第146話 緊急事態、そして虚ろになるリア

「それじゃあ…準備は良い?」

「はい、リファル共々大丈夫です!」


 …これで初めての神格者としての仕事が終わる訳だ。この経験で更に強くなれたかと言えば、別にそこまでなのだが…まぁそれはゆっくりと成長していけば良い。俺は神格者としてはまだまだなのだから。


 ふと、妙な予感がした。前世風で言うならば…フラグがたった様に思えたのだ。

 即座に吉凶ナル星ノ導を併用して未来視をして…リアが別世界への道を開けてはダメという事が分かった。


「リアっ!待っ———チッ!」


 警告が遅れ、リアが別世界への道を開いてしまった。即座にリアとレリアに触れ、瞬間移動で退避する…良かった、罪域化を切ってなくて。


 別世界への道…仮名称としてポータルと飛ぶが、そのポータルから一つのどデカい龍の頭が現れ、目の前に居た存在を喰らおうとする。

 そう…リアとレリアを喰おうとしたのだ。リアとレリアは放心状態…だけど護るためにも二人の前に出る。


『グルォ…ゴァ?』


 ゆっくりとポータルから出てきたその龍はかなりの巨体。俺の龍型の時の姿よりも二回りほど大きい。

 その龍はゆっくりと空を見上げると…とある方向へと飛び去っていった。


「…マジか。あれ、ヤバくないか?」


 流石に異質だった故に鑑定した結果…正直言って俺の手に負えないどころか、リアじゃないとどうしようもない存在だと認識してしまった。


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 種族:聖銀喰ライ安寧壊ス災禍ノ到来

 名前:??・ファントムブラック

 lv:測定不能

 体力:Ω/Ω

 魔力:AΩ/AΩ

 攻撃力:— (Ω)

 防御力:— (Ω)

 魔法抵抗力:AΩ


【スキル】

 邪龍魂術

 聖銀龍特攻lv0

 世界樹特攻lv0

 淵源龍特攻lv9

 大罪抵抗貫通


【耐性】

 美徳無効  聖属性無効

 全属性耐性lv100

 物理耐性lv0 魔法耐性lv0 霊化耐性lv0

 支配無効 状態異常無効 

 魂縛無効 

 精神異常耐性・微(固定)


【称号】

 異世界の魂 突然変異

 不老種 叛逆者 邪龍

 神殺し ステータス喰らい

 聖銀喰ラウ亜神 安寧ノ破壊者

 穢レシ魂 悪神格者 

 淵源/理ニ楯突ク者


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 明らかにやばい…この前リアのステータスの一部を見せてもらった事があるのだが、リアのステータスはオールAΩ。つまりAΩは最大値と思っても良い。

 そんなAΩの値を持つステータスを持ってるかつ、称号と名前に表記された【聖銀喰ラウ】と言う言葉…別世界だから関係無いはずだがフィリアさんが喰われたかの様な表記だ。


「リアっ!どうす…る………」


「ごめんなさい…ごめんなさい…私が、私がこの世界に異分子をっ!わた、私が…?

 あ………あぁ、アアァァァァァアアアアッ!」

「ッ!」


 リアの心が…危険な状態になっている。

 レリア達は放心してるからまだ大丈夫だが、問題はリアだ。


 とりあえずリアを強く抱きしめて、ゆっくりと優しく背中を撫でる。だが、リアが叫ぶのは止まらない。


 この症状を…俺は知っている。以前、と言うか夫婦生活を送ってた時に一度リアはこの状態になった。

 その時リアは…流産したのだ。


 リアは恐らく完璧な【神】としてこの世界で存在している。また、その存在である為の実力も持っており未来視も出来る為よっぽどの事がなければヘマなんてしないし、予想外の事態なんて起こさない。


 例え起きたとしても、それは他者が要因だからリアが解決して終わりだ。だから今までは特にこんな事になる事は無かった。



 ………だが、もしリア自身が原因で取り返しのつかない事を起こしてしまったら。リアが原因で予想外の大変な事態を起こしてしまったら。


 そんな事態に慣れていないし、そう言うことへの耐性が出来てないリアは自責して発狂し始めるのだ。

 そしてある程度発狂したらひたすら曇った瞳で「ごめんなさい…」と虚ろに呟き続けるのだ。


 前世の夫婦生活では半年以上常にリアを抱きしめ続けて慰め、じっくりと愛した事でなんとか絶不調ながらも動ける程度に回復した。だが…流石に今回はアイツを野放しにするのはヤバい。


 判決の理を通じて、世界の理に連絡を取る。


【…承認。淵源種の思考停止を確認。指揮権を世界の理へと写します。

 最優先事項:フィリア・スノウライトをセシリア・グロウの元へと転移させます。

 フィリア・スノウライトとセシリア・グロウは防衛に徹する様に】


 …これで良し。なんとか耐えれれば良いのだが…あのステータスだ、セシリアさんの防御すらも突破するかもしれない。


「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」


 リアは…行動が出来るような精神状態ではない。アレに対抗出来るのは本当にリアしか居ないだろうに。


「ね…ねぇ。あの龍…野放しにして大丈夫なの?私に憑依してたって邪龍よりよっぽどヤバそうだけど」

「ヤバそうなんて物じゃない…下手したら世界が終わる。なぁ、力を貸してくれないか?アレは俺の手にすら余る」

「世界が⁉︎なら絶対に貸すよ…終わっちゃったら帰るどころじゃ無いもん」


 了承を得たのでレリアとリファルの魂を取り込む。霊体化できずに魂が抜けてしまったレリアの身体はスキルで収納しておく。


 そして、今もなお虚ろな状態で呟いてるリアを見る。


「………すまん、独断で行動するぞ」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 リアに解釈違いを起こした方はごめんなさい。


 ですが、作者的にはリアも不完全な存在であってほしいんですよね。リアは淵源種っていう特殊な立場に立ってはいますが、あくまで神格者の枠組みであることには変わりないのです。


 完璧な存在と言うのは、本物の神だけでいいのです…不完全だからこその生物ですから。


 ついでに補足説明。リアは異分子…つまりは異世界の存在が関わる未来を未来視で見れなくなります。これはこの世界には本来居ない存在だったからですね。

 リアが流産したのも、邪龍を呼び込んでしまったのもこれが原因だったりします。

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