第142話 排除対象:レリア・リファル

 レリア・リファルside



 なんで…私はここに居るんだろう。

 気付けば知らない場所に居た。灰色の石レンガに囲まれ、鉄格子で入り口が塞がれた…いわゆる牢獄だ。


 対面の牢屋にはボロボロになって動く気力すら無いように見える魔物…?が居る。

 もしかして…次は私の番なの?目の前に歪曲したツノと不吉な印象を持つ模様が浮かんだ翼が生えた人が歩いてきた。


「神を恨むんだな」


 そんな言葉をはいた人は、突如として私に火属性の魔法を放ってきた。

 咄嗟に氷魔法で壁を作り、対処する…良かった、魔法は使えるみたい。


「…生意気な。まぁいい…そうだ、お前に面白い事実を教えてやろう………お前の相棒と言える存在は、ここには居ない」


 …ぇ?リファルが、居ないの…?いや、それよりもこの人はリファルが何処にいるか知ってるの…?


「お前の相棒はな…この世界の神たちによって捕えられている。取り返したいならば…神への恨みを積もらせて殺せ」


 リファルが…捕えられている………?神?神って誰…?

 でも…リファルが害されるなら容赦はしない。私の一番大切な存在を害すならば…神だって殺してみせる。


「………此処から出して」

「ふむ、そのまま行動しても太刀打ち出来んぞ?」

「…知らない。私はリファルを助ける為になんでもする」

「………フッ、そうか。ならば神に抵抗できる力を得れる場所に案内してやろう」


 ………待っててリファル。絶対に見つけて、助け出して見せる。



 *それから少し経って。


 …私は、何をしてるんだっけ。


 そうだ、リファル。リファルを探さなきゃ。神…神?カミを殺せ…そうだ、神を殺せッ!


「リファルを…返して。リファルを…カエセェッ!」


 上空から降ってくる神の攻撃に対抗して攻撃する。


 ガギィンッ!と言う音ともに両者の攻撃が弾き合い、一旦神との距離が出来る。

 黒い…龍。威圧感はあるけどそれは神なら当然の事。コイツが、リファルを…あァ、許さない。


 ゼッタいに、リファルを救いダしてみセる…ッ!


 --------------


「リファルを…返セっ!」


 銀髪の髪を携えた少女の髪が金色に変わったかと思えば、そんな事を叫びながら俺に突撃してくる。

 リファルって誰だ…?相当大切な存在っぽそうだが…俺が知らない存在だ。


 少女は氷の剣を生み出して俺に切り掛かってくる。その剣に爪を当てて弾くと、体格差からか少女は大きく背後へと飛んでいく。

 そしてその間を埋めるかの様に周りに居た魔族どもが一斉に攻撃してきた。


【ゼノ・エルシオンへ通達。今回の排除対象は魔族によって生み出された事を確認。規定により、魔族の殲滅を許可する】


『ゴアアアアァァァァァァアアアア』


 その言葉を聞き、俺は咆哮と共に全方位に崩壊の力を放出させる。崩壊の力の奔流に当てられた魔族達は身体が塵になるかの様に消し飛び、絶命する。

 しかもかなりの広範囲に放出したからか、これだけで万はくだらないほどの魔族が消し飛んだはずだ。


 少女は無傷…何か守る力でもあるのだろうか。


「アハ…アハハッ…そっかぁ。これ破壊の性質だネぇ?…それはリファルのッ!」


 とんでもない怒りの感情が見えた。そしてとんでもない猛攻を仕掛けてくる。一体リファルって存在は誰なんだよ…!俺は知らねぇぞ。

 それに…この崩壊の力は俺の力だっ!


 天から降らしてくる雷に崩壊の力をぶつけて霧散させ、接近してくる少女に爪撃を当てる。だが少女に当たる前に結界の様な物で阻まれる…しかも妙に硬い。

 硬さで言えばセシリアさんの結界ぐらいはありそうな気がするが…どうなってるんだ。


「………死んで」


 そして繰り出される氷で生み出された剣での攻撃が俺の脚に当たる。

 俺は氷属性無効を持ってる。持ってるが…物理は無効ではない。


 ドゴッと言う音と共に俺の外殻が歪むのを感じて一旦距離を取る。勿論その隙を逃さんとばかりに攻めてくる少女だが、そこは崩壊の力を少女目掛けて放出し、吹き飛ばす。



 …そうだ、見た目は少女とはいえ神格者に排除する任務が来るほどの存在なのだ。変に油断するのはよろしくない。


 それに正直言って体格差があると戦いづらい。しかも相手は結界らしきものを生み出しているのだ…巨体だとその結界に阻まれる事が多いだろう。


(人型で…戦うか)


 初仕事は俺本来の姿である龍の姿で終わらせたかったが…流石に妥協なんざしてられない。龍の姿で戦いたかったから負けましたなんて…流石に恥が過ぎる。


 龍人の姿になって、少女見る。いまだに俺を親の仇かの様にとんでもない形相を浮かべながら俺を睨んでいる。


 ここで改めて少女の姿を確認する。見た目は銀色だった髪が金髪となっており、その長さは腰に届きそうなほどに長い。

 瞳も金色に輝いており、非常に殺意に満ちてる。

 そして…今の俺と同じ、龍人の様な姿をしている。龍の角に翼、そして尻尾。更に身体の一部に鱗が出ている。その姿は嫉妬の権能で無理矢理人化した時と酷似しているが恐らく違う。一見龍人に見えるがちょっと違うと言った感じだ。


「………シッ!」


 少女の姿が掻き消えると同時に、俺の左側からの「ガギィンッ!」と言う音が鳴り響く。

 …少女の氷の剣と俺も刀が打ち合わさった事で鳴り響いた音だ。大太刀は使わない…流石に相性が悪そうだ。


 こうして戦いは始まった。

 側から見れば龍人と龍人の争い…だが実態は神格の者とその神たちに敵対する少女の戦いである。

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