第122話寄り添う妻

 膝枕しているゼノを最大限の労りを込めて頭を撫でる。勿論ボロボロになっている身体を治療するのも忘れない。


 ゼノには感謝してもしきれない。ずっと悩みの種だった崩壊の力の解決の糸口になってくれたのだから。


 私が出来なかった崩壊の制御…それを成し遂げ、更にはこの大陸を覆う崩壊の力を全て吸収し、この大陸の本来の姿である緑豊かな大地が蘇ったのだから。


 確かに私や世界の理が干渉したのは事実。でもそれはあくまで崩壊エネルギーの解析だけであり、スキル取得条件を成し遂げてスキルを我が物にしたのは確実にゼノの努力の証なのだ。

 それに、解析出来たのもゼノのお陰だ…本当に感謝が絶えない。


 膝枕をやめ、ベットを創造してそこにゼノを寝かせる。勿論私はベットに潜り込み、ゼノに抱きつく…別に私がやりたいわけじゃなくてゼノへのご褒美だよ?

 …ゼノが起きてる時にもう一回する予定だけど。


 ゼノは本当に疲弊してるのだろう…一切起きる事がないくらいに深い眠りについてる。

 当然の事ではある…何せいくら龍の身体とはいえ睡眠は必要。更に言えばゼノの魂や常識はまだ人間寄りだ…にも関わらず常に痛みが走る身体で過ごし、浅い眠りにしか付けず、にも関わらず急に崩壊エネルギーが暴走して起きると言うのを繰り返していたのだ。


 こんな重役を背負わせた私達が言うのもアレだが…頑張りすぎとしか言えない。

 だって…魂の一部が破損してるのだから。


 破損したのは思考を司る部分の一部。恐らくあまり物事を深く考えずに動いてしまった事があっただろう。本当に頑張りすぎだよ…


 抱きつきながらも片手を霊体化させ、ゼノの魂に触れる。ゆっくりと…優しく魂を撫でながら再生を施していく。

 これはお詫びでもなんでもない…私達がこうさせてしまったのだから、治すのは当然の事だ。


 …着実に治していき、入念に他に破損が無いかを確認してから、身体をそのままに魂だけを分断させてゼノの体内に入り込んでゼノの魂に寄り添う。

 …夫婦ならやっぱり身体だけじゃなくて魂も寄り添わないとね。


 模倣した異世界での夫婦生活でも時々これをしてたけどこれが案外心地良いのだ…ゼノの温かみを最高に感じられる。


『最初は…こんなにゼノに寄り添うほど近づくとは思わなかった』


 最初にゼノを見た時はそれこそ卵の頃からだ。ゼノを置いてきぼりにしたフィリアには非常にびっくりしたが…まぁそれも育児の仕方かと思った。…今では明らかにおかしいとは思うが。だって今の私は子持ちを経験した母ですし。


 そんな生まれたばかりのゼノを見てて思ったのはこの森で幼龍が生きるにはハード過ぎるでしょ…と言う事。

 何せ先程までの天変地異しか起きないこの大陸に生きる逞しい生物よりも強い生物達が蔓延る森だ…幼龍なんておつまみ感覚で喰われるのがオチだと思った。


 にも関わらずゼノは怠惰の権能と嫉妬の権能を発現し、生き残った挙句非常に安全な「人間の住む地域」に到達する事が出来たのだ。

 そこからは危険な橋はそこまで渡らず、しっかりとレベルアップをして行って進化して…経験値増加のスキルもあって驚異的な速度での成長だった。


 その成長は僅か生後数ヶ月で人の軍相手に無双するほど。一応蒼炎使いには手こずってたけど最終的には勝ってたし、その蒼炎の魔力を利用して相反する属性を持ち合わせた特異な存在にもなった。


 上位種〜神格者を除けば最上位に位置する様な成長をしたから、頃合いだと思った。

 …だから接触した。玩具としてはお気に入りの武器である変形武器を持って…敵として。


 ちなみに今のお気に入り武器はリリアとゼノが協力して作った武器。初めて見たんだもの、私を傷付けれる武器だなんて。

 …ちょっと強力過ぎるけどね。


 戦闘はまだまだ疎い部分があった…元同族であろう人間の命を奪うことに躊躇が無いのは龍として生きるならば普通だし特に何も思わない。

 ただただ戦闘経験不足だ。驚異的な速度で成長し、師と呼べる存在も居ないまま成長したのだから当然だけども。


 だからこそ、私は霊印を付与した。どれほど強くなるか楽しみだったから。そう、全ては好奇心から接触したのだ。

 あの時は本当に好奇心のみだった。


 あれからもグングン成長したが、まさかの思考ごと魂の中に引きこもると言う事態になった。

 でも…私的にはああなってくれて良かったと思う。


 アレのお陰で、好きになれた。ただの好奇心が、愛に変わった。

 神格者は大体雌だし、私だって不老不死故の性欲の無さがあって全くもって雄への興味なんて無かった。


 でも…でも、偽りとは言え恋愛をし、夫婦になり、愛し合った。偽りとはいえ、ゼノからは一途な愛をぶつけられた。こんなの好きにならないわけがない。本当に私の物にしたいって、思ってしまった。それに偽りの関係だと知っても私を想ってくれるゼノが好き…

 …どうやら私の中にも龍の本能があったらしい。だってもうゼノを絶対に手に入れるって決めてるのだから。


 でもそんな幸せな時間も終わらせるしかなく、仕方なくゼノを元に戻してゼノをリリアの所へと向かわせた。戦闘訓練をリリアにしてもらう為だ。

 私と番になるために頑張ってくれるのは非常に嬉しい…私的には別にあの時のままでも良いんだけど…ゼノは私の隣に立ちたいだなんて思ってる。


 …淵源種と対等になるだなんて、根源種に…本当の最後の進化に辿り着くしかないのに。


 だから私も時々手伝った。

 ん、ゼノは空間支配の技量が甘い…そんなんじゃ最上位進化種にすら殺されちゃう。私の完勝で終わっちゃうじゃん。


 そんな日々を過ごして、リリアはとある制作に取り掛かった。

 …進化の宝珠の制作だ。


 アレの名前は罪銀の宝珠。誰でも使えば、罪銀龍への進化先が開かれるとんでもない代物。もしゼノが居なければ存在してはいけない物。


 だから即刻使用者制限をして、すぐにゼノに使わせた。まさかゼノがその進化を経て崩壊の力を制御する羽目になるとは思ってなかったけど。



「ゼノ、貴方は頑張った。今はまだ責務がある神格者にはならなくて良い…自由な龍生を楽しんでから、また私を追いかけて」


 自分の身体に魂を戻し、ゼノの頬を撫でてからキスをする。

 …ちょっと物足りないけど、我慢。


 ベットを消去して、再度ツインホーンラビットに身体を戻してからゼノの胸の上を陣取る。


 うん、此処は私の特等席だから。絶対に誰にも渡してあげない。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【質問のコーナー】

Q.

どうやって設定考えてますか?


A.

行き当たりばったり。

大元の重要な設定(どんな世界なのかだったり、登場人物の設定)はメモしてますが、それ以外は基本思い付きで書いてます。


時と場合によっては辻褄合わせに設定追加してたりしますね。

大体は作者自身がこう言うの書きたいっ!て思って設定追加してます(帝国編の大太刀とかゲームの影響を受けて武器を使わせたいって思いで集中錬成武器とか考えましたし)

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