第131話 畏れ
さて、銀猫亭の前に来たわけだが…懐かしの罪化道具もしっかり置いてある。流石に罪の力が切れててうごいてはないが、何処も壊れて無いのを見る限りしっかり役目を果たしたのだと思う。
ちなみに道具の隠蔽は切れていない。見つかったらヤバいのはわかってたから罪の力の残量が一定値以下になったら隠蔽に専念する様にしてたのだ。軽く十数年は持つ様に。
御役目を果たした罪化道具を回収し、分解する。昔の俺の素材が手に入った訳だが…別に上位種でもない素材が手に入ってもなぁ。
にしてもこう言う素材に触れて思うのだが、凄く脆い。少し力を入れればパキッとヒビが入るレベルだ…攻防変換スキルだとか、権能による力加減の調整があるから私生活に支障はないが…無かったら調整が大変そうだ。
…フィリアさんみたいに。
「いらっしゃ——……ピィッ!」
「…ん?」
いつの間にかリアが中に入ってたらしい…中からシィの短い悲鳴が聞こえた気がする。
リアを追って中に入ると………シィが震えながらリアに平伏してた。
「ちょっ、ちょっとシィ⁉︎急にどうしたの⁉︎あのっ、お客さん?もしかしてシィに何か…」
「ま…待ってスゥ…落ち着いて。大丈夫だから…この方に楯突かないで…お願いだから」
「本当にどうしちゃったのシィ⁉︎」
「………どうしよう、ゼノ。私この子と相性悪い」
『この銀猫の子…生物の特徴に敏感』
………本当にどうしよう?こうなるとは思わんじゃん…
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なんとかシィを宥めつつ、ゆっくりとリアから距離を話してから会話することにした。ちなみに俺がゼノである事はしっかり認識出来ていた…嬉しいね。
こうなった原因はリアの言った通りにシィが相手の生物の特徴を感じ取りやすい体質の所為らしい。
善意や悪意を感じ取れるし、生物の特徴…俺ならば『魔物』だったり『龍』だったりと言った要素を大まかに感じ取れるのだとか。
さて、そんな体質のシィがリアに会うとどうなるかと言うと………
大まかではあれど、『神』・『世界の意識』・『死生/始終』を感じ取ってしまったらしい。
目の前に神様だとかが急に出てきたらそりゃ平伏するよね。圧倒的な覇気を纏った王様が出てくるのとかと一緒…いや、それ以上だからこんなにも顔を青ざめて身体を震わしながらも頭を下げてるのだろう。
しかもこの体質…厄介なのが隠蔽を貫通する事だ。怠惰の隠蔽然り、リアの権限を使った隠蔽然り…その生物の本質を嗅ぎ分けるから全く関係ないのだ。
…鑑定の能力としては非常に優秀だが。
「な、なぁ…ゼノ。顔を店に来てくれたのは嬉しいが…隣のお嬢さんは一体…?」
そう言葉を発するは店主のソルのおっちゃん。今現在でも元気であり、親しみやすいおっちゃんの姿を見て安心したが…それもリアを一目見てから震え始めた。
シィの父親と言うこともあってシィほど敏感でないにしろ、特徴を嗅ぎ分けれるらしい。
「ん、私はゼノの妻……別にここを同行するつもりはないからの安心して」
「リアの言った通り、俺の妻…今は婚約者か?まぁ、そんな関係だな」
「ん…妻である事に変わりはない」
「おぉ、そうか。そうかぁ…この方がゼノの妻か…凄いなお前さん…」
久しぶりに銀猫亭の泊まろうと思ったが流石にソルのおっちゃんとシィのメンタルがヤバそうなので少しだけ会話して早々に退出した。
こりゃ神格者になる前のもう一度1人で来ないとな…神格者になったら同じ様な反応をされるかもしれん。
「…ごめん」
「いや、あれはしょうがなくないか?」
「ん…でも再会を邪魔した…」
「まぁ、また今度行くから大丈夫よ」
これは…ちょっと落ち込んでるな。畏れられた事に悲しんでるよりも…俺の邪魔になった事に悲しんでるっぽいな。
別に良いんだけどねぇ…日本でもリアが完璧すぎて恐れられてた節はあったし。リアが居ると女性が一歩引いた感じで接してきたから割と慣れてる感じはある。
…流石にあそこまで過剰な反応ではなかったが。
「ほらリア、そんな落ち込まずに観光しようか。久しぶりの人の街なんだから楽しまなきゃだろ?」
「ん………うん」
うーん…やっぱり反応が微妙。こうなったら無理矢理引っ張って気分を晴らさせるしかないな。
て事で買い食いをしたり、町娘風の服を来てみてもらったり、リアに似合いそうな装飾品を見て回ったりと、所謂デートっぽい事をする事になった。
確かにこうやって店を見るのは楽しいっちゃ楽しいのだが…日本とかに比べると文明レベルが低いからどうしても娯楽等は見劣りする。
しょうがないとは思うが…映画だとかプールだとかレジャー施設などが無いのが悔やまれる。
リアは結構娯楽に関する物に目を向けてたからな…特にゲーム、よく一緒にやろって言われた物だ。
そう言えばリアが収納したあの我が家には一応ゲーム機とかもあったが…できるのだろうか?…出来そうだな。
そんなデートをして、日が傾いてきたらリアと一緒に人の寄り付かない場所までひとっ飛びし、そこに我が家を出してリアと寝食を共にする。
デートの途中からはリアも気を取り戻したのか、楽しんでたっぽい。
そんなリアと家のソファでグデっとしてると、神格者になるにつれての注意を言ってきた。
「…神格者になると、あの銀猫の子みたいな反応が増える。
既に経験してるかもだけど………畏れられるのは辛いから。神格者を恐れないのは…それこそ神格者ぐらい。
力を持つと孤独になるのは確実だから………」
そう言うリアは寂しそうに見えた。リアだって神格者…いや、神格者を束ねる存在だから更に上位の存在なのだろう。
もしかしたら…神格者達でもリアに対しては一部畏敬を抱かれてるのかもしれない。本当にリアと対等に接せる存在はそれこそ意思が希薄である世界の理くらいかもしれない。
俺はいまだ最上位進化種…まだまだリアの横には立てないが、少なくともリアを恐れる事はない。
寂しそうな雰囲気を出してるリアを抱き寄せ、頭を撫でる…リアはスーッといつもの幼い姿に戻り、俺にギュッと抱きつく。
………やっぱり、俺が神格者になる日は近そうだな。
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作者からのお知らせ
…とうとう、この育りゅう完結まで執筆してしまいました。
そう、もう完結が確定してしまったのです。うぅ、我が原点が終わっちまうぜ。
ちなみに27日までに全話投稿するつもりですので、8月18日から更新頻度が高くなります。
そんなお知らせです。
あと現在開催中の長編ファンタジーコンテストの最終選考に残ってみたいからもっとレビューとかの評価ほちい(´・ω・`)
…唐突な評価稼ぎごめんね?(ちなみに顔文字使用全く慣れてない)
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