第123話小動物も良いが…やはり嫁に会いたい

 パチっと目を開け、視界に入るのはモコモコの兎…ツインホーンラビットだ。

 なんとなく…ぼーっとしながら兎を撫で、空を眺める。何故兎を撫でてるのかは分からない…本来なら朝食がてらに喰らうのが正しいのだろうが、それはむしろ不正解でしかない様に思える。


 …それに、本能がこの兎はむしろ愛でるべきだと言っているのだ。


(にしても…どれだけ寝たのかねぇ)


 寝る行為というのは身体と心を休める物だと思ってる。だからどれだけの時間寝たのかが分からない。

 身体は崩壊の力の反動によるダメージが嘘の様に無くなっており、思考は冴えている。絶好調と言っても過言ではない…そんな体調に回復するのはどれだけの時間を要するのだろうか。


「…まさかお前が回復してくれたのか?」


 撫でていた兎の顎をさすり、そんな事を言うが…あり得ないかと思って可能性を捨て切る。だってツインホーンラビットなのだ、俺が子龍時代の頃でも狩れる動物なのに俺を全快させるほどの回復を持てるのだろうか?


 鑑定を使ってみてもちょっとステータスが高めなだけの兎でしかない…やっぱり違うのだろう。


「さてと、んな事考えるよりも大陸の中央目指しますかねぇ」


 兎を持ち上げて身体の上から退かし、身体を起こして伸びをする。とりあえず龍の姿に戻ろうとしたら俺の側に退かした兎が跳躍して俺の頭の上に乗ってきた。

 …なんでこの兎は怖がらないのだろうか。


 一応言うが、俺は今一切気配の隠蔽などしていない。つまりはガンガンに最上位進化種としての雰囲気を放ちまくってるのだ。遠くに見える小動物達や魔物達は警戒して遠い距離から一切近付いてこようとはしていない。


 にも関わらず俺の頭の上に居座る兎は怖がるどころかむしろリラックスしているのだ。何故?どうして?と言う考えが残るが…最終的には考えるのを辞めた。


 だって可愛いし。前世で猫や犬などの動物たちが愛される様に、兎だって非常に可愛らしいのだ。

 もこもこの毛皮に、小さい身体。その脚は小型の動物にしては凄まじい跳躍力を有する為に発達し、額あたりから生える二本の角はゴブリン程度なら喉元に突き刺せば殺せるほどに尖っている。


 …うん、非常に可愛らしいじゃないか。こんな可愛い生物に延々と考えるくらいなら愛でて癒された方が良いと思う。


「あぁ、にしても早くリアに会いたい…リアを抱きしめてたいなぁ」


 小動物を愛でて癒されるよりも愛する存在を身近に感じて心を癒したい。どうやら俺の精神的支柱は既にリアになってるらしい。


 でもしょうがないじゃないか…リアは最高の嫁なのは変わりない事実なのだから。あの美しい銀髪に透き通る様な青い瞳に、見てるだけでこちらが嬉しくなってしまうあの微笑み…そして何気に甘えただったりスキンシップが多かったりと可愛らしい部分もたっぷりなのだ…


 完璧なだけでなくかわいくもある…やはり素晴らしき嫁だと思う。

 そんな事を考えながら歩いてると兎が頭をペシペシとしてくる。いや、急にどうしたよウサギさんや。


 別の痛くないし、ダメージも無ではあるのだが普通に気になる衝撃を頭に与えてくる…急にどうしたと言う意味を持たせながら一旦持ち上げて俺の目の前に兎を持ってくると…ピタッと動きが止まったと大人しくなった。


 なんか照れてる気配がした気がするが、龍が兎の事なぞ知れるわけがなく…謎なまま頭の上に戻す。本当に急にどうしたんだろうか…全く分からん。


 そんな事より早くリアに会いたいと思いながら大陸を進んでいく…ちなみに大陸の中央が何処にあるかは一切知らない。それどころか現在地すら知らないのだ。


(彷徨って辿り着くしかないのかねぇ)


 空を飛んで移動しても良いのだが、なんとなく歩きたい気分だったりする。このなんの危険もない平原でのんびりと歩きたいのだ。

 気分は老後生活を送ってるおじいちゃんの散歩。


 草木の揺れる音は心地良いし、遠くで豊かな大地に喜んでいる魔物達は微笑ましい。そうだ、ちょっと前まではここは全て崩壊の力が統べていたのだ…ちょっとくらいのんびりするのも良いだろう。


 そう思いながら歩いていると…とある所に辿り着く。俺はそれを見て「なんで存在している?」と言う言葉が出てくるのだった。


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 目の前の壁をさすり、ただの石レンガの城壁だと確認する。

 人気は一切無いにも関わらず、その城壁…いや、それだけではなく中の建造物すらついこの間まで人が居たかの様な綺麗さがあり、全く劣化していない。

 …人間さえ居れば普通に都市として再起する程に。


(…不気味だな。幽霊都市みたいにボロボロなら分かるが…明らかに人が住んでただろこれ)


 城壁を脚力だけで超え、街中へと侵入した俺はこの街を探索しているのだが…明らかについ昨日まで生活してたかの様な痕跡がある。

 竈門に残るほのかな熱や、修理途中であっただろう外壁。腐っておらず商品として出せる…と言うか出していたであろう果物や野菜達。


 …明らかに、人は住んでいた痕跡がそこらじゅうに存在している。


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【質問のコーナー】


 Q.

 兄弟たちってどうなりましたか?


 A.

 主人公の兄弟達ですか…?普通に一般的な子龍として過ごしていますね。もうあと数十年ほどしたら立派に成龍としての強さは得られるんじゃないでしょうか。


 …ね?主人公の成長速度って異常でしょ?


 なお当初の予定ではフィリアさんの子供はゼノ1人だけだったりします(でも…それじゃあ育児放棄されたか分かんないですから)

【フィリアさんの子だから特別】ではなく、【ゼノだから特別】って構図を維持しときたいのでおそらく兄弟たちは出てこないと思います。

 一般的な龍にしてはちょっと強めか…?って感じがフィリアさんの子の立ち位置です。


 だからこそ気軽に触れ合えるゼノにフィリアさんは良く会いに行くのですが…(フィリアさんって力加減下手っぴだからゼノ以外の子供を殺しちゃう可能性あるの)

 でもちゃんとフィリアさんはゼノ以外の子供の様子も見に行ったりしています。

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