第149話 神滅戦・中

 転移してすぐに人間に襲い掛かろうとしている邪龍に体当たりをし、吹っ飛ばす。

 転移した先はセレスの街の人々が避難したちょっとした草原であり、多くの避難民が集まっている場所だ。………出来るだけ多くの生命を喰らおうとでもしたのだろうか。


(リファル、人間に結界を)

『…防御は?』

(問題無い。基本回避する)


 翼を翼脚に変化させ、邪龍へと襲い掛かる。邪龍は発達した前脚で殴り掛かってくるが、それを翼脚で受け止めて力任せに振り払う。

 そして若干体制が崩れた邪龍に向かってもう片方の翼脚を叩き付ける。


『ガァ…!グアァァァァ』


 反撃に放ってきたブレスを避け、体制を立て直そうとしている邪龍に向かって凶星を降らす…のではなく、降らした凶星を翼脚で掴んで思いっきりぶん投げる。


 淵源種に近しいステータスでの投擲だ、音速程度は確実に超えた凶星が邪龍の横っ腹にぶち当たり派手に吹き飛ぶ。

 そして追撃を入れる為に転移で接近した途端、目の前に黒色の槍があって俺に向かって発射された。


『………防御は必要無いんじゃなかったか?』

(すまん、普通に助かった)


 即座にリファルが結界を貼ってくれないと危なかった…下手したら俺の脳天に槍が突き刺さってた可能性があった。

 恐らく死にはしないだろうが確実に怯むだろうし、その隙に邪龍が猛攻を仕掛けてくる可能性もあった。


 だが、防御してくれた事でその心配も無い。邪龍の動きを警戒してると、邪龍は突如として王都方面へと飛び去っていった。

 喰らうことに貪欲な意思を見せていた邪龍が逃げるのは流石に予想外であり、少し思考停止してしまったが即座に追いかける為に俺も空を飛ぶ。


 そして空を飛んで逃げる邪龍を追いかける俺と言う構図で空中戦が始まるのであった。


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 邪龍は様々な属性魔法を放って牽制してくるが、それらの魔法をひたすらに避けながらこちらもこちらで崩壊ブレスを放ちながら追撃を試みる…だが全部避けられている。


 所々で結構人の村や街の上を飛んだりしているが、リファルがそこら辺への被害が出ないように防御してくれているから俺は存分に戦えている。…リファルの存在がありがた過ぎる、これからも長い事付き合っていきたいと思える程に。


 そしてこの空中戦だが、若干俺の方が飛翔速度が速い。つまり時々ではあるが肉薄出来るのだ。


 なんとか横並びに並走出来次第、俺は前脚や後脚を叩きつけたりして見ているのだが相手は発達した前脚が自由なだけあって抵抗が激しく、蹴落としたりする事が出来そうにない。


 そんな空中戦の中で、王都の上空へと差し掛かった途端に邪龍は急降下したので俺も追いかけて王都への侵入を阻む為にも邪龍に触れて転移。

 転移先は人が居らず、広大な平原が広がっている元帝国領だ。



 そして転移してすぐに翼脚の爪で爪撃を繰り出す。だが邪龍はそれに反応して即座に前脚で応戦、「ガギイィン!」と言うまるで金属同士が激しくぶつかり合う様な音を立てながらお互いの爪を弾く。


『グルゥァッ!』

『転移⁉︎いや、傲慢の権能か!』


 邪龍の姿が消えたかと思えば、俺の真上から邪龍の姿が現れる。真上からの落下も利用して前脚を叩きつけてくる邪龍の攻撃を翼脚で防ぐ。

 ギギ…ガリッ…と俺の翼脚に生えた鱗や外殻が音を鳴らすのを感じながらも邪龍に向かって崩壊ブレスを放つ。


 だが、攻撃中であるはずの邪龍は前脚に力を込めたかと思えば俺を足場にでもするかの様にして跳ねるように退避してブレスを避ける。


 ………明らかにフィジカルが増している。

 あのドロドロの液体を纏ってる時は防御力と再生力とスリップダメージが主体の姿であるならば、今の前脚が非常に発達した姿は物理攻撃が主体の回避型の形態だ。コレはこれで戦いづらい…この形態の邪龍と戦ってる時はまるで兎などの身軽い魔物と戦ってるかの様な感じに思える。


 そしてそんな感じの身軽さ故に、恐らく発射系のスキルはほぼ全て避けられるだろう。一応牽制がてらに罪氷や崩壊ブレスを放ってはいるが全部避けているし、その避けた先での俺の攻撃もしっかり対処している。


 とりあえず邪龍にダメージを与える為にも近付こうと思った途端、また邪龍が空を飛んで逃げていった。

 その方向は砂漠…いや、火山方面だ。



 砂嵐が吹く中、空中戦を繰り広げる。まるで弾幕ゲームの様に避けながらもこちらも攻撃をしているが…全くもって有効打になりそうにない。どうやら今の形態は空中での機動力もよろしいようで回避力が優秀過ぎる。


 邪龍に追いつき、張り付いて攻撃をするともつれあうように砂漠へと邪龍と一緒に墜落していく。だが、そんな邪龍は墜落中に黒い霧に包まれて消えてしまった。


 …また転移か。

 俺も追いかけるために転移する。行き先は別大陸だ。

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