第138話海底、その更に下にある空間
ゆっくりと泳いでいるが、未だ陽の光が充分に届く程に浅い場所に俺は居る。水圧に関してだが、そもそも神格者の防御力の前には自然に発生する圧力などそこまで関係無い。むしろ浮力の方が邪魔だったりする。
現に俺は今現在、潜る速度が低下してきている。中々に浮力が邪魔だ…俺を押し上げようと働くのが非常にめんどくさい。
水中だから踏ん張る地面が無いし、泳ぐにしても身体が泳ぐ為の構造をしてないから非常に泳ぎづらい。もう霊体化しちゃえよって思う部分があるが…なんか水に負けた気分になる。
流石は母なる海…なんとも手強い。
でもまぁ、この程度の問題は簡単な解決法がある。そう、足場が無いなら足場を作れば良いじゃないか。
崩壊の力というのは空中だけでなく水中にも展開する事が出来る。俺に衝撃がある状態で展開すれば弾かれてしまって意味無いが、衝撃無しの状態で展開すれば俺が全力で蹴っても微動だにしない素晴らしい足場の完成だ。
いやまぁ、衝撃を利用して潜る事も出来るが…それは別にもう少し深くなってからで良いかなと思ってる。もうちょっとこの景色を堪能したいからね。
海の中と言うのは非常に綺麗だ。陽の光が差し込んで揺れる海藻は緑鮮やかで落ち着くし、透き通っている水の色も非常に俺好みな色をしている。
もっと深くへ潜れば陽の光は届かなくなり、それはさながらホラーゲームの舞台の様な暗さになるだろう。
そんな暗さになる前に、この明るい海中の景色を堪能しておきたいのだ。
『…綺麗?』
(綺麗だと思うけど…リアはそこまで綺麗だとは思わない?)
『………見慣れた景色』
(そりゃそうか…俺はあんまり海の中とかみた事なかったからなぁ)
『…ん、存分に世界を堪能して』
この光景を護るのも…神格者の仕事なんだろうな。
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海中の光景を楽しみ、近くを泳いでいた海鮮を生食で食べて楽しんだりしながらどんどん潜り、いつの間にかもう薄暗い場所へと俺は来ていた。
周りは薄暗く、闇に包まれている。かろうじて陽の光が届いているとはいえ、それは微量…夜とは比べ物にならないほどの暗さになっている海中を、俺は進んでいた。
とは言え俺は怠惰の権能による暗視がある為、普通に辺りは見渡せるし目を凝らす必要も無い。やはり怠惰の権能は便利だ…攻撃に転用する場合はサポート一辺倒になる権能だが、日常生活に関しての補助効果が非常に便利なのだ。
そんな感じで別に視界には問題ない俺だが…これ以上進むのは流石に浮力が邪魔すぎるって事で霊体化している。
いや、一応環境創造で海流を創ってその海流に乗って進んだりとか、俺自身を改変して水が生み出す圧力を受けない様にするとかの方法はあった。
あったが…別に永久魔力炉心があるのだから霊体化してたほうが手っ取り早いと言う話だ。
ここまで深くなってくると生物も少なくなり、海藻ぐらいしか見るものがなくなって見応えが無いからさっさと進んじゃえって思ってる部分もあるが。
ちなみに今現在、リアは…と言うかリアの魂は俺の魂に張り付いて寝ている。スヤッスヤである。
寝ていても魂制御で喰らう働きを一切起こさない様にしてるのは流石だが…こう、魂に直接触れられるってのは非常にこそばゆい。
いつも以上に…それこそ抱きついてる時よりもリアを非常に強く感じれて嬉しいは嬉しいのだが、こう、経験した事のない感覚が襲ってきてちょっと恥ずかしい。
…恥ずかしいはずだけど身体は非常に落ち着いている。まるで幾年も経験してきて、さもこれが当たり前かの様に。…何故?
そんな自分の身体に不思議に思っているうちに、ついに海底へと到達した。薄暗い海底での苔がびっしりと生えており、僅かな陽の光で光合成をして生きる逞しさを感じる所だが、霊印が刺す場所は更に下だ。
そして俺の真下には、苔が一切生えてないどデカい扉が設置されている。不動の扉だろうか?侵入者を拒む為に開かずの扉を設置した様にしか思えないのだが。
とは言えここで止まっていても何にもならないだろうから進むしかない…霊体だからスーッと扉をすり抜け、海底のさらに下へと進むのだった。
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海底のあの扉の先は長い長い、下へと続く穴だった。草も苔も生えていない岩肌剥き出しの穴を通って行き、遂にその縦穴を抜けたその先は………
光のある非常に広い空間だった。
その明るさは怠惰の権能による暗視を切っても余裕で辺りを見渡せる程であり、もはや海の浅い所と同じレベルだ。
辺りを見渡せば岩石によって構成された地形があり、植生も非常に豊かに見える。更にかなり遠くの方にデカい海蛇…だろうか?そんな奴が巻き付いた建物が見える。あの海蛇、下手したら王国の王都丸々一つ分埋まるほどの大きさをしてないだろうか。
浮力はどれくらいなのかと気になって実体化してみると、ゆっくりと身体が地面へ向かって沈んでいく。例えるなら超低重力の空間っぽさを感じる。
一応下向きの力は加わっているが、そこまで強くない的な…そんな感じ。
そしてゆっくりと沈んだ俺は、ついに地面へと足を付けるのであった。
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