でも、私が司る始まりと終わりの中に変化は存在しない。いつも、同じ事をして同じ景色を見るだけ。でも、だからこそイレギュラーは苦手。
ねぇ、異分子のゼノ。なんで私は…苦手なイレギュラーである貴方を好きになったのかな』
………以前は答えれなかったリアの言葉。これは俺が神格者になる前にリアに尋ねられた言葉だ。
この時は、わからなかった。なんとなく、愛してるからとしか言えなかった…リアはそれで満足したっぽいが。
だけど、改めて答えよう。
「俺は…異世界の、この世界にとってのイレギュラーだからこそ変革を齎す。
リアが始まりと終わりを司るなら、俺はリアが知らない過程の中で起きる変化を司ればいい…
リアがイレギュラーに弱いならば、イレギュラーである俺がそこを補えば良い。それでこそパートナーって物だ。
結局…何故、リアが俺を好きになったか?
………生物っていうのは、自分に無いものを求めるからだろうよ」
もしかしたらこの世界はこの邪龍に滅ぼされ、再起したリアによって邪龍は死んで…リアのみが生き残ってる世界になってたかもしれない。
もしかしたらこの世界は崩壊の力に飲まれてまともに生きれる環境…いや、世界ごと崩壊したかもしれない。
もしかしたら、リアが孤独に耐えれずに世界を破壊してリア自身も消滅してたかもしれない。
そんな未来にメスを入れたのはこの俺だ。イレギュラーであるからこそ、そんな未来を断ち切らせて頂こう…それが神格者としての責務であり、リアの隣に立ちたい想いを持つ俺のやりたい事なのだから。
『…ゼノ?何してるの⁉︎なんでそんなに魂が消耗して………とりあえず今すぐ再生して…』
「リア。俺は今…リアの隣に立ててるだろうな?」
『ゼノっ!この邪龍を討ち滅ぼせ!』
争いに打ち勝ち、押さえつけてた邪龍をリファルはこちらに投げてくる。
そして俺はその邪龍の魂………邪龍:ゼノ・ファントムブラックの魂を切る。
『待ってゼノ!そんな技使ったら貴方の魂が——』
【神滅ノ太刀】
…悪なる神格を滅ぼし、世界の未来に改革を与えよ。
そして技の反動で意識を手放すのだった。
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世界の理
…緊急排除対象である、【ゼノ・ファントムブラック】の消滅を確認。
ゼノ・エルシオンの甚大な魂の消耗を確認、淵源種は即刻治療に掛かってください。
推奨、ゼノ・エルシオンのステータス低下を確認。保護の為に淵源種の中に取り込む事を推奨致します。
各神格者の魂を元の器へと移行したのち、休止状態を解除します。………クリア。
これよりイレギュラーによって世界に及ぼした影響の検査を行います。
影響………無し。
通常運転へと戻ります。各神格者の皆さん、お疲れ様でした。
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ゼノ君の大怪我の原因
【反動ダメージ】
なんか書いてるうちにこうなっちゃった…あと若干盛り上がりに欠ける気がしたけど許して。自分でも神滅戦はなんか上手く書けた気がしない。
あと…ゼノ君ちょっと魂を犠牲にしすぎじゃないかい?
ちなみに邪龍がリアを喰らった場合、マジで手が負えなくなります。力量差はリアの方が上なんですけどね…
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