第143話 少女の奥義?とリアの頭痛の種

 速いし、力も強いし、遠慮が一切無い。


 俺が少女に抱いた感想はこんな感じだ。

 恐らく結界の様な物を展開してそれを足場にしたりしてるのだろう…空中で跳躍して立体的な戦闘を仕掛けてきてる。


 まぁしかし…不可解なのが何故龍人がここまでの力を持ってるのかって話だ。

 龍人は竜種に関係のある種族と言えど、【人種族】である事には変わりない。人間よりはマシとはいえ、種族値は魔物たちに比べれば断然に低い。


 にも関わらず、この少女は神格者と渡り合えるレベルの実力を持ってやがる。…おそらく原因は三つ目の悪影響を及ぼしてるであろう魂だ。


 俺がリアに憑依されてた時に一部リアのステータスが反映された時の様に、この少女自身のステータス以外のもう二つの魂のステータスが加算される事によって神格者に対抗出来るほどの力を得たと思われる。


 そしてそのステータスの大部分は三つ目の魂が原因だ。だからこそ少女自身もかなりの精神汚染を受けてるのだろう。正直不憫に思うし、助けたいとも思うが…どうしたものか。


 濁流の様に迫ってくる水属性魔法を全て凍らせ、罪化させる。そして出来た罪氷を少女に向けて発射させるがことごとく結界で防御されて有効打にはならない。


「アアァァァアアァッァアッァアアッ!」


 叫びながらも肉薄してくる少女。その目尻には涙が溜まっている。…一体、なんだってんだよ。俺はこの子を殺せば良いのか?それとも………


 救えば良いのか…?


 少女の持つ氷の剣を素手で掴み、その氷を罪の力で侵食していく。この少女は氷を操る事にたけてる様だが、あくまでただの氷に関してだ。罪氷は操れないから俺がこの戦闘で使うのは基本的に罪氷になる。


 そして氷の剣が完全に俺の支配下になった事で少女が持ってる氷の剣を変形させて氷の枷の様にする。

 これで近接はほぼ無効化…おっと危ない。自由な足で強烈な蹴りを放ってきたので怠惰の権能で威力軽減させて寛容の権能で衝撃を逸らす。

 …足癖の悪い子だな。


 蹴りを放ってきた足を掴み、ステータスに物を言わせて地面に向かって放り投げる。

 そして地面にめり込んだ少女を抑え付けて、無効化するが…とんでもない形相で睨んでくる。……おいコラ俺が少女を性的に襲う犯罪者みたいに見えるじゃねぇか。


 まぁ良い…さっさと終わらせればいい話だけ。右手で少女の両手を抑え込み、左手を霊体化させて少女の心臓辺りに腕を突っ込む。一応馬乗りになってるからあんまり抵抗出来ないとは思うが…滅茶苦茶暴れてくるから制御が難しい。


 だがなんとか三つ目の悪影響を及ぼしてるであろう魂を捉えて、排除しようと動いた瞬間…周囲が静電気で満ちたかの様にパチっ…ピリッと言う音が聞こえ始める。


 嫌な予感がして未来視を使うと…その予感は正しく、即座に回避行動をしようと動く。

 …が、回避行動に移るのを予想してたからか、腕を離した途端に俺の腕をがっしり掴んできた。そしてその少女の顔を見れば…ニィッと笑っていた。


「………死んじゃえっ」


 そして俺は龍の姿の俺でさえ容易に飲み込むであろう雷の柱に飲み込まれるのであった。


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 リア・エルシオンside


 少し離れた所で雷に柱が現れる。とんでもない衝撃が地面を伝っているし、おそらく地面が溶けるほどの熱量も含んでいるだろう。


 まぁ、そんなことはどうでも良い。あの程度の攻撃なんて飛んできて当然な相手だし。


 それよりも今回の排除対象だ。見た目は少女…だが魂は三つ存在してる変な存在。

 それぞれ少女の魂・少女と強い繋がりを持った竜種の魂・邪龍の魂だ。おそらく少女の身体が竜種にとって最適な器であり、最上位進化種に近い邪落竜種が少女の身体に入り込んだと思われる。


 そして…あの排除対象である少女の記録が、世界の理に無い。突如として現れ、その時には魔族が作った牢屋に入ってたとされる。

 そしてその魂は別世界の物。


 …いつの間にこの世界に紛れ込んだ?


「…でもこれは行幸、不穏分子を見つけれた」


 おそらく魔族が召喚を行ったのだろう。ゼノの様に世界に迷い込んだ異世界の魂とは違う…この世界に無理矢理呼ばれた子だ。まさかまたこんな事が起きるなんて…崩壊エネルギーの問題が終わったら次は召喚?勘弁して欲しい。


「本来は排除対象ごと排除すべき。だけど…」


 遥か昔にもこの様な事は起きた。その時の原因は人間であり、召喚に関わった文明ごと滅ぼしたけど…結局召喚された者はこの世界にバグを残した。崩壊エネルギーと言うバグを。


 …今回もそうなる前に排除してバグを撤去しなきゃなのだが、あの排除対象が魂ごと殺したとしても世界にバグが残る。もしバグを残さない様にするならば召喚された者を元の世界に戻すしかない。


 しかも今回は少女だけでなくその少女と繋がりが強い竜種すらも召喚者であると言う事だ。もし元の世界に返せなければどんなバグが起きるかわからない。


「………はぁ」


 とりあえずあの邪龍の魂を消滅させる様に指示を出す。ついでに少女と少女に連なる竜種の魂を殺す事は禁止として。

 あの邪龍は問題ない…この世界で生まれた邪龍が少女の身体に憑依してるだけだから。ゼノが邪龍の魂を消滅させてる間に私は私でやることがある。


「………世界の理の記録を参照して元の世界を特定しないと」


 世界によっては送り返すことができる。もしゼノと同じ世界なら送り返せないが。

 どうか送り返せる世界であります様に…


 それと…これが終わったら魔族を滅ぼさないと。こんな存在を生み出した魔族を見逃す事は出来ないのだから。

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